小池真理子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ全体的に色っぽくて背徳的だけどいかがわしい感じはしないという不思議な小説でした。
主人公がただ肉欲に溺れるわけではなく、片瀬夫妻を神聖視しているのではと思えるほど深く愛してしまったが故に起きた悲劇といった感じです。
どう考えてもピュアな恋愛とは程遠いはずなのですが、下手な恋愛小説よりよほど真剣さというか、鬼気迫るほどの純粋さを感じました。
雛子が大久保に恋をした時に、布美子が肉体ではなく精神での繋がりを求めるなんて汚いといった表現をしたのが印象的でした。
布美子に感情移入しすぎて大久保を撃ち殺すシーンで自分までスッキリしてしまいました(^_^;) -
Posted by ブクログ
「ドラマ的展開」が面白く、どんどん読み進めてしまう系統の物語だった。人間ドラマ+微サスペンスという風情。
有名な映画監督を夫に持つ新谷泉は、度重なる夫からの暴力に耐えかねて、ある日夫が不在のうちに家を出た。
そして流れ着いた寂れた地方都市で、老齢の女性画家の家での住み込み家政婦の仕事に偶然ありつき、身を潜めて暮らし始める。
夫に探し当てられるのではないかと怯えながら暮らす中、主である画家の付き添いで行った街のゲイバーで、かつて関わりのあったある男と再会してしまう。
後ろ暗い雰囲気が全開で、泉の怯えが文体からも伝わってくる。
そんな中「ある男」の塚本と再会したことが、泉の人生をがらりと変える。
彼とは良くない因縁があり会いたくない相手だったが、とある犯罪の濡れ衣を着せられて逃亡した末にこの街に流れ着いたという泉と遠からずな事情を抱えていたことが、2人を引き寄せ合うエネルギーとなる。
泉はある意味とてもラッキーで、逃亡先で出逢った画家の八重子やゲイバー店主のサクラなど、まっすぐに「良い人」ではないものの情が深い人たちに恵まれて、人生が好転していった。
人生の流れを左右するのはやはり出逢いなのだと思わされる。
個人的には、もっとゴタゴタ一悶着も二悶着もありそうな気がしたけれど、わりとストレートにあっさりした流れだったように思った。
やじうま的感覚で、ゴタゴタを少し期待してしまったのかも。笑
厚みのある本だけどあっという間に読み切った。
住み込み先の庭に成る無花果がところどころ効果的に現れて、物語にそこはかとないエロティックさを添えていた。 -
Posted by ブクログ
タイトルや装丁の雰囲気から、楽しい内容ではないだろうと思いつつ手に取ったら、ホラーだった。日本的な、情緒たっぷりの系統で、シンプルに面白かった。
私が小さかったころ、夏休みの1週間くらい「あなたの知らない世界」というコーナーがお昼の番組の中であって、それを姉と2人怖がりながらも毎日楽しみにしていたのだけど(視聴者投稿系でけっこうがっつり怖かった)それを観ていた時の感覚に少し似たものを覚えた。
あるはずのものが無くなっていた、とか、生きていると思っていたら死んでいた、とか、禍々しきものを連れ帰ってしまった、とか、ホラーではよくある設定がふんだんに使われていて、馴染みがあるからこそ読みやすく面白い。
フィクションなのだけど、もしかしたら自分もそういう世界に迷い込んでしまうことがあるかもしれない…と思わせるリアリティもあるのに、全体の雰囲気としてはどこかふわふわしていた。
主人公が取れた歯の詰め物を治してもらうため、まだ住み慣れない街で見つけた歯医者に飛び込みで入り不思議な体験をする「日影歯科医院」や、若くして急死した夫と暮らしていた旧家に、彼が海外で仕事をしていた時代に彼を慕っていた女性が幽霊となって現れるようになった「ゾフィーの手袋」などがとくに印象に残った。
ホラーとしてはよくある展開なのに、それだからこそ怖いのは、やはり読み手の自分も日本人だからなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
アメリカでの語学留学を終えた男性が、飼っていたペットのリスの死骸を日本に持ち込み、自宅の庭に埋葬したことから恐ろしい感染病が発症します。
他方、TVの女性ニュースキャスタに心を奪われ、一方的にその女性との関係を築こうとする心の病を持った男性が引き起こす誘拐事件。
この二つの事象が絡み合ってストーリーが進みます。
小池女史は女性心理を描きながら展開する作風が多いと思うのですが、この一冊は、キャスターの夫、警察の刑事、TV局のプロデューサーなど、男性達の心理描写が中心でストーリーが展開していきます。
さて、恐ろしい「悪魔」の存在と結果は⋯⋯。