小池真理子のレビュー一覧
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恋だ・・・。
もう若くはない女と男たちが織りなす流れるような恋の日々と別れ。
「女は時として身体が迷うが、男は気が迷うのだ・・・」
ペットショップで知り合った男と3年一緒に暮らした女。
女が作る食事を食べることが何よりも幸福だと言った男。
男が戻ってこなくなっても、女は毎日食事を作り、食べる・・・男がいなくなった以外、何も変わらない生活。
「食卓」
男と女の最後の日。
泣かないと決めた女は、男に見送られタクシーに乗る。最後にほほ笑んだように見える男。
通行止めで元の道に戻ったタクシーの中から、まだその場にたたずむ男を見つけた。男は・・・。
「さびしい」
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Posted by ブクログ
天才洋画家・辻堂環の訃報を知り、彼との昔の関係を思い出す女性六人の物語。
辻堂環は光源氏そのもの!
数多の女性と関係しながら、二人同時ということはなく一人の女性を激しい情熱で愛し求める。でも必ず関係には終わりが来て、彼はまた別の女性(時に男性?)を求める。
かつての環に思いを馳せる女性たちが皆、憎しみや怒りの感情を抱くことなく彼に思いを馳せるのが何となく理解できる。彼のように、恥も外聞も捨て命をかけて女を愛する男なんてそうはいないからだ。ほんの一時期でもそういう愛を受けた女たちは彼を憎むどころか、美しい愛の思い出として彼を思い出すんだろう。
ただ彼の底知れぬ孤独や苦悩はきっと死ぬまで癒されなか -
Posted by ブクログ
小池真理子さんの作品を読むのは、「愛するということ」「望みは何と訊かれたら」「恋」に続いて4作目。
ああ、これも面白い。
またもアノ時代なのです(というかこれは「恋」の前に書かれた作品で、「恋」につながっていく作品ということなのですね)。
60年代後半。デモ、学生運動、ストーンズ、バッハ、ビージーズ、煙草、コーヒー、喫茶店。音楽は他にも色々。ラフマニノフとかも。
チャイコフスキーも出てきます。チャイコフスキーは男色で「悲愴」はその悲しみを込めて作られたのだとか。
「無伴奏」という喫茶店は本当に仙台にあったクラシック喫茶だそう。
阿佐ヶ谷の「ヴィオロン」を思い出してしまった。筆談するところとか。 -
Posted by ブクログ
正月休みに本棚にあったので再読した短編集。自分で買ったことも忘れていたけど、読み出したら、読んだことがあると思い出したけれど。
読んでいてなんとなく−逢魔が時−なんて言葉が頭をよぎる。別段、設定が夕方ということではないけれど。なんとなく心にすきまがある時に、アチラの人を見たとしても、恐怖心よりも心のすきまにはまった何かが案外心地よいような気がする。
アチラとかコチラとかの境界線があいまいで、恐怖というよりは、とろりとした温かさすら感じるような。それでいて哀しい。そんな印象の短編揃いです。
似たような話といえばそれまでだけど、やっぱり小池真理子は上手いよな、と思う。