小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公の紗江は、親子ほど年の違う天才版画家、柚木の若妻である。二人は仙台のはずれに居を構え、世間の喧噪と隔たれた生活を送っていた。 ある時、柚木のファンという東吾という美青年が訪れる。柚木は天才的芸術家らしく気難しい。当然、この青年の訪問も喜んで受け入れない。しかし、東吾は弟子入りを乞い、ついには柚木から承諾を得る。東吾は内弟子ではないため夕方には自宅に帰るものの、昼間3人の生活が始まった。 その生活の中で、紗江は夫を愛しながらも、若い東吾に心惹かれていく自分に気づく。どこか近寄りがたい雰囲気をもつ東吾との距離を縮めようとする自分の情動に葛藤を覚え、悩み苦しむ。 そのような生活の中、柚木に大仕事が舞い込む。東吾は柚木の傍らにいて、彼の技に心奪われ、この芸術にのめりこむ。この大仕事は、柚木の命を削り取り、ついには完成はるか前にして彼の命は尽きる。師匠の志を受け継いだ東吾は、柚木の生前以上にこの仕事に入り込み、埋没していく。と同時に紗江との二人の生活が始まった。これから先は、本書を読んでほしい。 小説が、判る、判らないというような判断をする類の文書でないことは理解している。しかし、ここまでわからない文書も珍しい。ただただ、困惑と混乱が残る小説だった。