小池真理子のレビュー一覧
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小説自体は25年くらい前のもので、舞台は1960年代後半の仙台。学園紛争やデモなどが激しかった時代の、ひとつの恋とミステリー。
高校生の響子と大学生の渉。そして渉の親友の祐之介と恋人のエマ。四人の想いが交錯して、ある事件が起きる。
小池真理子さんの小説を読むのは思えば初めてで、どうして今まで手に取らなかったのか自分でも不思議。
全編通して美しい。人間の醜さが表れる場面もあるのに、なぜか穢れを感じない。始めに事件を予感させる描写があり進んでいくせいもあるのか、常に死の匂いが漂っていて、どこか物悲しい。
勝ち気な高校生・響子と暗い過去を背負った大学生・渉の恋と一時の出来事を、二十数年後の響子が -
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義彦に恋していながら、その義父である英二郎の誘惑も拒みきれない悠子。一章はその3人に亡くなった美冬も加えた歪んだ関係が描かれていて、英二郎には嫌悪感を抱きながらもその魅力に抗えない悠子の心情が揺れ動くのが甘美でもあり、スリリングでもあった。個人的には英二郎さんには魅力は感じないのだけど、言い寄られると弱い部分があるというのも、理解できなくはないかな。
三章で、摂子視点に変わると作品の色合いも違ってきて、あまり見たことはないけど韓流ドラマみたいな展開だなと感じつつ、どうなるのだろうかと先が気になった。
バッドエンドとは思わないが、幸福な話とも思えない、でも冬の軽井沢の情景描写も含めて美しいと思え -
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小池真理子の小説を読むのは初めてでしたが、なかなか面白かった。終盤までの、50代半ばの精神科医と還暦前の女性患者という少し設定のこったハーレクインロマンス的な展開にはついて行けないし、自分にはあんまり合わないなぁ、と思った。中盤であからさまなネタバレ的記述があるのも、ここでバラしちゃこの後が面白くないじゃん、とも感じた。でも、終盤で徐々に明らかになってくる事実によってぐいぐいと引き込まれていった。自然風景や建物や家具などの描写も嫌みではないほどに繊細で読みやすかったと思う。雑誌連載小説なので仕方ないだろうけど、もう少し短くても良かった気もする。
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ネタバレ2016年の4冊目です。
小池真理子という作家の作品を読んだのは初めてでした。
久しぶりに、ずっしりと心に応える作品を読んだという気持ちです。
自分と母を捨て、若い女と結婚し家庭を持った父親が、難病であるパーキンソン病に侵され意志の伝達も難しくなって介護施設に入居してからの、娘の父へ向き合う心情が描かれている。老いて壊れていく父親の姿を見て悲嘆にくれたり、過去を思い返し冷淡な感情に支配されることも無く、父親の身勝手な娘への偏愛を、冷静に受け止め、それに対処する自分をまた冷静に見つめている気がする。それは、幼い子供時代に父と過ごした満ち足りた気持ちにへの、気を許すと落ちていくような速度で没してし -
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老い。人生。親子の繋がり。
考える要素がたくさんあった。
私が生まれてからずっと育ててくれた親の老いを目の当たりにして、私は衿子みたいに優しく静かに受け止めることができるのだろうか。
親子って理解しているようで、実は半分も相手のことを理解してないんだと思う。私もお母さんお父さんが本当はどんな人で今までどんな風に考えて生きてきたのか、想像もつかない。
それでいて、深い興味もない。少し衿子と似てるのかな。お父さんには、遠くからちゃんとみててもらってる、お母さんには近くで友達みたいに上部の付き合いで仲がいい。とっても。でも実際のところお互い腹のなかは何考えてるのかわからない。
人生ってなんなんだろ。 -
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夫を亡くして以来、軽井沢近郊の田舎町で天涯孤独な生活を送る女性が主人公。心の病にかかりクリニックを訪ねたことがきっかけで、その医師と愛を育んでいくのだが、ある日突然男性が姿を消してしまう。
50代後半の男女の恋愛ものと言うと、不倫やら何やらどろどろしたものが多いが、本作は心に傷を負った大人同士の静かな恋愛を丁寧に描いている。前半、薄紙を少しずつはがすように、時間をかけて歩み寄っていく二人の姿は、穏やかで切なくて心地よい。
が、後半は一転して姿を消した男を追う展開となり、ミステリー色が濃くなっていく。男の正体は早い段階から予測がつくが、理由は終盤まで明かされない。タイトルの意味がわかったときに