小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
静謐な空気の中で、果てしない喪失感に満たされた作品でした。というか、このエッセイ集の個々の作品はシチュエーションや時点が作品ごとに異なるのだけれど、どの作品を読んでも最後にはどうしようもない喪失感に襲われてしまいます。渦巻くような悲しみに沈んでしまい、結局最後まで読みきれませんでした。
小池真理子さんのエッセイ集です。
本屋さんの文庫の新刊を扱っているワゴンの中でひんやりと静かな表紙がその存在を主張しており、目が合ってしまったのでした。
久しく小池さんの作品は読んでいなかったのですが、この作品を読んで小池さんに対するイメージが大きく変わりました。
すでにかなり過去の話になりますが、小池さんの作品を読んで「少しツンとしていて、近寄りがたいお姉様」という印象を持ってしまっていたのですが、その印象を今まで引きずっていました。
しかし、この作品で小池さんが描いておられるのは「近寄りがたいお姉様」ではなく「長年連れ添った夫(人生の伴侶)を亡くしてしまい、喪失感から立ち上がれない女(ひと)」。
読んでいると、何だか自分自身が容赦ない月日の流れに押しつぶされそうになってしまいました。
しかし、このエッセイを書き続けることができた小池さんは、やはり私にとって「近寄りがたい」人なのですね。 -
Posted by ブクログ
江國香織さんの「夕涼み」と綿谷りささんの「青春リグレット」が読みたくて手に取った。夕涼みは、夫の行動にゾッとしたし、私だったらそんなズレた夫とは一緒にいられないと思った。「逃げたかったわけではない、が、逃げられないと思わされることは恐怖だった。竦むような、恐怖だった。」という言葉に共感。誰かに自分の選択肢を奪われたり、縛られたり、自分で自分を決められないことを、人は恐怖と感じるんだなと思った。そして誰にもその出来事は話せないことも、夫を含む周りにはいつまでも愛し合っている夫婦だと思われていることも、自分だけがこのザワザワした気持ちに気づかないふりをしていればいいんだと感じるのもわかる。老女たちの夕涼みを今になって理解できるようになってしまったことも、それを見て単に奇妙だと思うだけだった過去を無敵だったと表現したことも、妹にはそんな日が来ないでずっと幸せでいてほしいと思う姉の気持ちも、切なかった。
「青春リグレット」は、自分の何がそんなに好きかわからないくらいに愛してくれた人を、自分は愛せなかったことを夫に離婚を切り出された時に思い出す。愛される恋愛がどれだけ幸せだったか、それはその時には理解できなかったのだから仕方ないし、後悔しないでほしいなと思った。後になって気づくものってある、もう取り返しはつかないけれど。彼との時間を俯瞰で冷めた目でみてしまうところ、古傷が痛んだ。愛の重さは同じくらいがいい。 -
匿名
購入済み怖かった
小池先生の作品を初めて読みました。
読みやすい文章と結末が知りたいのとで一気読みしました。
昭和感たっぷり。
面白かったので違う作品も読んでみます。 -
Posted by ブクログ
松任谷由実の曲を元にしたトリビュート小説集
著名な作家さん達による、別角度からの切り口で綴られる物語
歌詞をそのまま物語にしたものではない
むしろ設定のリンクはそんなにないかも
タイトルにインスパイアされた短編という表現の方が近い
収録は6編
あの日にかえりたい/小池真理子
DESTINY/桐野夏生
夕涼み/江國香織
青春のリグレット/綿矢りさ
冬の終り/柚木麻子
春よ、来い/川上弘美
解説:酒井順子
・あの日にかえりたい/小池真理子
いまも私の心は学生時代を過ごしたあの場所にいる
昭和の学生運動が盛んな頃の大学生
男を巡る友人とのちょっとした行き違い
大学生の頃に戻りたいと思う人は結構いるかもですね
・DESTINY/桐野夏生
大学職員の独身男子が心奪われた「運命の人」とは?
規則正しい生活の中で出会った運命の人という思い込み
片想いという状況にものすごく共感する
でもまぁ世の中そんなもんですよね
・夕涼み/江國香織
かつて暮らしたポルトガルのあの光景を忘れられない
もうすぐ結婚する妹との会話の中で、自分の結婚生活やそこに至るまでのことに思いを馳せる。
特別不満があるわけでも、後悔しているわけでもなくて、むしろ幸せなのだけど、ふと遠くを見てしまうことだってある。
もうすぐ結婚するという妹との会食
自分が結婚するまで、そして結婚生活に思いを馳せる
夫の事は嫌いではないし、むしろ今の生活に幸せを感じてはいる
ただ、昔に夫と見た、老女達が無言で夕涼みをする光景を思い出し、自分の将来を考える
恭二の行動がある意味でホラー
まず前提としてDVだし
その解決法をいきなり勝手にしてくるとは……
重すぎる愛は、確かに怖さを感じる場合もあるでしょうね
文章から感じるいつもの江國さんっぽさ
「――」で挟まれる詳細、()でテンポよく繰り返される挿入、「行かれる」という言い回し
私はこの文体が好きなんだろうか?
・青春のリグレット/綿矢りさ
離婚直前の私の心を占めるのは元彼への悔恨だった
離婚が決定的な状況で、昔付き合っていた男との事を思い返す
自分が愛している人と結婚したが、相手は自分を愛さなかった
昔の男は自分を愛してくれたが、自分は相手を愛せなかった
・冬の終り/柚木麻子
友情とも憐憫ともつかない同僚への感情の行方は?
友達になりたいという程ではないけど、もっと交流をしたい
そんな女性同士の微妙な距離感
わかり合いたいという気持ちなんだろうか?
ドラマ好きな柚木麻子さんらしく、この曲が主題歌だったドラマ「その時、ハートは盗まれた」が話題として出てくる
ってか、これが放送された当時って柚木さん小学生だった頃なのによく覚えてるなぁ
カセットテープというガジェットも何とも昭和感がありますよね
・春よ、来い/川上弘美
一度だけかなえられる能力をもつ人々が願ったもの
正しくは一度だけ他の人のために願いを叶えることができる家系(と思いこんでいる?)人たち
両親を事故で亡くし、祖父と叔母と一緒に暮らす中学生女子
3人の視点が入れ替わりながら、最後は一つに収束していく
やはり、ユーミンのライブと言えば苗場ですよねー
少女視点の話もいいけど、母親が何を願ったのかを知る場面もなかなかいい
多分、そんな能力はないんじゃないのかなー と思うんだけどね
酒井順子さんの解説も、これで一作のような雰囲気を感じる -
Posted by ブクログ
ネタバレユーミンの曲を女性作家さん達がトリビュートし
創作された物語の短編集。
小池真理子「あの日にかえりたい」
まだ共同玄関や共同トイレが一般的だったころに
学生時代を過ごした主人公の郷愁の物語
既に老年に入った主人公が人生を振り返るような
切ない物語。短編の中に人生の流れがつまっていて
さすが小池真理子さんだなと思った。
桐野夏生「DESTINY」
村上春樹が愛読書の争いごとを好まない青年の物語
変わらぬルーティーンの中ではっと目についた
女学生に少し惑わされてしまうけれど、また
普段の日常に戻っていく。何も劇的なことは
ないのだけれどシニカルでとても良かった。
村上春樹とか山田風太郎とか主人公の愛読書が
渋いのが良かった。
江國香織「夕涼み」
THE、江國さん。
江國さん定番設定の仲良しの姉妹が出てくる。
主人公は姉の花、妹の結婚のお祝いに関東郊外から
都内の独身時代のいきつけの串揚げ屋さんに出てくる。
妹との会話の中で、重大な悩みではないけれど
少し心を重くする家族の悩みを反芻したり。
平和な姉妹のやり取りの中に差し込まれる花の
夫婦のやり取りの回顧がちょっとゾクっとした。
家族って平和とか安心の象徴と思われるけど
責任とか逃げられないとか閉ざされた重しも
含まれていてそういうことをとても上手に表現していて
幸せな気持ちとちょっと背筋が寒くなる気持ちが
両方感じられて読み物としてとても面白かった。
綿矢りさ「青春のリグレット」
柚木麻子「冬の終り」
この2編は軽く読んでしまったので特に感想はなく。
川上弘美「春よ、来い」
一番ページ数をとっていて短編の中に
永井カナコ38歳、上原多恵13歳、衣笠雄大29歳の
三人のことが交互に視点が変わって描かれている。
当初三人に接点はなく大人二人には秘密があって、
13歳の子供はいじめを受けている。
衣笠雄大のパートは少しユーモアがあってお父さんも
良い味だしていて、上原多恵ちゃんのパートは悲しいけど
どうにもできないむなしさ、子供の無力さが感じられ
でもそれでも頑張って毎日淡々と過ごしている
強さも感じられる。永井カナコさんのパートは
パートナーも含め皆優しさに満ちていて
とても良かった。最後ハッピーエンドってわけではない
けれど、焚火にあたるしっかりとした暖かさではなく、
白熱灯に手をかざした暖かさのようなふんわりじんわり
した余韻があって、少しだけ良い方向へ行きそうな
終わり方でとても良かった。
一旦全部読み終わってからもう二度も春よ来いだけ
読み直している。毎回じんわりと目が潤む、
そしてこれでいいんだよって自分のこと含め皆の人生を
納得できるような読後感。さすが川上さん。 -
Posted by ブクログ
どれも面白かった。
著書に『リング』がある鈴木光司の作品にはリアルな生々しさがあった。
特に好きだったのがビルとビルの隙間に落ちる『五月の陥穽』。
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角川ホラー文庫約30年の遺産!90年代から現在までの最恐セレクション。
1993年4月の創刊以来、わが国のホラー・エンターテインメントとともに歩んできた無二の文庫レーベル、角川ホラー文庫。その膨大な遺産の中から、時代を超えて読み継がれる名作を厳選収録したベストセレクションが登場。大学助教授の〈私〉が病院で知り合った美しい女性、由尹。ミステリアスな雰囲気をたたえた彼女は、自分の体は呪われていると告げる。ともに暮らし始めた二人だが、やがて悲劇的な事件に見舞われて……。ミステリとホラーの巨匠・綾辻行人90年代初頭に執筆した傑作「再生」をはじめ、『リング』の鈴木光司が東京湾のクルーズ船を舞台に戦慄の一夜を描いた「夢の島クルーズ」、故・今邑彩が角川ホラー文庫のために書き下ろした不穏な物件ホラー「鳥の巣」、の第72回日本推理作家協会賞に輝いた澤村伊智の学園ホラー「学校は死の匂い」など、バラエティ豊かに、ホラージャンルの面白さと可能性を示す全8編。最高にして最恐、これが日本のホラー小説だ。ホラー評論家・ライターの朝宮運河セレクション。
収録作は以下の通り。
綾辻行人 「再生」(『亀裂』、『眼球綺譚』)
鈴木光司 「夢の島クルーズ」(『仄暗い水の底から』)
井上雅彦 「よけいなものが」(『怪奇幻想短編集 異形博覧会』)
福澤徹三 「五月の陥穽」(『怪談歳時記 12か月の悪夢』)
今邑彩 「鳥の巣」(『惨劇で祝う五つの記念日 かなわぬ想い』)
岩井志麻子「依って件の如し」(『ぼっけえ、きょうてえ』)
小池真理子 「ゾフィーの手袋」(『異形のものたち』)
澤村伊智 「学校は死の匂い」(『などらきの首』)