小池真理子のレビュー一覧
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小池さん作品3冊目。回想や手紙、死へ向かう等、他の作品と同じ要素ありでしたが、この作品は魅力的な登場人物が多く、タイトル通り「欲望」とは何か考えさせられました。
三島邸もどきでの再会シーンの楓、書架、南の島での明るさ、ラストの陽の当たる庭、すべて美しい場面でした。フェティシズム等ではなく若者が誰しももつ思慕を描いていているのに薄ぺらくならないのが凄いです。(偏愛ものや禁欲、忍耐系を期待した読書には物足りないかもしれません)
乳児が母親に触れたがるような単純な接触欲、
親しい相手と手を繋いで寝るような信頼•安心感、
母性、父性への憧れ、尊敬、肉体美、フェロモン
妊孕性的な生殖欲、挿入欲、野獣性、友愛、
コレクション的な統制欲、庇護欲、自我、承認、
思想、精神的な繋がりとのバランス...
それらへの感じ方の微妙な男女の違いなどがグラデーションの様に変化して(しない人もいて)、性欲や官能という言葉では収まりきらない欲望とは、生命力であり欲望が激しいほど無や死と隣り合わせでもあると感じるような小説でした。 -
Posted by ブクログ
松任谷由美デビュー50周年を記念して、6人の女性作家さんたちが書き下ろしたユーミン曲がテーマのオリジナル小説集。題名見るだけで惹かれるものがあり、即購入。
収録されている話は以下、
・あの日にかえりたい(小池真理子)
・DESTINY(桐野夏生)
・夕涼み(江國香織)
・青春のリグレット(綿矢りさ)
・冬の終り(柚木麻子)
・春よこい(川上弘美)
いずれの曲も知っていたが、あらためて思ったのは、その曲に対する偶像イメージは『人それぞれ』ということ。特にユーミンなどは僕らの年代は誰もが知っていて、その曲に対する絵が脳裏に自然と浮かぶ。
ただ、それをいざ物語化してみたら、作家が描くストーリーが自分とは少し違うのだ。
例えば『あの日にかえりたい』のストーリーは学生運動の渦中であり全くオシャレ感は無く、『冬の終り』は歌詞には一切関係なく女性のパート職場の人間関係の話だった。
まあ当時の僕らがカーステレオで流す音楽の何割かがユーミンやサザンであったように、青春の傍らには必ずユーミン曲が流れていたという象徴のような小説なんだということかな。
『私を許さないで 憎んでも覚えてて』というキラーフレーズが印象に残る『青春のリグレット』は、自由奔放に恋愛をしていた女性が回顧しながら交差点で物思いする話は、僕のイメージに近かったかなあ。『綿矢りさ』だから、女性のしたたかさ?が描かれていてちょっと怖かったな。
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小池さんの文章は本当に手触りの良い上質なガーゼケットのよう。
過去に読んだことのある本について、小池さんの目を通すとそう捉えるのかと新たな発見もあった。谷崎潤一郎を再読したくなった。
フランス映画の視点についても興味深い。
特に心に残った箇所
「本物のときめき」
私自身はもう若者ではなくなってしまったけど、若い頃から“なんとなく無難”を選んでしまっていたので痛いところを突かれたなーと感じた。何かとコスパ、タイパや断捨離など無駄を極力省いたものが好まれるけど、無駄こそ人生の楽しみというのもまた一理。
「至福のほろ酔い旅行日記」
オランダは自己責任の国。運河にはどこにも柵や手すりが設けられていないそうで、こどもたちは服を着たままプールに飛び込み、自力で這い上がる訓練をするという。日本もそういう傾向になってほしいなと思った。 -
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ネタバレ松任谷由実デビュー50周年記念オリジナル小集。全作書き下ろし。ユーミンの名曲タイトルから6人の女性作家が新たに奏でる小説のハーモニー。令和4年7月1日発行。
小池真理子 「あの日にかえりたい」(1975年)
桐野夏生 「DESTINY」(1979年)
江國香織 「夕涼み」(1982年)
綿矢りさ 「青春のリグレット」(1985年)
柚木麻子 「冬の終り」(1992年)
川上弘美 「春よ、来い」(1994年)
ユーミン世代ではないので、リアルに記憶にあるのは「春よ、来い」くらい。といっても、歌詞なんて気にしてなかった年頃だったので、いまいちよく分かっていない。本当は、曲を聞いて、歌詞を読んでからこの本を読もうと思っていたのだけど、まぁ、積読になってしまっていたので、ひとまず読んでみた。
ユーミン世代のお姉さまたちに読んでもらって、感想と解説を求めようと思う。
NHKのドラマでもやっていたのは知ってたけど、見逃したんよね。
以下、各小説ごとの感想。
「あの日にかえりたい」
1970年代に東京の大学に出てきた女子学生。恋?と友情のあいだで迷い、友情のために嘘をついたのに、気付かれて疎遠になってしまう。でも、年賀状のやり取りは続く。あの日、嘘をつかなければ、ずーっと大人になった今の2人の友情の形は違ったのかな。
「DESTINY」
30歳を過ぎた真面目だけど、マザコンなのでは?という男性の恋。きっとこういう誠実で真面目で、仕事も安定してるけど、恋愛下手な男性っていると思う。女性も然り。
「夕涼み」
結婚して子どももいる姉が、年の離れた妹の結婚をお祝いしつつ、結婚後に起こる、女性が抱える悩み、窮屈さ、夫婦関係の悩み・・・。そんな思いを妹がしなくてもよい結婚を姉は願う。敢えて海外で見た女性たちの様子を例えのように出しているのが、美しいというか、生々しくない。海外でも日本でも、女性が抱えるものは同じなのね。ちょっと切ない。切ないけど、この姉の願いが多くの人に広がって、何かが変わっていくといいな。
「青春のリグレット」
自分の方が相手を好きで好きでたまらなくて結婚した方が幸せなのか。それとも、相手の方が自分のことを好きで好きで大切にしてくれて結婚した方が幸せなのか。
私も思い当たる恋愛があり、んー、と考えてしまった。
「冬の終り」
地方の寂れた?スーパーのフードコートで働く女性。時々シフトが一緒になる女性のことが気になる(恋愛ではない)。ある時ユーミンの曲が店内でかかったとき、その女性と心が通じ合ったような、近づいたような気がして、スーパーの他のおばちゃんたちと深入りしないでおこうと思いながらも、行動は深入りしていて、ちょっとクスッとしてしまった。いいね、女の友情。これは女の友情だと私は思う!柚木麻子さんはこういう話うまいな~。
「春よ、来い」
実は一番よく分からなかった話。でも、私なりに解釈した。
知らない誰かのために、自分に与えられた特別な能力を使って、知らない誰かの幸せを願う。
きっと私たちの世界って、どこのだれか知らないけど、心のなかで「頑張れ!」と応援したくなったり、「この子の優しさがこの子を幸せにしますように」とそっと願いたくなったり、そういう小さな小さな誰かに対する優しい気持ちが集まって、巡りめぐって、自分にも幸運がやってきているのかもしれないと思う。
さて、近いうちに、ユーミンの曲を聞いてみよう。