小池真理子のレビュー一覧
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購入済み
没頭と陶酔
10才頃から、基本的に絶えず手放せない読者中毒です。成人してからは、立て続けに読む日々の流れが突然醒めるクセがついてしまいました。
年に2,3か月の冷却。それを繰り返して30年になります。
醒めてる間の手持ちぶさたな日々が退屈で、中毒状態にもどりたくであがきます。でもそれには、かなり強めに引き込まれるきっかけの一冊が毎回必要で、さまよいます。この本は間違いなくその一冊になりました。
今、読んだ直後。いろんな種類の読後感がぐちゃぐちゃに混ざっています。
心の中にある虚無感は、人によって濃度は違えど、皆が持っているはず。でも、うまく言い表せない虚無感です。それを、こんな物語を通して、手のひらにのせて見せてくれた筆者に対して、なぜか嫉妬もわきました。よかった。 -
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目眩く性と死…圧倒された世界でした。
類子と正巳と阿佐緒、そして袴田…形の違う欲望でも、それぞれの欲望はとても強かったです。
肉体だけでなく精神のエロス。かなり際どいことも書かれているのですが全く厭らしくないのはさすがです。
正巳が性的不能者じゃなかったら、類子と正巳はここまで感応し合い、高まらなかったのではないか…とも思いました。
静かに狂っていく感じも良かったです。正巳の最後の海での言葉は悲しくなりました。
そして三島由紀夫の豊饒の海を今度こそ読破したくなります。その上で再読したいです。
官能にもみくちゃにされました…すごかったです。 -
Posted by ブクログ
父を早くに亡くし、母がゆるやかながらも進行性の病気にかかっている、そんな状況の私にはとても身につまされる小説だった。
そうでなくてもある程度の年齢になれば親が老いて介護が必要になったり、段々と死に近づいていく。そんなときどんな風に向き合うかを考えさせられる。
両親の離婚によってほとんど関わり合うことなく生きてきた父が、難病を患った末に亡くなった。
娘の衿子は父の遺品のワープロを持ち帰るが、そこには病気により口を利くことも出来なくなっていた父の心の叫びと後悔、そして衿子への愛情が綴られていた。
主人公の衿子は50代で独身(離婚歴あり、子どもなし)。編集社で働く、いわゆるキャリアウーマン。
子どもの頃両親の離婚によって別れた父とはたまに会う程度で、その後父は再婚し2女をもうけた。
そんな父がパーキンソン病にかかり、介護施設でその終末を送り、亡くなったところから物語はスタートする。
家族というものを信じず、濃密に関わることも避けてきた衿子が、父の死後に父の想いを知り、ドライに生きてきた自分のやり方が正しかったのかを見つめ始める。
父の後妻、そして衿子にとっての異母姉妹である2人の娘との付き合い方ややり取りに、女同士だからこその微妙な距離や少しの皮肉が含まれていて、読んでいてざわざわする感覚が。
衿子や姉妹はとりあえずは“大人”で、後妻だけは自分に正直に生きている(それが良いかどうかは別にして)。
父の死後に、父が遺した文章や手紙から、父の想いや秘密を知るということ。
晩年喋ることが出来なくなった父が思っていた真実、そして過去の愛の遍歴。
私も多少似たような経験があるけれど、親が生きているときにその人生を知るというのはとても難しくて、亡くなって初めて知ることのほうが多い。
そこには複雑さも当然あるけれど、何となく安心したり、不思議と穏やかな気持ちになれたりもする。
そしてそこで自分の失敗や後悔を見つめ直して、それをその先に生かせるかどうか。
登場人物の女たちの微妙な心情が、とくに会話からはっきり見える。
衿子の父を誰が愛していて、そして誰が愛していなかったのかも。
様々な選択の果ての死。簡単には取り戻せない失敗も、ときにはある。
最後“沈黙の人”になるしかなかった人生だからこそ、その想いは文章に姿を変えて饒舌に語られた。
普段寡黙な人こそ、その内にはたくさんの想いがあるのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
あー、よかった、、、。
余韻に浸ってます。
この世代の恋愛ものを書かせたら、大好きな作家さん。
イヤらしくなくて、上品で。
還暦を迎えようとしている年齢でも、こうやって、ときめくドキドキする気持ちが残っていることを知って安心する。
相手を知りたい、と思う気持ち。
嫉妬。
友人に言いたいけど、言いたいけど、自制する気持ち(「恋愛は『舞台』で観客が必要」に笑ってしまった)。
読みながら、これから起こるであろう「別れ」が、ひょっとして、ニセ医者なのではないか?と予測できたのは、渡辺淳一さんの「雲の階段」を思い出したからかな。
にしても、実刑が1年、というのはちょっとびっくり。そんなもんなんだー。
勿論、最後に二人が新しい出発ができることはとても嬉しい。ちょっと泣きそうになったくらいだ。
そして、「鏡子」の名前が最後に意味があるとは、、。
恐れ入りました。