小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小説のみならずエッセイも収録された怪奇譚傑作選。小池真理子さんの短編ホラーって結構読んでる……って思っていたのですが。「律子慕情」「午後のロマネスク」って、ただの恋愛小説だと思って完全に読み逃していました。不覚。
特に「律子慕情」に収録されている「恋慕」「花車」「慕情」が素敵。死者の霊が登場するのでホラーとは言えますが、全然怖くないの。むしろこういう現れ方ならしてほしいと感じてしまいます。どこまでもさりげなく現れ、ただただ見守りそして消えていく愛おしい死者の姿がこれほどまでに静謐に描かれている作品ってなかなかないのでは。そして最近「神よ憐みたまえ」を読んだところなので、そちらとの符合にも「おっ -
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再読です。
著者が配偶者を亡くし、それを綴ったエッセイが話題になっていたころから著者のことがなんとなく心配で、でも、そんな辛いエッセイを読む気にはなれず、本棚に合った直木賞作品を再読することで折り合いをつけました。意味ないけどね。
著者のことを初めて知ったのはまさにこの小説で、当時はかなりインパクトがありました。
その後も著者の本は何冊か読みましたが、本書を超えるものはありません。
再読でも、軽井沢の風景描写が美しければ美しいほど不穏な気持ちに拍車がかかってゆくという読者の誘導は絶妙だと感じたし、70年代の学生闘争の象徴である浅間山荘事件の終結が奇しくも主人公の官能的な世界の終焉と同時にや -
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一言で言うならは、すさまじい本です。
これほど力のある作品と出会えることは、一生のうちにそうたくさんはないだろうと思うほどです。
作品に描かれることになるテーマもさることながら、最初から最後まで、ことごとく予想を裏切る展開が続き、特に後半は息をするのを忘れそうになります。
情景・心理描写の生々しさも、自分がその世界に飲み込まれたような感覚になります。
最初にどんな事件であったか、表面的な事実は語られている、いわゆる「サスペンス」でありながら、これほど最後の最後まで真相が分からず先へ進まずにいられない作品には出会ったことがありません。
直木賞受賞という事実が霞んで見えるほどのとてつもない傑作です -
Posted by ブクログ
《死を背景としつつ、それに抗う生を、いっそう鮮やかに浮かびあがらせている。》
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男と女の話ではあるが、(男と女と言っても、死んだ友達の不倫相手だったり、偶然知り合ったかなり若い男だったり‥)それぞれの人生が、短編ながら読みやすくまとまっている。どの話の終わりも決して悲観的でなく、ポジティブな読後感に浸れる。
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最後の春爛漫は小池真理子さんらしからぬ、男と女な友情が描かれていて、意外な感じがした。幼なじみのカズは、決して恰好よくはないけれど、関西弁と笑顔がよく似合う、死んだ妻を愛するあったかいイイ男とみた。40、50歳になっても続く男女の友情って、すっごく憧れる。
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全編を通して、透明感が -
Posted by ブクログ
本作は、作者の小池真理子氏が、1960年代に仙台のある女子校に転入し、自身とその時代を下敷きにして書いた物語である(あとがきより)。
実は私の母が、その当時、モデルとなった女子校の生徒で、在学中の小池さんのこともよく覚えていた。ちなみに母は小池さんより2学年下で、学生運動が最も高揚していた時期に入学したという。
作品と合わせると、主人公・野間響子が、制服廃止闘争委員会の委員長になったのが高2生で、母は中3。響子もこの時がいちばん『闘争』として、反戦デモやアジビラ刷りに加わり、その渦中にいたが、渉と祐之介、エマらとの出会いにより、運動から徐々に疎遠になっていく。
高3生の頃には、予備校と学校をサ -