あらすじ
過ぎてみれば、全部、どうってことなかった――
日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。
ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、
彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だという――。
生と死、そして性を描き、人生を謳いあげる短編集。名手がつむぐ至高の7作。
【収録作】
ミソサザイ/喪中の客/アネモネ/夜の庭/白い月/微笑み/日暮れのあと
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Posted by ブクログ
7つの短編集です。2021年〜2023年の作品集。
良いわあ〜! やっぱり良いのですよ、小池真理子さん。絶品です!
生きること、老いること、心と性、人との縁、そういう…人として生きていたら避けられない、ほんの些細なことも。こんなに美しい言葉で紡いでくれる。
なんだか、切なくもウットリと読んでしまうのです。
印象に残ったところ少し。
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今日のことしか考えない。明日を思い患わない。目の前に流れる時間だけを見つめて生きる。もらった給料分だけの生活をもくもくと続ける。欲を捨てる。未来を思い描かない。
何もかもどうすることもできない、もうすべて、遅いのだ、遅すぎるのだ、と感じた。
この人は、と多美は思った。あと百年生きて、百年分の人生を楽しめるに違いない。
人間ってのは、自分のいい加減さに救われることも多いですからね。
生きている、と多美は思った。これからも生きるだろう、と思った。
私たちの人生は、ぐるぐる、ぐるぐる、巨大な輪になって旋回し続けているに違いありません。
いいのです。ひと目、会えただけでいいのです。いつかまた、会えるでしょう。必ず会えるでしょう。百年後、千年後になるのかもしれないけれど、必ず。
過ぎてみれば、全部、どうってことなかった。
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生きてると、辛くて絶望感にさいなまれることもあるけど、それもまた人生。一歩一歩進んで、また百年後、千年後に何か良いことがあるかも?なんて考えたりもしています。
Posted by ブクログ
帯の言葉。人生の哀歓を謳いあげる至高の短編集。全く❗️
年齢を重ねたからそう思えるのか。20年前ならどんなふうに感じるんだろう。
後味よく、しんみりと、じんわりとできる本でした。
Posted by ブクログ
中篇七話収録。各々、毛色の違う作品で読み応えあり。平穏な日常に、突然煩い事が起こった時の人間の心情が丁寧に描かれていた。『喪中の客』の滝子が不気味だった。
Posted by ブクログ
日常の中で感じる生と死がどの短編にも描かれていて、そこにあるたくさんの感情が静かに濃密に毎日の中に溶け込んでいる。最愛の人を喪ったり、年老いてあの頃に思いを馳せたりと、そのひとつひとつの情景が胸に迫ってくるような、苦しくなるような感じとこれからも生活が続いていく不安と小さくとも感じられる喜びがあって生と死の身近さを実感する作品集。
Posted by ブクログ
表現が美しいとオススメされた一冊。なんだろう?怖い話でもなんでもないのになんかしっとりした感じ。それがきっと表現の美しさなんだろうな。若い自分が読んだら引っかからないけど今読むからこそしみじみ寂しさとかきらりとする感じがわかる気がする。
Posted by ブクログ
表題日暮れのあと、「日が沈んでも月が昇る。星が瞬く。」「宇宙はいっときの休みもなく動いている。去ったものは戻る。少なくとも代わりになるものを持ってくる。すべてが闇に帰し、無になってしまうことはないのである。」
に救われる想いがした。失いつつある運命について、抗うことなく流れに身を任せようと主体的に思える気が湧いてきた。
Posted by ブクログ
齢五十を過ぎて、少しずつ体や気持ちの老いを感じ始めてはいるけれど、まだ死を近しく感じるほどではない。
そんな私に、死ってこんな風に近づいてくるんだなと教えてくれたような一冊。
死に近づくって、食べることや誰かと交わることや、そんな本能的な欲を若さという勢いに惑わされることなくリアルに感じるプロセスなのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
主人公のほとんどが、もう若くはない女性で、おどろおどろしい話が多い。
個人的には「白い月」が心に残った。
赤の他人から知らされる、夫の心。奥ゆかしくて素敵。
ひとりになった時の自分を、想像してみたくなる。
とりあえず、次に「月夜の森の梟」を読みたい。
Posted by ブクログ
「生と死、そして性を描く濃密な短編集
過ぎてみれば、全部、どうってことなかった――」
王道の恋愛もの、ミステリー・サスペンス、あるいは幻想怪奇小説など幅広い作風で読者を魅了してきた小池真理子は“短編の名手”でもある。その実力をいかんなく発揮している「日暮れのあと」。
人の生と死、そして性を描き、人生の哀歓をつづる短編は大人の読書を満喫するのにちょうどいい。
ミソサザイ
喪中の客
アネモネ
夜の庭
白い月
微笑み
日暮れのあと
の7作品。
表題作「「日暮れのあと」の主人公は、日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だという。
他6作はどれもが濃厚な年の差恋愛の物語。
亡きおばへの若いころのほのかな想いが切ない「ミソサザイ」
ホラーテイストながらも孤独が沁みる「喪中の客」
罪を犯してしまう人間とその出来事の対極にある純真な女性との対比が悲しい「アネモネ」
「夜の庭」は女性視線では「やられた!」、しかし「男は阿呆やなあ、ざまあみろ!」
夫に突然死なれた妻の「生きている」という感覚の再生までをたどる「白い月」
在りし日の年の差恋との再会「微笑み」
Posted by ブクログ
7篇の短編集ですがどのお話も印象的。生と死、愛、性が共通していて全く違う雰囲気なんだけど、どれもねっとりとした感じで読み応えあり。
『喪中の客』は最後ゾクッとして印象に残りました。好きなお話は『アネモネ』『白い月』『日暮れのあと』
中高年の女性とかなり歳下の男性との恋のお話がいくつかありますが、表題作の『日暮れのあと』はその中でも極めつけという感じでした。26歳の植木職人の男性が結婚したい相手は64歳の現役風俗嬢。なかなかあり得ないお話だけど、男性に興味津津で馴れ初めをを聞く72歳の雪代の気持ちはわかるなぁ。
Posted by ブクログ
「ミソサザイ」
「喪中の客」
「アネモネ」
「夜の庭」
「白い月」
「微笑み」
「日暮れのあと」
七話収録の短編集。
洗練された言葉で紡がれる七つの物語は、登場人物や風景が自然と眼前に浮かび上がる。
生と死と性が共通して描かれている本作だが、最も心に迫って来たのは深い孤独感。
時に淫靡で生々しさをを醸し出しつつも、そこに厭らしさは感じられず、老いて死へ向かう者達の寂寥感や悲哀が伝わる。
ホラーテイストの『喪中の客』が一番インパクトが強く背筋が寒くなるが、どの短編もつ粒揃いで味わい深い。
この静謐でしっとりとした世界観が堪らなく好き。
Posted by ブクログ
2015年から23年までの7つの短編集。ほとんどが高齢期の女性が主人公。大きな出来事も山場もない淡々とした描写だが、物語丸ごと抱きしめたくなるような描き方が素敵だと思う。
過ぎてみれば全部どうってなかったような、、、
実感できるのは私が年とったせいかな。
Posted by ブクログ
生きづらさを抱えながらも愛に縋る者。人との繋がりに辟易し、自分の人生を生きようと決意する者。大事な人の死を受け入れられない者。何とかして受け入れようとする者。無邪気な恋慕に情熱を滾らせる者。切なさと清々しさ、ほんの少しの恐怖と愛おしさ。優しい夕日を眺める様な読後感。
Posted by ブクログ
死や老いについて考えることは
これまでの自分の人生を
振り返ることでもあるなー。
死というものに直面した人たちの
心の揺れが
その季節の花、鳥、風、雨
そして月などと重ね合わせ
細やかに丁寧に描かれている。
死は特別なことではなく
いつでもそこに
生きているそばに
当たり前のようにあるのだと思う。