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Posted by ブクログ
「生と死、そして性を描く濃密な短編集
過ぎてみれば、全部、どうってことなかった――」
王道の恋愛もの、ミステリー・サスペンス、あるいは幻想怪奇小説など幅広い作風で読者を魅了してきた小池真理子は“短編の名手”でもある。その実力をいかんなく発揮している「日暮れのあと」。
人の生と死、そして性を描き、人生の哀歓をつづる短編は大人の読書を満喫するのにちょうどいい。
ミソサザイ
喪中の客
アネモネ
夜の庭
白い月
微笑み
日暮れのあと
の7作品。
表題作「「日暮れのあと」の主人公は、日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だという。
他6作はどれもが濃厚な年の差恋愛の物語。
亡きおばへの若いころのほのかな想いが切ない「ミソサザイ」
ホラーテイストながらも孤独が沁みる「喪中の客」
罪を犯してしまう人間とその出来事の対極にある純真な女性との対比が悲しい「アネモネ」
「夜の庭」は女性視線では「やられた!」、しかし「男は阿呆やなあ、ざまあみろ!」
夫に突然死なれた妻の「生きている」という感覚の再生までをたどる「白い月」
在りし日の年の差恋との再会「微笑み」