山田詠美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった…。切なかった。
好きだったのは「堤防」「花火」「桔梗」「ひよこの眼」など。何人もの私がいて、何人ものあの人がいて。
「堤防」
「じゃ、おまえは、欲望のエネルギーが、運命の方向を変えるという事実をどう考える?」(p.44)
どう考えればいいのだろう、ある種類の瞬発力がこの世の中にはあるということを。そして何故か発揮できる時と、発揮できない時があるということを。
「私、ある男に夢中なのよ」
「へえ、いいじゃん。なんで、それで、投げやりになるわけ?」
「だって、奥さんも、子供もいる人なんだもの」
「まずいよ、それは」
「そんなの解ってるよ。解ってるから、腹立つんじゃない。どうして、あ -
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Posted by ブクログ
久しぶりに小説を一気読み。
高校生の時から山田詠美大好き。
そして40を超えたからこそ読み応えがあったこの小説。登場人物の3人ともに、わかるよその気持ち、となった。
若い頃はモモのような女性に憧れたけど、今は喜久江のような女性に惹かれる。そしてそんな2人に心底愛されている太郎はうだつが上がらなくて、小心者で、自分は何者でもないのに喜久江からもモモからも愛されることをなんの疑いもなく享受している図々しい男!でも言い表せないオスとしての魅力があるんだろう、詠美先生の作品の中の登場人物だから。
これを映画化したらだれが太郎を演じてくれるのかなー、と頭をよぎった。
大泉洋がもう少しだらしない体にな -
Posted by ブクログ
すっごく好き。軽々しく感想を書きたくないくらい。自分の人生のどこかに、登場する主人公のような気持ちになった瞬間があったような気がする。子どもはまだそれを表す言葉を知らなかったとしても、子どもなりに色々感じ、考えている。そんな儚い瞬間をこんな風に表現し、物語にするなんて凄まじい才能。
子どもの頃は夢と現実の境が曖昧だったり、些細な出来事が大きな勘違いに発展したりもするんだけれど、それを「馬鹿らしい」とか一蹴するんじゃなくて、『堤防』に出てくる父や『桔梗』の美代さんのように、敬意を持って対等な目線で向き合える大人になりたいと思った。何度も読み返したい一冊。