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ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。それは幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」。絶望から再生した温かい家族たちが語りだす、喪失から始まる愛惜の物語。
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Posted by ブクログ
連れ子をつれて再婚し新しい兄弟も生まれ、絵に描いたような幸せな家族になった。しかし、兄の死をきっかけに母がアルコール依存症になり、一家の姿は激変する。 絶望から再生していく話で一見地味だけど、家族の幸せとは何かを見つけていく様子が時間をかけて丁寧に描かれている。 死は一種類の悲しみしか生み出さないの...続きを読むではなく、 千人いれば千通りの死の受け止め方がある。 家族の中心的存在であり、優等生だった長男が亡くなり、父、母、3人の兄弟にとってそれぞれ全く異なる種類の哀しみを生むことなる。 だけど、それぞれの種類の哀しみを時間をかけて気持ちに折り合いをつけていくことで血のつながりも関係なく家族のつながりってどこからでも作り上げていけるものなんだなって、感動した。
まるで登場人物の回想を直接覗くような文章が大好きです。 澄川家の面々が幸せな家族を作ろうと励む姿に、家族とは?幸せとは?と考えさせられる内容で、ちょうど人生の岐路に立つ自分にとって、必要な時に出逢った必要な本でした。 この本は、私の人生のバイブル。
山田詠美2作目。 前作よりエイミーエイミーしてなくて家族愛中心だけど相変わらずドロドロしてる。 よくもまあこんな話と文章が書けるよな、近くにいても怖くてきっと友達になれない。そろそろ禁断症状でそう、次の作品読まなきゃ。
数年ぶりに読み返したらあらすじボヤッとしか覚えてなく新鮮に読めて、すごく良かった うまいの一言に尽きる。小説って技術が要るけど、これ見よがしだったり、奇をてらいすぎるものが技術と評価されるのでは無い。無駄のない適切な言葉のチョイス、感情の機微に敏感な描写こそがそうなのだ、と再認識させられる
それぞれが違う形で前のパートナーをなくした男女が再婚し、お互いの連れ子合わせて三人と、新しく出来た一人の子どもで、合計六人の家族が出来上がった。 素敵な家に移り住み、家族仲も良好で、素晴らしいスタートを切る。それは幸せな人生づくりの完璧な再出発かと思われた。 しかし落雷が原因の長男の死をきっかけに、...続きを読む長男を溺愛していた母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。 家族だからと言って何でも遠慮なしに振る舞って良いわけではなくて、むしろ家族だからこそお互いが少しずつ我慢をしたり役割を演じたりしてどうにか家族というものは形成されていく。 この本を読む以前から思っていたことが、この本を読んでますます深まったように思う。 突然不在になってしまった長男の存在が、長きに渡って家族たちに影響を与え続ける。 見える形で壊れてしまった母親はある意味では一番幸せで、あまりにも出来過ぎたヒーローのような存在だった長男の夭逝は、兄弟たちを様々な形で苦しめる。家族内でも、そして学校でも。 人間は必ずいつか死ぬのだから、死というものは全く特別なものではない。だけど幼い頃に兄をなくしてそれぞれに苦しんだ兄弟たちは、死に対して偏った思いを抱くようになっていく。 大切な人の死を、時間をかけて昇華して、自分を取り戻していくということ。 それを放棄してしまった母親に振り回され続けた家族が、長い時間の後にした選択は、けして前向きではなく切なく見えたけれど、それが長い時間をかけて流れ着いた場所なのだと思った。出来うる限りの、最良の選択。 そして最後のページで驚きが。 長女、次男、次女、そしてみんな。という視点で綴られた四章の短編連作。 長男の死や家族に対するそれぞれの思いと苦しみ。人間の黒い面や綺麗事では済まされない部分もたくさん描かれていて、山田詠美さんの小説の中に垣間見える哲学は今回も健在。 「かわいそうという言葉は、言われる側に言ってもらいたい人を選ぶ権利がある。決して自分のプライドを傷付けない、と信じている人にだけ言われたい」という次男の言葉が印象的だった。 上から目線ではなく心から人を「かわいそう」と思える人は、果たしてどれくらいいるのだろう。
明日、大事な人や自分が死ぬかもしれないという忘れがちな事実を、ずっと中心に据えて生きている人たちの話。 ラストは理解するというより、自分の中で解釈を作らないといけない。 とても良かったし、読み返して深く考えることのできる小説。昔読んでいた山田詠美作品とは一味違うが、彼女らしい節も健在で、そこがまた味...続きを読むわい深いと思う。
読者感想文に良さそうな本でした。 読みやすいしテーマ性があるし 感想が人によって変わりにくいかなぁと思う。 山田詠美さんとして読むと少し物足りない気はするけど 自分も歳をとったので、一緒に歳をとっていってる気がして 時の大切さを感じます。 これも成長ということで。
夫に捨てられた妻(ママ)と、その息子、娘。 妻を病気で失った夫(マコパパ)と、幼い息子。 ママとマコパパが結婚し、五人の新たな家族を作る。 その時、四歳だった弟創太でさえ、家族を演じなくてはいけないことをわかっている。 アメリカン・アンティークで飾られた大きな家。 家の中を磨き、飾り、子どもたちに...続きを読むは手作りの料理、おやつを食べさせる母親。 やがて、両親のもとに新しい子ども、千絵が生まれる。 子どもたちの必死な努力により、澄川家は美しい、完璧な家族に仕上がりつつあった。 ママの「特別な存在」であった長男澄生の死と、父の事業の不調で、一家は暗転する。 この小説は、構造的な面白さがある。 私が今書いたような、この一家の来歴は、長女真澄の視点から語られる。 そして、今まさに進行していく一家の崩壊を語る。 一家でただ一人、家族の虚構性を引き受けられない、つまり、血縁の絆を信じている「ママ」の無意識の加虐性を指摘するのは、彼女だ。 この配役の妙に唸ってしまう。 一方、創太の物語は、そこから十五年ほど時間が経ってからのこと。 成人した創太から、どん底の澄川家の状況が語られる。 家計を支えるために、お金のかかるエスカレーター式の私学で進学するのを諦める真澄。 同じく公立高校に転出し、友人を得る創太。 澄生の死により、「ママ」の愛を得られると期待したものの、決してかなわなかった彼の悲しみは切ない。 一方、姉の真澄と、血のつながりはないマコパパの間に、紛れもない愛情を見出すのも彼だ。 妹、千絵の語りになる第三章は、さらにその後のこと。 妹の目から、姉が失いたくない大事な人を作るのを怖がっていることが明かされていく。 そして、もはや苦しい治療を続ける気持ちを失っている病んだ母親の中に、自分への愛情がたしかにあることを見出すのもこの娘だ。 最終章には、不思議な緊張感が漂う。 澄生の死から解放されるために、澄生の命日ではなく、彼の誕生日を祝うことにする一家の姿が描かれる。 彼の死に囚われているのは、ママだけではないからだ。 マコパパの事業も再生し、真澄は恋人と順調に関係を深めている。 そして千絵の結婚。 澄川家の再生が感じられるこのパーティは、どこかはかなくもろいもののようにも見える。 千絵の語りの中に出てきた『アメリカン・ビューティ』の、夥しいバラの花びらが浮かんだバスタブで絶命した男の姿を思い出しながら。 物語の幕切れの見事さについては、詳しくは書かないことにする。
大事な人の突然の死を受け止められるか、突然じゃなければ準備をできるの。失くして受け止められないくらい繋がりを育み大事な人となれるか。重いテーマだけど色々考えたい。
夫との離婚、妻との死別、それぞれの事情を抱えた二組の親子が家族となるべく東京郊外のアンティークな一軒家に移り住む。澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、その後千絵が生まれる。誰もがうらやむ素敵な家、凡庸で平和でそれ故にかけがえのない家族6人の幸せは、澄生が落雷に遭い亡くなった時に終わりを告げる。澄...続きを読む生を溺愛した母がアルコール依存症になり、家族の姿は一変した・・・ 長女真澄、次男創太、次女千絵、それぞれの語りで描かれる家族の姿が辛く切ない。家族をまとめようと努力しいっぱいいっぱいの真澄、血がつながらないゆえに母の愛を痛いほど求める創太、唯一父母の血を引きながらどこか冷めた目で家族を見つめる千絵。それぞれがとる行動は違っても、家族を愛し大切に思う気持ちは変わらない。 家族一人の死が残された者にもたらしたもの。それぞれが兄の死に囚われ、行き場を失い、やがて死を受容し明日を生きていこうとするまでの日々は重く辛い。 それだけに、最終章で見えた光に思わず感情が揺さぶられ、気が付けばボロボロ泣いていた。 大切な人、かけがえのない人に明日も会いたいと切に願った素晴らしい家族の物語でした。
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