山田詠美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
すっごく好き。軽々しく感想を書きたくないくらい。自分の人生のどこかに、登場する主人公のような気持ちになった瞬間があったような気がする。子どもはまだそれを表す言葉を知らなかったとしても、子どもなりに色々感じ、考えている。そんな儚い瞬間をこんな風に表現し、物語にするなんて凄まじい才能。
子どもの頃は夢と現実の境が曖昧だったり、些細な出来事が大きな勘違いに発展したりもするんだけれど、それを「馬鹿らしい」とか一蹴するんじゃなくて、『堤防』に出てくる父や『桔梗』の美代さんのように、敬意を持って対等な目線で向き合える大人になりたいと思った。何度も読み返したい一冊。 -
ネタバレ 購入済み
潔い
世間一般的には、悪とされるドロドロの不倫を描いている作品。ではなく、綺麗で、潔い“不倫”が描かれた作品。不倫を肯定するわけではないが、自分の中でどこか「こういう夫婦の在り方も無しではないな、」と思ってしまった。読了後、今まで自分が知らなかった世界を覗く事ができたという高揚感が心に残った。
-
Posted by ブクログ
短編8作。
どれもちょっと大人びたというか、周りを少し達観したような醒めた目で見ている子ども視点の話。
わたしもちょっと似たような子どもだったから共感できるところも多かった。本気でサンタさんを信じてたり、無邪気にウルトラマンになりたいとかプリキュアになりたいって思える気持ちがわからなさ過ぎて、「どういう感覚なんだろう?」って不思議なだけじゃなくて羨ましくもある。でも29歳になる今でも、本当は本気でそんなこと思ってる子どもなんていないんじゃないかってちょっと疑ってる。笑
表題作の「晩年の子供」が1番好きだし共感も出来た。「ひよこの眼」もかなり好き。
ちっちゃい頃はわたしも戦争が起きたらどうしようとか、狂犬病、自分とか家族の死とかを本当に心の底から怖がってたなあと懐かしくなった。
「花火」は少しだけ主人公の語り方とか雰囲気が「あの子は貴族」に似ているなあと思った。
「海の方の子」「ひよこの眼」好きだった。切ない。
・晩年の子供
・堤防
・花火
・桔梗
・海の方の子
・迷子
・蝉
・ひよこの眼 -
Posted by ブクログ
アラサー以上の年代に刺さる言葉が溢れているのではないだろうか。恐らく二十代の頃の私は冬ちゃん側の熱烈なひたむきさをまだ持っていた。
三十代の今、夏美と一浩は理想の夫婦だ。すれたな自分と感じるが、余裕ができたな、とも感じる。
実際問題こういう夫婦は意外といるんじゃないかと思ったりもする。ただ周りが必要以上に騒ぎ立てるので口には決して出さないが。
外で恋をしたから慰謝料とってさよなら、じゃなくてお互い傷つきながらもそれがスパイスとなり、気づきがあり、帰る場所になっている。そんな強固な関係ってめちゃくちゃ大人だなぁ。子どもがいない夫婦だから『お互い』が成立し、かっこよく描けたのだろうけれど。
「『不倫って言葉使わないでくれる?おれ、大嫌い。その言葉』私だって、実は嫌いだ。でも便宜上、使う。誰だって、もう、この言葉に深い意味を与えていない。『倫理にあらずって誰が決めるんだよ馬鹿馬鹿しい。』他人の生活に審判を下すのは、私たちの趣味じゃない。出来るのは、感じたことを話すだけ。」
「特別な機会は、何度も重ねられて行くと特別ではなくなる。この年齢になるとそれが解る。私は、怖がっている。永遠に続くものなどないと知っているから。」
「何年も続く夫婦生活の中で、必ず訪れる出来事。それを隠し通して何もなかったような振りを続ける夫婦もいるだろう。でも私たちは、露呈させることを選んだ。そのことによって、私が一浩を解放したように、私も彼に解放されたのだ。」
「演技する必要のない密室の中で、大人たちは、いつだって子どもに戻る。問題は、その密室を用意してくれる人間が側にいるかどうかだ。一浩は、もう私にそれを与えてくれない。そして、私も彼に与えてあげることが出来ない。その方法が解らない。何故なら、お互いのみっともなさを、私たちは、もう、いとおしがれないからだ。その姿に出会うのが、特別な機会でなくなった時、私たちは、共有していた密室を失ったのだ。」
「はたから見たら、夫婦で恋人作ってよろしくやっちゃって、なんて思うかもしれないけど、人が恋するのは仕様がないじゃない。でも、恋って、やがて消えるよ。問題は、恋心の到達できない領域にお互い踏み込めるかどうかってことじゃない?二人の間にはその領域があって、そこのスペアキーをどこかに預けているような気がするの」
「恋愛がいかに身勝手な自分を正当化しながら進行するのものかを知らないようだったから。相手を想うふりをして、皆、自分の都合で動いている。本当に相手の都合を第一に考えられるようになった時、その恋は、いつのまにか形を変えていたりする。退化する。あるいは、進化する。」
-
Posted by ブクログ
ネタバレなんか、怖い…と思いました。
何がって、百合と真由子の執着…。
百合の方は、生まれながらにあらゆるものを持っている真由子への執着。
真由子の方は、諒一への執着(これは愛?)。
真由子について怖いとはじめ思ったのは、
真由子の直巳への態度でした。
それは、百合への復讐でもあったようですが、
最後に、実は諒一への執着でもあったのではないかと気づきました。
直巳との関係が百合にばれたと分かったときに、
諒一に電話してしまうところとか、
諒一が倒れたと聞いて、車を飛ばしてかけつけようとするところとか。
私の考え過ぎかな?
最後に百合は亡くなり、
真由子は不自由な体となり、
諒一は新しく若い奥さんをもらって、
なんだか悲しくなりました。
さらに、真由子がこんなに思っていた諒一が、
さっさと若い奥さんをもらっていて、
つまんない男だ、と思いました。
唯一救いなのが、
直巳が真由子の傍で看病しているということ。
ああ、このまま本当に
直巳がずっと真由子の傍にいてくれますように
と思いました。