あらすじ
メイクラブまでは一瞬だった。立ち入り禁止のドアの向こう、横たわるスペースもないその空間で、私は立ったまま片足を高く上げハイヒールを壁に付ける。足首には小さなショーツが巻きついている。やがて体の芯に“あれ”が来て、すべての感覚が麻痺してしまった。「うちに来て」――黒人脱走兵・スプーンとの生活がはじまった。愛の表現も謝罪の表現も、私を気持ちよくするための方法を、彼はファックしか知らない。かわいいスプーン――。黒人との愛を描いた、デビュー作を含む詠美文学の原点・3編を収録。
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Posted by ブクログ
初期の山田詠美を知るのに大変お得な一冊。『ベッドタイムアイズ』、『ジェシーの背骨』は芥川賞候補作。恋人の連れ子との関係に葛藤する女性を描く『ジェシーの背骨』が素晴らしい。親から愛されなかった11歳の少年の心情がなぜこんなにわかるのか。
濃密で空しい未知の体験
『ベッドタイムアイズ』について。
心の結びつきでなく、空疎であっても、
低次元、知性の放棄のようにみえて、
破天荒、暴力的な、粗野な魅力を
これほど濃密に描写されると
強い存在感にひょっとして
自分の生活はパワー不足のような
気もしてくる。
未知の世界の陶酔的な魅力と、
自分にしっかりと何かを
掴んでいられない状況、
刹那的、無力で危うい様子を
拡大解釈すると
人生の危うさを感じてしまう。
入ってみたい、避けていたい、
そういう二重の意味での
外の世界だ。
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言葉が流暢で小気味よい美しい文章。そこに描かれる世界は屈折した純度の高いプリミティブな女の愛の形。破壊され支配されることに一種の陶酔を覚えた自己犠牲の愛。堕落の美学といえばよいだろうか。山田詠美氏ならではの感性で描かれる惹き込まれる世界。
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ベッドタイムアイズはわざとらしく格好つけた表現も多かったが、他の2作にはそれが無くて楽しんで読めた。どの作品にもペーソスと優しさを感じる部分が合わさっていて、それが良かった。
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英語に興味を持った時、猛烈に英会話を勉強していた時に出会った1冊。
この作品で山田詠美を知り、好きになりました。
とても切なくて美しい物語を書かせたら日本一なのでは?と個人的に思っています。
恋愛ものはほぼ読みませんが、これは何度も何度も読んでしまう名作です。
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BOOKOFFで購入。
そういえば山田詠美って久しく読んでないなぁと思い手に取った。
黒人の男性と日本人の女性の性愛の話書く人、というくらいの認識。実際、この本に関しては当たっているかも。
書き出しから印象的でスッと入れる。文章がうまいなぁと思う。
3編が収録されているが、1冊でお腹いっぱいという感じ。
Posted by ブクログ
著者の初期の短編3作を収録しています。
「ベッドタイムアイズ」は、黒人の脱走兵であるスプーンと、クラブの歌手である日本人女性キムの性愛をつづった作品です。二人が、引き離されることになるまでの時間を、身体を通じて溶けあっていく経過がえがかれています。
「指の戯れ」は、ルイ子のもとに、かつて気まぐれで交際したリロイ・ジョーンズが、有名ジャズ・ピアニストとして帰ってくる話。二人の関係は以前とはまったく異なっていながらも、過去のつながりを二人が以前とはべつのしかたでたどって結びついていく過程がえがかれます。
「ジェシーの背骨」は、リックを愛するココが、彼の一人息子であるジェシーの世話に振りまわされながらも、ジェシーについての理解を深めていく話です。愛に飢えたジェシーの振る舞いに読者のほうも感情を揺さぶられながらしだいに彼に共感をいだくようになっていきます。
著者の初期作品といえば、日本人女性と黒人男性との濃密な性愛描写を含んだ恋愛小説というイメージが先行して、多少敬遠していたのですが、三作品ともそれぞれにちがった男女の関係がえがかれており、ともあれ強い印象をのこす本でした。
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場面転換にぎこちなさを感じるものの、
力の漲った張りのある文章。
"スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。
ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。"
スプーンとは、なんてことない黒人のニックネームなのですがこのインパクト。
確固たる才能。
下品な言葉が続くものの、その奥にあるのは根源的な切なさだった。
Posted by ブクログ
ジェシーの背骨が好きです。どの作品も恋愛が絡んできますが、爽やかで幸せなだけの恋愛ではありません。人と人との激しい気持ちのぶつかり合いが描かれています。結構大胆なシーンや女性としては痛々しい場面もあるかもしれません。しかし、それだけではない何かがある作品です。
Posted by ブクログ
脱走兵と娼婦の愛の物語。外国の人の愛し方ってきっと自分には受け止めきれないと思った。
指の戯れ。奴隷のようにぞんざいに扱われた男が有名なピアニストとしてもう一度女の前に現れる。男は女のことを好きで好きでたまらなかったんだろうな、きっと最後まで好きだったんだと思う。愛の形や色は些細なことで多く変わってしまう。何かに似てるけど思い出せない。
ジェシーの背骨。ココとジェシーの攻防。ジェシーのアンバランスさ、ひどいマムでも大好きなこと、気持ちを吐き出して成長した瞬間。素晴らしかった。
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濃厚で本能的な恋愛小説が読みたいならこれ!
最初の文から2人の濃密な大人の雰囲気の漂う世界観に引き込まれます。
黒人の男との恋なんてあんまり現実味のない設定なのに,物語の途中途中に自分が恋愛しているときに思ったような事が書かれていて共感できます。
ラストもせつない!
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相変わらず黒人大好きやな~この人w
ジェシーの背骨が個人的にはなかなかの傑作、将来子どもを欲しがる気持ちは確実に削がれるけど・・・w
時たま出てくる鋭い指摘・斬新な表現がクセになる。
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3つのうち、後半2作が好き。
1つめは暴力的衝動と不器用な愛情表現。
2つめは嫉妬と男性の変身について。ものすごく山田詠美らしい作品。
3つめは子供と男と、人間が関係を築いていく過程のでこぼこ。読み心地がよくて、伝えたい中身さえわかってれば単純な文章でも十分なんだってわかった。中身が肝心ね。
子供との関係ってこういうのがあるんだって新鮮な発見があった。
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実はコレ、川上弘美『センセイの鞄』の直後に読み始めた。
のだけど、あまりの凄さに読み進められず・・・中断して多和田葉子『犬婿入り』、野中柊『ヨモギ・アイス』、江國香織『ホリー・ガーデン』、さらに桐野夏生『OUT』の上巻(この本のレビューは下巻を読んでから書きます)まで挟んで、女性作家の作品のストックが切れてしまったので仕方なく戻って、やっと読み終えた、感じ。
山田詠美って中高生向けのお話を書く人じゃなかったの!?
イヤWikipediaにも‘作品は主に「大人の男女の恋愛・性愛」を描くものと、「子供や思春期の少年少女」を描くものと二系統あり[・・・]’とあったし、それを踏まえて初・山田詠美としては大人向けの方を選んだのだけど・・・私、どうやら大人じゃなかったらしいです(笑)。
まぁ「指の戯れ」の後半から少し納得いくようになり、「ジェシーの背骨」ではなんと、お風呂で汗をかいた顔でもくっきり感じるくらい、気が付いたら涙を一筋流してましたが。
というわけで切り捨てるのはまだ少し待って、今度はお子ちゃま向けの方を読んでみようと思いますが・・・
ふぅ。
Posted by ブクログ
短編集。どれもちょっとずつ切なくて悲しい。初期の作品で山田詠美らしい小説。私はすきだけど、性描写とか生々しいのが嫌いなひとはだめそう。最初に読んだときはちょっと気持ち悪いと思ったり、よくわからなかった部分もあった。今また読むとすごくいい。出てくる男はなんか人間らしくて可愛いじゃんて思う。欲深いのは悪いことじゃない。
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スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。
この本のレビューはよくメイクラブと「純愛」って書かれてるけど、そうじゃないと思う。っていうかそんな愛は探してるうちは見つからんと思う。
キムとスプーンは、ひたすら、堕落、ふぁっく、退廃、の繰り返し。体だけ。そこがいい。
その繰り返しが最高に芸術的で、個人的にはキムが最後スプーンのことを心から「好き」になってしまっていたのがちょっと個人的には物足りなかったくらい。
入り込み、体内に飛び火し、やがて沈着し、ゆっくり溶けて甘く染み込んで行く。
2 sweet + 2 be = 4 gotten
TOO SWEET TO BE FORGOTTEN.
甘すぎて頭が痛くなるヌガーとか、
保存料着色料たっぷりのてかてかしたJUNK FOODとか
ジンのストレートで喉が焼ける、とか
そーいう味覚がお好みの方はぜひ。
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相手を愛する事は、自分を愛する事と同義だ。
そして、相手を愛する事と、自分を傷つける事もまた同義だ。
愛する人に対する執着が、自分と同化される。
こんな風にはならないと、思ってるあなた。
きっとその片鱗は誰でも持っているよ。
怖いくらいの気持ちの渦が胸の中心にあるよ。
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読んだのは河出のベッドタイムアイズ。
この本の登録が見つからなかったので仮で。
初期作品には山田詠美さんの日本人ぽくない感覚や表現が、色濃く表れている。これが日本が舞台の物語に落とし込まれると、新鮮さ、鋭さが際立ちさらにかっこいい。
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中編3つ。「ジェシーの背中」母親の愛に触れられなかった11歳の少年の屈折した心と、どう対処したらよいか悩む主人公の葛藤がよく表現されている。2019.7.2
Posted by ブクログ
山田詠美のデビュー作。
なんだろうこの見てはいけないものを見てしまった感(笑)
山田詠美ってこういう話でデビューしたんだなぁ。
3編収録されていて、そのどれも黒人との情事の話です。
作品間で似たり寄ったりの人物とストーリーなのに、こうも味わい深いのはなぜだろう。
下品な言葉やベッドシーンがつづくのに、そこにいやらしさは無く、ある種チャーミングで気怠げなエロティシズムを感じさせます。そしてその世界観を織り成す比喩や言いまわしが素敵だった。
この一冊で、すっかり山田詠美ワールドに魅了されてしまいました。
Posted by ブクログ
ここ最近山田詠美ばかり読んでいるけど
驚いたことに、この人の本はどれも全然違う
共通の軸みたいなものは感じるけど
あまりに違うので、違う人の本を読んでる気持ちにさえなる。
デビュー作のベットタイムアイズは、
GIの黒人男性と、日本人のおんなのこの恋愛の話。
恋愛、といってもその響きの爽やかさはどこにもなく
もっと淀んでいて
何日も窓を開けていない部屋の中の空気みたい。
こんなに直接的に卑猥な表現が出てきても
なんだかそれが嫌じゃないのが、山田詠美らしい。
Posted by ブクログ
山田詠美の書く、だらしなくていやらしくていたずらで時に醜いけれどセクシーで上品なビッチの「ファックしちゃった!」という言葉の軽やかさは切なくて笑いたくなる
Posted by ブクログ
スラングが多用されていて、卑猥なのに何だか格好いいと感じてしまった。
三編の中ではジェシーの背骨が一番読後感が良くて好き。
「家族」って必ずしも父、母、子供ってカテゴライズされなくてもいいよなって改めて思った。
Posted by ブクログ
ベッドタイムアイズ
スプーンは私を可愛がるのが上手い.
こんな風に誰かを愛したことあったけ
えろいとかそうゆんじゃない。
あたしは綺麗だと思う。
ラストは涙腺が緩んだ。
山田詠美の処女作。
あたしは好きだな。
指の戯れ
男を捨てたルイ子
それと同じように捨てられていく自分。
復讐だとかそうゆうのなんだけど
とっても切ない。
あの人がほしくてほしくてたまらなくなった
ルイ子の気持ちがたまらなく切ない。
プライドとか関係なしに欲しくなったんだろうね。
男に溺れて行く様がなんとも切ないラブストーリーです。
ジェシーの背骨
母親の愛情を知らない子供
人に対する愛し方はもちろん
愛され方も知らない子、ジェシー。
愛する男の連れ子との奇妙な3人暮らし。
とても深い。