山田詠美のレビュー一覧
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ネタバレある家族の話
作品としての設定は、少しありがちかなと感じた部分もあった。母親が愛する息子を失い、精神疾患に罹り酒に溺れたり、そんな母親が子供に癇癪を起こして激昂したりなど、崩壊しつつある家庭の描写をするから仕様がないことだと思うが、にしてもありがちだと思ってしまった。
そして澄川澄生(すみかわすみお)という名前や雷に打たれ死んだという、死者の斬新な設定に少し疑念が残ったのもある。
ただ、ほか残された家族の一人称視点の話や、節々に現れる山田詠美さんの綴る文章には心打たれるものがあった。大切な人が亡くなった人、大切じゃない人が亡くなった人、それを俯瞰する人、人の死が与える影響は計り知れない。
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Posted by ブクログ
料理と恋愛にまつわる短編集。
料理が絡むからか、どれも一定大人の恋愛ストーリー。
一穂ミチのエピは不思議な色気を感じる作品。地味女かと思わせといてなかなかやりおる男女だわ。
古内一絵作品はこの人の根底にあるものが伝わるので嫌いじゃない。
君島彼方の作品は性的マイノリティの葛藤がいい具合に滲み出ていてこれも好き。
奥田亜希子のズルい男とそれをわかってて演じた女の話も結構好き。転がされてるようで転がす女は勝ち組だな、って思う。
ということでどれもなかなか思いを馳せることの出来る味わい深い短編集でした。
カレー食べたくなるよ
2025.11.11
204 -
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Posted by ブクログ
一穂ミチ目当てで手にとる。あと巻末の山田詠美のエッセイ 「恩讐の彼方のトマトサラダ」も。
さすが山田詠美!この短い短いエッセイの中にユーモアの中にちゃんと彼女らしい美学が語られている。
今まで振られたことはないって、「男と別れるのは、相手が逮捕されるか、強制送還されるか、死ぬか、のどれかなんで」ってすごい。
原田ひ香の小説、(夏のカレー)初めて読んだけどこの60歳過ぎたしーちゃんと冴子の好き同士だったのに結婚には至らず40年にも渡る出会いから邂逅を経て別れまで(冴子の死)せつないラブストーリーだった。
恋、片思い、両思い、愛、婚約、浮気、裏切り、不倫、
恋愛に関することは”結婚”以外全部(冴子 -
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Posted by ブクログ
ドラマを何年か前に見たことあって、原作があると知ったので読んでみた。
ドラマではうろ覚えだったけど、原作はやはり恐ろしさが尋常じゃなかった。
真由子の視点からしか描かれないから百合が悪者みたいになってるけど(たしかに泥棒猫だけど)、幼い真由子は無意識にずっと百合を傷つけてたんだろうなと思う。
他の方の投稿で、百合が真由子を育てたのだ、とあって、思わず唸った。
最後の場面も含めて結構ドラマが忠実だった。
中山美穂さん、高岡早紀さん、竜星涼で想像しながら読んだ、めちゃくちゃぴったりな配役。完璧。
痴人の愛読んだことないからよく分からんけど、読んでみたくなった。
山田詠美さん「ぼくは勉強ができな -
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何がきっかけだったのか、誰が一番悪いのか……そんなふうに一言で片付けられる話ではない。
小さな選択が積み重なり、結果として大きな事件になってしまったのだと思う。
その「小さな選択」をより良い方向へ導くには、やはり良い人との関わりが欠かせないのではないだろうか。
けれど、その「良い人との出会い」自体が、生まれ育った環境によって大きく左右されてしまうのかもしれない。
では、自分を俯瞰できる力さえあれば、どんな環境にあっても正しい選択ができるのだろうか。
一見、遠い話のように感じられるけれど、決して他人事ではない。
むしろ他人事で終わらせてしまう社会であってほしくない。
もちろん自分に何ができ -
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鳶見習い、ゴミ収集員、引っ越し作業員など、肉体労働についている男と女の恋愛模様六編。描かれているのは、のっぴきならなくなった恋愛の真っただ中で、揺れ動く感情、のような。『間食』で、十五歳年上の不動産屋勤務の女と暮らす若い鳶見習いは、彼女との出会いを思い出し、考える。「一緒に住もうと言われてその気になった。大切にしてあげる。そう言われた。嬉しかった。彼女が嬉しがらせたいのは彼女自身だったのだと気づいたのは、ずい分、後のことだ。」彼は同時に大学生の花とも付き合って、いちゃいちゃしている。「悲し涙が嬉し涙に変わるのを見届けるほど、冥利に尽きるものがあるもんか、と彼は、自分のほうこそ泣きたくなる。この