あらすじ
メロンの温室、煙草の畑、れんげ草の群れ。香り高い茶畑、墓地に向かう葬列、立ち並ぶ霜柱など。学校までの道のりに私が見た自然も人間もあまりにも印象的であった。心を痛めることも、喜びをわかち合うことも、予期しない時に体験してしまうのを、私はその頃知った。永遠の少女詠美の愛のグラフィティ。
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何年も前に読みかけて放置してたのを手にとった。たまたま夏に。夏に読んで良かった。山田詠美の幼少期から思春期を主人公・テーマにした本はとてもいい。子供のダークな部分がピリッと入ってるのがいい。女の子はこうして男の子よりも早くオトナになってゆくんだなぁ。「花火」「桔梗」「海の方の子」「迷子」「ひよこの眼」が好きなお話し。
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詠美さんの子供の話はよいなぁ。ほとんどが同級生よりも大人びた子供が主人公だけど、感情の無秩序な動きやら特有の感覚やらが、やっぱり子供なんだと感じさせて
記憶ではなく感覚でなつかしさ切なさを思い出す。
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面白かった…。切なかった。
好きだったのは「堤防」「花火」「桔梗」「ひよこの眼」など。何人もの私がいて、何人ものあの人がいて。
「堤防」
「じゃ、おまえは、欲望のエネルギーが、運命の方向を変えるという事実をどう考える?」(p.44)
どう考えればいいのだろう、ある種類の瞬発力がこの世の中にはあるということを。そして何故か発揮できる時と、発揮できない時があるということを。
「私、ある男に夢中なのよ」
「へえ、いいじゃん。なんで、それで、投げやりになるわけ?」
「だって、奥さんも、子供もいる人なんだもの」
「まずいよ、それは」
「そんなの解ってるよ。解ってるから、腹立つんじゃない。どうして、あんな男を好きになっちゃったのかなあ。全く、どうかしてる。ねえ、これを運命だなんて言ったら、私、怒るよ。男と女の間ってね、そんなちゃちな言葉で、納得できるものじゃないんだからね」(p.49)
私にはこれこそが運命だと思うけれど。自分が相手に夢中なことも、相手のことが好きなことも認識して言語化できる京子の強さが眩しい。
「花火」
「だって恋に落ちちゃったのよ」(p.69)
「そういう思いやりを持つことが、男を愛するってことなのよ。あの人に会いたいって恋焦がれてる時って、自分を愛してるのよ。自分の欲望を宥めるためにその男を思うのよね。同じ会いたいと思うのでも、その人を愛し始めた時は違う。もっと、静かだし、もっと悲しいものよ」(p.80)
「あーあ、本当に、私たちどうなるのかなあ。男と女って、まったく面倒だわ。体で魅かれ合って、それに飽きた瞬間に、離れられない関係になる。体が離れられないなんていうのは、まったくの嘘。離れられ無くなるのは心が結び付き始めるからよ。体も心も結び付いて離れられないのは、だから一瞬なのよね。両立しない。すぐに消えちゃう。まるで花火みたいなものよ。素晴らしい瞬間だけどね」(p.81-2)
人を本当に愛すると、女は終わりを見てしまうものなのかもしれません。そして、その終わりが来ないように演技者であろうとする姉の気持ちが解らなくもありません。(p.82)
「桔梗」
彼女は、明け方、首を吊って死んでいたそうです。(p.108)
私の分身
「ひよこの眼」
彼は、あの公園で、確かに生きようとしていたのに。そして、私の手をきちんと握ったのに。…それから、何度か、私は偶然、ひよこの目に出会うことがあった。…片手を握りしめながら、私は、こう尋ねてみたい衝動に駆られてしまい、慌てる。もしや、あなたは、死というものを見詰めているのではありませんか、と。(p.214)
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すっごく好き。軽々しく感想を書きたくないくらい。自分の人生のどこかに、登場する主人公のような気持ちになった瞬間があったような気がする。子どもはまだそれを表す言葉を知らなかったとしても、子どもなりに色々感じ、考えている。そんな儚い瞬間をこんな風に表現し、物語にするなんて凄まじい才能。
子どもの頃は夢と現実の境が曖昧だったり、些細な出来事が大きな勘違いに発展したりもするんだけれど、それを「馬鹿らしい」とか一蹴するんじゃなくて、『堤防』に出てくる父や『桔梗』の美代さんのように、敬意を持って対等な目線で向き合える大人になりたいと思った。何度も読み返したい一冊。
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普通夏と言われると明るく爽やかなイメージを抱きがちだけど、この本は夏の気だるい部分とかなぜか秋とか冬よりも少し寂しくなる雰囲気とか存分に感じた。死とか性っていう人間が抗うにはあまりにも漠然としてて当たり前で遠いことが少し斜めから切り取られててすき。夏休みもう一回読みたいー
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短編8作。
どれもちょっと大人びたというか、周りを少し達観したような醒めた目で見ている子ども視点の話。
わたしもちょっと似たような子どもだったから共感できるところも多かった。本気でサンタさんを信じてたり、無邪気にウルトラマンになりたいとかプリキュアになりたいって思える気持ちがわからなさ過ぎて、「どういう感覚なんだろう?」って不思議なだけじゃなくて羨ましくもある。でも29歳になる今でも、本当は本気でそんなこと思ってる子どもなんていないんじゃないかってちょっと疑ってる。笑
表題作の「晩年の子供」が1番好きだし共感も出来た。「ひよこの眼」もかなり好き。
ちっちゃい頃はわたしも戦争が起きたらどうしようとか、狂犬病、自分とか家族の死とかを本当に心の底から怖がってたなあと懐かしくなった。
「花火」は少しだけ主人公の語り方とか雰囲気が「あの子は貴族」に似ているなあと思った。
「海の方の子」「ひよこの眼」好きだった。切ない。
・晩年の子供
・堤防
・花火
・桔梗
・海の方の子
・迷子
・蝉
・ひよこの眼
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完璧な短編集。どの話も忘れることのできない衝撃な内容になっている。子供の頃の夏休みは特別だったことを、ぼんやりと思い出させてくれる。
私自身はこんなに晩年の子供ではなかった。
でもなんとなくだけど、色々なことを、こうやって考えたことがあったんじゃないかな?
子供の頃の夏を想うと、懐かしくて胸が痛む。でも心地良い痛み。こうやって当時の夏を慈しめるのも大人の醍醐味なんだなあ。
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内容は作り物にしても、その中で情緒をこれほど豊かに表現できる著者の表現力に対して、惹かれた。幼い頃の情緒は、それが何ものなのかをまだ知らず表現も出来ない内に時間の経過を経て簡単に流れてしまう。大人になってからは意識したって立ち止まることさえできない類のもの。しかしそれは大人にとっては小さいが、子どもにとっては重大なもの。
この本ではそれを文章で的確に表現しており、更に著者の高い感受性でより広げられていると感じた。子どもの目線ではあるが経験豊富な死に面したご老人の思考も感じさせる文章に、少し混乱させられる。
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きりっとしまった短篇集。
あとがきによると、子どものころ過ごした地方都市で感じたことを書いているらしいが、こんな当時の切ない気持ちを書けるなんて・・・。
「桔梗」「花火」にグッときました。
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なんと評価したらよいか。
いろんな場面で衝撃的な小説。
少女から見た男と女の世界、死に対する思い、客観的に見る自分。
その時代の少女時代の山田詠美の感性は、通常の人の何十倍も研ぎ澄まされていた。
普通では見過し忘れていくものまでもが記憶されていた。
全ての短編が心に残るが、「花火」は、特に記憶に残る物語。
二十八で人を本当に愛し、終わりがこないように演技する、女としての能力(感性)。女性の謎。
男と女、恋、愛、性について山田詠美は書き手として表現している。
読んでいて飽きない。
山田詠美、もっと読んでみたい。
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小学生の子どもが主役の短編集。全8編。
全部好き。
山田詠美氏は、言葉にするのは難しい感情の機微を、綺麗な文章に記すことに長けた天才だと思った。
「堤防」「ひよこの眼」が特にお気に入り。
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どうして山田詠美さんの書く女の子の目を通すと、世界がこんなに瑞々しく見えるのだろう。
物語の地の文が好きすぎて読んでいると心地良くてフワフワしてくる。
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短編集
時間の都合で最後の『ひよこの眼』しか読めなかったけど、
めちゃくちゃ面白かった。
あのゾワっとした感じをひよこの眼で喩えたのか…
今度は全部読みたい。
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山田詠美の言葉選びは、やはり唯一無二だと感じる。難しい表現や言葉は使っていなくとも、ある「うまく言えない」感情や情景の描写に、惜しげもなく文才を発揮させていると思う。この名詞を、この形容詞とともに、こんなリズムで言い表すのか、と息をのむ瞬間が多かった。
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私は、6ヶ月後に死ぬ。
一人抱えた10歳の彼女の思い、取った行動は。
人との違いは受け入れる。むしろ楽しんでいたりもする。
大人びた視野の広さや考え方を見せる一方、自分の感覚、驚きや得体のしれなさも素直に、ありのまま表現する。
その彼女と、思いを知らぬのほほんとした周囲とのやり取りが、微笑ましく面白い。
少し違った趣の「花火」を含め全8作。
自分の言葉をもっている、というのはこういうことをいうのだろうか。
初の山田詠美作品。その感性ごとおおいに興味が湧いた。
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ちょっと変わった女の子のちょっと変わったエピソードの短編集。
自分は男だからよく分からないけど、女の子にはこういった視点があるのかな。女の子の方が早熟だっていうし。
「花火」は好きだな。「桔梗」のはかなさもいい。
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高校の教科書に載っていた「ヒヨコの眼」が忘れられなくて購入。
読書から離れてしまった学生時代、また始めようというきっかけになったとても大切な作品です。
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そういえば私も子供の頃は、私はどうして今ここにいて、ここにいる私を私と自覚して生きているんだろう?なんて、当時はそんな言葉では考えなかったけど、そのように言葉になかなかできない疑問を抱きつつ生きてきたなぁ、ということを思い出した。山田詠美さんのこの少女達を主人公にした短編集は、少女が抱く生と死に対する疑問とか恐れ、愛や性についての戸惑いなど、繊細に豊かに書き出していて共感と好感を抱くことができた。少女時代というのはすぐに過ぎ去ってしまうものだけれど、少女のような感性は一生なくしたくない、と思えた。
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一人称だからか、主人公の思考の海を共に渡って往く感覚が心地よい。特に「晩年の子供」は思考回路にシンクロしすぎて、主人公が悟った時は、神の啓示にも思えた。
また「蝉」が印象的で、子供のときにしか味わえない罪の意識や、まったくの被保護者であったときのあの幸福感が甦って切なくなった。
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山田詠美さんの本は、放課後の音符に続きこれで二冊目。
どちらも、大人になってすっかり忘れてた、中学、高校生時代の何となく不安定だった自分を思い出す。子供でもなく、大人でもなく、早く大人になりたくて、でも何だか大人になるのは恐いような、そんな気持ちだった。
最後の「ひよこの眼」は、朝読み終えるには辛かった。夜、寝る前に読み終えるのがおすすめです。
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色んなお話が入ってるんだけど、
ひよこの眼がとてもすき。
高校の時に授業で取り扱ったんだけど、
なんていうか、 切ないし とても綺麗な鮮明な世界観。
澄み切ってる。
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「ひよこの目」の男の子は、周りの子よりも早く大人になってしまった。それはどうしようもない事情のせい。
こどもでいられる時間って本当に貴重なのだなと思いました。
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最初の前半だけの感想。
【晩年の子供】
主人公の私が可愛すぎる。撫でてあげたくなるぐらい、純粋で可愛い。人って変われるって改めて思えた。生死観って、人それぞれあるよね〜。生きるより、死ぬことにフォーカスを当てて生きる。っていう考えは私にはなかった。それも大切なのかもしれない。
【堤防】
堤防好き〜!運命に則ってふわふわ生きる運命論者の主人公。友達の自殺未遂によって、人生観が変わる。友達の京子がいい奴なんだよ〜。家庭を持つ男との間に、子どもを身篭るんだけど、妊娠しちゃったのにタバコ吸っちゃってるところも好きだよ〜!産めない、悲壮感が滲み出てて、いい。
主人公の運命と、人生に対しての考えが素敵だった。運命論も悪くないね笑
【花火】
お姉ちゃんが色気ムンムンでかっこいい。私もこんな大人になれるかな〜。恋に落ちるって本当に人を輝かせるよね。キラキラしてる。結局、否定し続けた妹もお姉ちゃんが言う恋に落ちるの意味が分かったのかもしれないね。大人の女万歳。余裕がある女万歳!!!!
【桔梗】
儚い物語だった。美しいものは儚いね。色と自然がマッチしてて、綺麗だった。美代さんを女として憧れを持つ私。
写し絵を貼る美代さん。最後の足掻きだったのかな。
私がいた証を…って。忘れないでねって。消えないでねって。決して美しい恋じゃないし、美しい終わり方ではないけれど私からしたらそんなの関係なくて。美代さんっていう存在に惚れてしまったんだよね。
桔梗の花言葉:「永遠の愛」「変わらぬ愛」「気品」「誠実」
【海の方の子】
転校が多い私は、周りから嫌われないように必死で、偽善者のような子だった。でもわかる。私も、高校生の時そうだった。それが大人、大人の対応だと思ってた。哲夫みたいにストレートに自分の考えをしっかり持ってて、人に言い切れるのは強いよね。自分自身をしっかり受け入れてる。そりゃ、惹かれるよ。だって、気を遣わなくていいんだもん。泣いてもいいんだもん。最終的には、私は転校しちゃう。けど哲夫とはまた会えそうな気がする。最後も良かった。哲夫は塩味が好きなんだよね。
【迷子】
これまた、いい話。この話を読む前に真梨幸子の本を読んだから、まさか…って思ったけどちゃんと最後、ほっこりできてよかった笑隣のお家のことなんて、知ったこっちゃないけど、知ってしまったら、疑問に感じてしまったら、やっぱり気になるよね。特に思春期の女性なら。
【蝉】
やらしいね。夏も蝉も、父も母も男も女も。
みんな、やらしい。夏は人をおかしくさせるんだよ。蝉の鳴き声に惑わされて隙を与えてしまうんだよ。自分を見つめてしまう隙を。私も、小学校の時、ゴスペルの体験に行ったことがあったけど、夜の町田はすごく嫌いだった。気持ち悪かった。薄着な男と女がねっとりとした夜に捕まっているような。
Posted by ブクログ
「ひよこの眼」が教科書に掲載される国語教育の豊かさ。誰もが子供の頃に経験する「私だけが分かっている、私には事の裏側が分かる」という優越の愚。夏のどうしようもなさ。
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この作家は太宰が好きなのかな?太宰に近い匂いがする、そして題材に合わせて文体等を滑らかに変化させることのできる力量も相当なもの。
それでも本作はあんまり当方の好みじゃないかな、やっぱり山田詠美には若干の無理があろうと「吠えまくっている」テイストを求めてしまう。
そして本作は技巧的な感じが強すぎるかなと。子供本人の視点のようでいて、結局は万能者たる作家の思考・動きが透けて見えるんですよ、この辺りが太宰的で当方あんまり好みじゃないいんですよね。
まぁ無いものねだりです、まさに読者の勝手そのものです。
Posted by ブクログ
ひよこの眼が読みたくて読んだ。何度か読んだことがあったが、何度読んでも最後の一文の余韻がすごい。「私は、こう尋ねてみたい衝動に駆られてしまい、慌てる。もしや、あなたは、死というものを見詰めているのではありませんか、と。」確かに、「うれしい悲鳴をげてくれ」の「顔色」に似ている。死相というものは本当に出ているのか、だとすればとても恐ろしい。でも、死相の存在を恋と勘違いしてしまい、最後の最後に気づいてしまう切なさが、ひよこの眼にはあって、それがとてもよかった。正確な文章は思い出せないが、最後の一文の余韻が印象的な小説でよかったのは、これ以外だとサガンの「悲しみよ、こんにちは」と江國香織の「デューク」だった。江國香織、山田詠美あたりの切ない短編集を書く女流作家の本は時々読みたくなる。サガンのブラームスはお好き(?)もいづれ読みたい。
Posted by ブクログ
子供ながらに死期を悟り、晩年を迎えてしまった、と思い込む少女のお話が表題作の短編集。
何よりもまず、晩年の子供という言葉のチョイスが素晴らしいと思う。まるでMr.Childrenのような、正反対の言葉同士を掛け合わせたことで生まれる不思議な魅力を持った言葉に感じられてならない。
表題作は表題作で好きだけれども、『海の方の子』が1番好きだと思った。これは高校生の頃、授業でもやった記憶がある。その頃からこの主人公・久美子の気持ちがよくわかると思っていた。偽善というものは、自分に酔っている人間がする行いでしかない。見抜ける人には見抜かれているものなんだよ、と、突き付けられる感じが、痛くて、だけども心地のいい作品。誰かにわかって欲しい、見抜いていて欲しいと感じる部分をどすっと突いてくれる秀作だと思っている。