ドストエフスキーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
弱者おじさんと孤児少女のラブレター
ドストエフスキーの入門書として手に取ってみたが大正解だった。デビュー作ということもあってか短めで読みやすく、それでいて彼の世界観や巧みな表現力を楽しめる1冊だと思う。
内容の9割が下級役人マカール(47歳)と孤児少女のワーレンカ(推定18歳)の手紙のやり取りを通して展開される。この2人は現代の言葉で平たくいうと若い女性に貢ぎ困窮していく独身弱者おじさんと、両親を失いメンタルが不安定な孤児少女というキャラクターである。貧困故に共依存的なラブレターでお互いを励まし合う姿は時代や国を越えて普遍的な生々しさがある。
特に印象的だったのは、マカールの自分の気持ちを父性愛と主張する図々しさや自分を大きく見せようとする虚栄心、また物資等の援助は不要と言いながらも上手くそれを利用するワーレンカの(ずる)賢さや浮き沈みの激しさである。
私の読解力や考察力では、いわゆる社会の隅っこにいるような男女にスポットライトを当てた物語に捉えられ、24歳でこんな物語を書いた当時のドストエフスキーは時代や国の背景はあれど「社会の闇」的なものが好きな人物だという印象を受けた。
しかし考察等を読んでいると、マカールの貧しくも善人であろうとしたり自己の尊厳を保とうとする姿勢や、女性が自立しづらい社会の中でも独り懸命に生きるワーレンカの力強さに気付かされ、見方が大きく変わる点もあった。
物語や登場人物を通して描かれたドストエフスキーの価値観や当時のロシアの貧困や閉塞感、また作品理解の為の時代・文化知識の重要性に気付かされるいい1冊だった。 -
Posted by ブクログ
ロシア文学へ初挑戦。
タイトルや出版年から堅苦しい難解な内容を想像したが、苦労する箇所はあったものの全体的に読みやすく、面白い物語だった。
◼︎苦労した箇所
●人名の把握が困難
ただでさえ日本人にとって馴染みのないロシアの人名であるのに、ミドルネームやニックネームが多用されている。
しかもそれが会話文のみならず、「地の文」でも統一されずに用いられているので、1人の登場人物について様々な呼び名が飛び交い、「これ誰だっけ?」が頻発する。
ネットで拾った相関図を手元に置きながら読み進めたが、それでも苦労した。
◼︎良かった点
①全体的な読みやすさ
19世紀後半〜20世紀初頭の海外文学はときどき触れるが、聖書の引用や宗教に基づいた文脈が多く、自分のような無学かつプレーンな人間には理解できない場面が多い、
しかし本書は人間ドラマや心理的な葛藤が多く描かれており、現代文学と大差なく読みやすい。
②価値観や感覚に対する共感
登場人物たちの言葉や考えに共感できるので、没入感がある。
特に妹の婚約者のルージンの妻を選ぶ基準(金に困っている女であれば、金のある俺を生涯愛し、命を掛けて尽くすだろう)や、破談になった際の心情(新居に家具を入れる予定だったのに、違約金をふんだくられた)が、現代の価値観と照らし合わせても違和感ないものと感じた。
③登場人物たちの誠実さと、救済
母や妹をはじめ、友人のラズミーヒンやキーパーソンのソーニャなど、主人公が罪を犯そうとも誠実に向き合い、自分の人生を犠牲にしてでも尽くそうとする姿が印象的だった。
本作を読んで実存主義というものに興味が湧いたので、キルケゴールやサルトルも読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
この小説で一番すごいと感じたことはラスコーリニコフたちが対決を行うシーンの筆圧である。よほど心の中で自分を追い詰めた経験のある人でなければあのような一種の狂乱ともとれる人々のやりとりは描き出せないのではないかと思う。解説でもドストエフスキーの波乱に満ちた生涯が紹介されている。
様々な人々の信念や思想がぶつかり合うシーンは見るものを圧倒させる。もはや読む側までも心理描写を追っていく過程で徐々に酔っているような感覚に陥りさえする。解説にもあった通り、ラスコーリニコフの語る理論はかつて作者が抱いていた理論であり、収監と、深い内省を経て否定された。作者は抱いていた思想の決算をこの小説を通して行った。特に私は、信じることのできる絶対的なもの(それは神か、あるいは思想か)を持たない人の苦悩と苦しみが非常に目立って描かれていたように思える。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ思想的なことがメインなのかなと思ってたけど、もっと純粋に、物語として面白かった
下巻でぐーるぐるうごくやん、展開気になりすぎて一気読みした。
主人公どうなんの?っていうのを軸に周りの人の人生もからまって、そのどれもが目まぐるしい。
最後まで主人公の考え方は変わらなかった、それがほんまの最後の最後に理屈じゃなくて情的な面で動く。たぶん主人公の考え方だけに的を絞ってたら、結局そうおさめるのねって冷めてたかもやけど、登場人物それぞれの意見をたくさんからませて、主人公自身も善意と個人思想の間でずっと揺れ動いていたのがあったから、この終わり方に好感をもてた。