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Posted by ブクログ
脱走の葛藤やカテリーナの激しい愛憎劇を経て、物語は幼いイリューシャの葬儀と「石のそばの挨拶」へ収斂する。イワンが突きつけた神への不信や理性の問いに論理で勝つのではなく、アリョーシャは「良い記憶がいつか人を救う」と語りかけ、死ぬまで泥臭く生き抜く人間の責務を少年たちと誓い合う。傲慢さや狂気、情念に引き裂かれながらも、人は互いに小さな「一本の葱」を差し出し合える。「カラマーゾフ万歳」の叫びは、矛盾に満ちた生を肯定し、他者とともに歩み出す人間への賛歌とも言えるだろう。
書かれることのなかったこの小説の第二部で何が起こるのか、気になってしょうがないが知ることはできない。
亀山郁夫さんの充実した解説もありがたいし、そのほかのカラマーゾフの兄弟解説本にも自然に手が伸びてしまう。
Posted by ブクログ
まず1〜5巻全体の感想を。
1巻はキリスト教のなかでもドストエフスキーのロシア正教論のような立ち位置。
2巻は主人公や物語はあまり動かずに人物紹介。
3巻は2人の死と、とにかく大審問官!そしてスピード感あふれるミーチャの大宴会、餓鬼夢。
4巻は尊厳、恥辱、恋、知性、傲慢、真実など、人間の欲をこれでもかと抉り出す。
5巻の少しのエピローグで、物語が救済される。亀山氏の愛にあふれた解説。
物語についていうと、とにかく時系列が細かい!心の動きの描写>物語の描写、という感じだから、そう思ったのは何時何分?と整理しながら読みたい気持ちを抑えて、ぐんぐんと加速するそのスピードに乗る。
「ロシア的」「カラマーゾフ的」というキーワードが何度も出てくるが、読む前にはとんとピンとこない。読み進めていくうちに意味がひらけてきた。「ロシア的」というのは、ドストエフスキーの考えるロシアについての愛だったのかなと思う。
ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人を、捻くれたキャラクターだとは思わない。冒頭でこの物語はアリョーシャが主人公だと書かれていたが、いわゆる主人公らしさはあまり見受けられなかった。ただどの場面にでも出没しており亀山氏いわく「第二の小説」にて明らかになったはず。それを読みたかったと、本当に思う。
Posted by ブクログ
第1巻前半は登場人物の前史のような話でつまらない。
カラマーゾフ兄弟に絡む二人の女性が登場してそのあとは俄然面白くなる。これほどプロットのある長編とは思わなかった。事前の想像より面白い。
未読の方は、世界屈指の評価を受ける小説がどんなものか、読んでみることをお勧めする。
この古典新訳文庫の5巻目は訳者亀山氏の解説が長い。
小説部分(エピローグ)が60頁、訳者解説等が300頁ほど。
エピローグは4巻に含め、5巻は解説書として販売した方が読者に親切だった。
ちなみに解説中の「ドフトエフスキーの生涯」100頁程は未読。
解題(200頁程)は、批判的に読んだ。
この作品のどこが・なぜ、過去から現在まで世界中で高く評価されているのかをまず簡潔に説明してくれた方がわかりやすい。
Posted by ブクログ
文学史上の最高傑作を読みたくて購読。
長く、難解なため読むのに非常に時間がかかった。
本作のテーマは、神は存在するかという点である。様々な場面で神の存在を信じる者と信じない者との対比が描かれており、その様子を楽しむことができた。
私はカラマーゾフの兄弟以外にも『罪と罰』を読んだことがあるが、当時のロシアの様子、キリスト教的価値観の揺らぎを感じることができ、非常に面白い。
全体的に理解できたとは言い難いが、各巻の後書きの解説を読みながら進めることで、理解が深まった気がする。その解説の中でも、カラマーゾフの兄弟は四楽章仕立ての交響曲的構成になっているという指摘は、フィナーレに向けて盛り上がる様子からまさにその通りだと感じた。
Posted by ブクログ
エピローグで何かあるかと思ったがこれもあっけなかった。
それより全体解説の「ドストエフスキーの生涯」約100ページと「解題」約200ページがわかりやすくてすばらしい。ロシア皇帝権力に対するテロ事件に影響を受けていた様子がよくわかった。単なる芸術家ではなく祖国を何とか良くしたかった。
だから第2の小説は13年後のアリョーシャやコーリャが皇帝暗殺を目指すという説に説得力がある。ドストエフスキーがもう少し長生きして執筆してくれてたら・・・。でも若い頃国家転覆の罪で銃殺刑に処されかけたのが恩赦で助かって第1の小説を書いてくれただけでも良しと考えよう。ドストエフスキー万歳!
Posted by ブクログ
「カラマーゾフの兄弟4」
「カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻」
※4.5の感想です。
これで、亀山郁夫訳のカラマーゾフの兄弟全巻を読み終えた。
長くて苦しくて楽しくて、、今まで読んだどの本にも無い読後感だった。
それはこれが、未完の大作であるからということも大きいのかと思う。
ドストエフスキーは、このエピローグまでを第一の小説とし、その13年後を描く第二の小説を念頭に置いて書いていたが、亡くなってしまったから。
にもかかわらず、この完結性の高さという、他に比べようがない(少なくとも自分が読んだ中では。)「人類の奇跡のような」作品。←訳者、亀山郁夫氏の言葉
まずは、第4巻から。
第4巻は、第10編「少年たち」という話から始まるのだけど、これが個人的に素晴らしく良くて、ドストエフスキーの、反抗的でありながらも、少年のもつ純真さや繊細さ、故の暴力性を台詞回しや出来事によって描き切る才に驚愕した。特に、後々まで重要になるコーリャという少年の描写が本当に良くて、、どことなく、スティーブン・ミルハウザーの「エドウィン・マルハウス」の世界観を思い出させた。(これも傑作中の傑作)
イワンの内面が徐々に浮かび上がる中盤、スメルジャコフとの対話のシーンは不穏で不気味、グロテスクで、なんだか自分自身の内面を暴かれているようでどきどきした。
その流れからのミーチャの裁判。
世の中の残酷な事件や、戦争、虐待。
「父殺し」という作中での直接的表現にそれらをあてはめてみると、更に先ほどのイワンの内面描写が他人事ではなく思えて今度はゾッとするのである。
そしてそれらを見つめる「わたし」の俯瞰的目線、それによって台詞の意味が補完される。
5巻にある訳者による解題での「ポリフォニー(多声)性」という手法の巧みさ!読み手により如何様にも読めるという面白味に加えて、最大の主題「神はあるのか」についてもまた、登場人物の言動や行動や、それに伴う結果のそれぞれの違いによって複雑に絡み合って、決して白か黒かでは分つことができない。
その「複雑さ」がリアルで惹きつけられる要因のひとつなのかもしれない。
またしても「二項対立の脱構築」的思考だなと、、
第5巻エピローグは、僅か63ページ。
これで本編自体は完結する。
最後のアリョーシャのスピーチを読んだとき、本当に自然に、ハラハラ涙が出て、心が動くということは多分これのことなんだなと実感した。
これまで積み上げてきた長い物語世界の、一つの側面であり大きな主題でもある、先述した「神はあるか」についての、人間としての最適解というか、本当は全ての人間がこうありたいと願っていると「思いたい」と思える、素晴らしいものだった。
143年前のロシア古典文学が、今もずっと読み継がれている理由が身に染みてよくわかった。
訳者違いで、また何度も読みたい。
素晴らしい読書体験だった。
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