ドストエフスキーのレビュー一覧

  • カラマーゾフの兄弟〈4〉
    2015年13冊目。

    4部に渡る大傑作の最終巻。
    父殺し事件における長男ドミートリーの罪の有無を巡る裁判がついに行われる。
    その有罪無罪を巡る検事イッポリートと弁護士フェチュコーヴィチの弁論は、これまでの物語の中で現れてきた(あるいは現れてはいなかった)事実の解釈が一気になされ、とても見所のあるク...続きを読む
  • 死の家の記録
    去年も読んでいたか。何度読んでも、いつ読んでも新鮮だ。
    ドストエフスキーにとって、教育を受けたことのない人間のあいだで生活するのは、違う国で暮らすようなものだったろう。初めのうちは、違う星に来ちゃった感があったな。

    読んでいるあいだ、人間のあらゆる可能性を夢見たのがダンテの「神曲」で、眼前に現れた...続きを読む
  • 悪霊(上)
    この作品の中で語られる思想的な側面についての批評は、多くの方々の先行するそれをご覧ください。他のレビュアーの方々の批評はもちろん、これに関する論文等、読み込めば読み込む程の面白さがあると思います。

     私はむしろ、ドストエフスキーという名前、作品の分量、そして「思想的な」難解さという、この作品につい...続きを読む
  • 罪と罰 4巻(完)

    こ、これは。

    噂には聞いていた初マンです。天才奇才もはやこの作者を表現する言葉はないでしょう。
    読中、頭からウジが湧きます。ついでにそのウジが身体中の穴に入り込み内蔵を喰い荒らします。
    ウジは視神経も犯し眼球が飛び出します。汚物は飛び散り、四肢は腐りやがてかつて経験したことのない
    恍惚があなたを蝕みます。
  • カラマーゾフの兄弟〈2〉
     第二部第四篇〜第六篇を収録。カテリーナとグルーシェニカの口論、イワンによる物語詩「大審問官」、ゾシマ長老の回心の物語。アリョーシャを狂言廻し役としながら、「信仰」と「秩序」との関わりという物語の中心的な主題が姿をあらわす巻。
     こうして見ていると、「民衆」をめぐる思考という点で、「昭和10年代」の...続きを読む
  • 悪霊(下)
    非難する術を持たぬ子どもの無意識の威嚇、愚かしくて痛ましいほどの無防備な絶望の姿。それは確かにこの世に数少ない、まるで心臓に釘を刺すように胸を打つものである。それがスタヴローギンの感じた(自分では感知できない)唯一の良心の在り処だったのかもしれない。
  • 罪と罰 下
    『思弁の変わりに生活が登場したのだ。』
    自分の世界から世界の中の自分に移行できるかどうかが鍵だなあと思った。人を否定しているのに人に助けや愛を求めてしまう自分を罵って逃避するのではなく、そうでしか生きられない自分の存在を真摯に見つめてまず認めること。生身の体の伴わない思弁からでなく、自分自身から始め...続きを読む
  • 罪と罰 上
    人の精神状態はあらゆる行動の基盤だ。アリストテレスは情念によってではなく理性によって行動しようと欲する者のみが善を行うことができると言うが、理性が感情をコントロールするのは並大抵のことではない。輪郭をもった感情が理性によって変化していくことはどの程度可能なのだろうか。
  • 悪霊(上)
    「地下室の手記」→「罪と罰」→【悪霊】→「カラマーゾフ」の順で読んでいくと、長さ的にもムリなく、ドストエフスキーの根暗な魅力にハマれると思います(^ω^)
  • やさしい女・白夜
    フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの中編2編です。
    どちらも男性から女性への愛をテーマにしていますが、「愛すること」への苦悩が滲み出た作品になっています。しかし、男性目線から言えば、これはむしろ「面倒な女」「性悪女」に「問題あり」なのではないだろうか。(←わっ、ブーイングは赦してください。...続きを読む
  • 地下室の手記
    新訳ではありますが、久々に手にしてみました。
    凄いですな、これは。
    主人公の倒錯の果ての自意識過剰・自己中心意識には憐れみを覚えると同時に読者(あるいは当方)自身の欺瞞を抉り出されているようで慄きを感じる。
    また、リーザの設定などヨーロッパを知っていればより深くこの本を味わえるんだろうと思いますな。...続きを読む
  • カラマーゾフの兄弟〈1〉
    一年ほど前に購入済みでしたが、長い間放置してたのをやっとまた読み始めました。
    一編・二編が…キツくて…。
    修道院での会合もなんか掴みにくくてそのあたりで投げ出してしまった。
    が、そこを過ぎて三編からはだいぶスイスイと読めるようになってそこからはあっという間に読めました。

    まだこれからどうなるのかは...続きを読む
  • 悪霊 2
    高校からかれこれ5回は読んだ。
    そのうち4回は江川氏の訳
    亀山訳はすこしセンチメンタリズムに走っているような気がする
  • 悪霊 3
    「スタヴローギンの告白」だけは3種類の訳を読んだ。
    しかし、現代はもうスタヴローギンさえ「悪」とはいえない時代。
  • 地下室の手記
    この手記の主人公の惨めな姿に、自らを重ね合わせてしまうのは私だけであろうか。
    この主人公は現代に特有の深刻な人間像の、1つのモデルになっていると思う。高度な知識人、教養人にありがちな、自意識の肥大化、その自意識と目の前の外界がうまく結合せず、自意識の中でもがき苦しむ人々。高等教育が普及した現代にこそ...続きを読む
  • 貧しき人々
    暗い気持ちになりたくない方にはおすすめできません。
    社会の最下層で貧しくひもじい思いをしながらもお互いを手紙で励まし合う物語…とにかく救いがありません。

    カラマーゾフや罪と罰等の長編も良いですが、こちらの処女作もドストエフスキー好きとしては外せません。
  • 死の家の記録
    勤めは生業と割りきって、余暇で学問をしたまえ・・・遠山啓は著作集で説いた。その遠山が東大数学科を中退後、東北大学に再入学するまでに読み漁った西洋文学のなかで、特に印象深いと語ったのが"死の家の記録"。初読の時は何も響かなかったが、思えば生への自分の覚悟が足りなかった。アレから15年経つ。大勢が浴室に...続きを読む
  • 悪霊(下)
    ピョートルとキリーロフが対決し、両者の関係は修復不可能になる。主人公とされるスタヴローギンは最後まで影が薄くて五人組を裏で動かす大悪党として映ってこない。本筋に関わらないのに何故こんなにステパンが登場するのか?いつ果てるともつかない夜の営みのような、モヤモヤ感がいつまでも続いた後の突然の火事や暗殺の...続きを読む
  • 悪霊(上)
    帝政ロシア末期、地下組織が脱退者を殺害したという「ネチャーエフ事件」をモチーフに書かれた。革命勢力を揶揄しているとして、ソ連時代は弾圧された問題の小説。子離れしない親を持つ各々の息子スタヴローギンとピョートル。二組の親子を中心とした人間関係を成す多彩な登場人物たち。やはりキリーロフが好きである。語り...続きを読む
  • 死の家の記録
    作家、ドストエフスキーが体験した『シベリア抑留』を基にして描かれた小説で、規格外の囚人たちに囲まれる作者の分身の孤独さと、「地獄の沙汰も金次第」という身も蓋もない『真実』を突きつけられてしまいました。

    本書は作家、ドストエフスキーが『ペトラシェフスキー事件』に連座し、1850年1月から54年1月ま...続きを読む