ラスコーリニコフ。男。23歳。大学で法律を学んでいたが、学費滞納で除籍処分に。粗末なアパートに住んでいる。貧乏。家賃は滞納。ぼろぼろの服。自分の殻に閉じこもり、世間から孤立。夢うつつで、ぶつぶつ独り言▼ラスコーリニコフは、ある金貸しの婆さんに怒りを覚える。意地悪で狡猾。他人の命を食い物にして。社会に有害。除去しなければならない。そうだ、婆さんを殺して金を奪おう。その金で、人類全体に奉仕する共同事業を始めるんだ。たったひとつのちっぽけな命と引き換えに、何千という命を救えるんだ。婆さんの命なんて社会の秤(はかり)にかけたら、しらみ・ごきぶりの命がいいところだ▼ラスコーリニコフは計画通り、金貸しの婆さん(アリョーナ)を斧で殺害、血の海、金を奪う。婆さんの妹に犯行現場を見られてしまったため、衝動的に妹(リザヴェータ)も殺害。逃亡。しかし、罪の意識に憑りつかれ、心を病んでいく。「老婆を殺したことで、自分の良心や人間性そのものを破壊してしまった。ぼくは老婆を殺したんじゃない、自分を殺したんだ」▼殺人事件の捜査をしている予審判事*ポルフィーリー。35歳。肥満。ラスコーリニコフの「非凡人は法に縛られない」という考えに興味を持ち、ラスコーリニコフに問う。「しかし、凡人が自分は"非凡人"(特別な人間)だと勘違いして、勝手なことをやりだす可能性もあるわけですね」。ラスコーリニコフの論文「犯罪論」の矛盾を突き、ラスコーリニコフを心理的に追い詰める。殺人は理論・理屈で正当化できない▼スヴィドリガイロフ。男。50歳。地主。聾唖(ろうあ)の少女(14歳)を凌辱して自殺に追い込む。妻(マルファ)を病気に見せかけて毒殺したと噂されている。女好き。欲望と快楽。善悪に無関心。罪悪感の麻痺。虚無。「自分を上手にだませる人間が、だれより楽しく生きられる」。ラスコーリニコフの一つの未来像を暗示。子どもたちの教育のために雇った若い女家庭教師(22歳, ドゥーニャ, 美人, ラスコーリニコフの妹)に求愛するも拒否され自殺▼ソーニャ。女。18歳。美人とは言えないが、澄んだ青い瞳。娼婦をして両親と継母側の連れ子たち(3人)を養っている。黄の鑑札(売春婦登録証)。継母(カテリーナ)は肺結核(のちに発狂して死去)。父マルメラードフ(元役人)は飲んだくれで馬車にひかれて死亡。貧困。ラスコーリニコフは母からの仕送りを葬儀代としてソーニャに渡す。ラスコーリニコフはソーニャからキリストが死者を蘇らせる話(ラザロの復活, 新約聖書)を朗読してもらう。死は終わりではなく、信仰によって再び意味を持つ生へ戻ることができる。罪と苦しみを引き受けることで救済が成立する。ラスコーリニコフはソーニャに殺人の罪を告白。警察に自首、シベリアの刑務所で8年の刑期が始まる。収監されてもラスコーリニコフは「自分が間違っていたのは殺したことではなく、やり遂げられなかったことだ」と考えていたが、ソーニャへの愛を通して「観念によって世界を裁こうとする人間」から「生きた生命や苦しみを引き受ける人間」へ生まれ変わる兆しを見せる。フョードル・ドストエフスキーDostoevsky『罪と罰』1866
*舞台サンクトペテルブルク。夏は蒸し暑い。空気が悪い。狭くて暗い部屋が多い
*予審判事。取り調べ、証拠収集、捜査の指揮、起訴に足るかどうかの判断。司法官。警察ではないため、自分で犯人を逮捕・連行することは通常しない。
*ラスコーリニコフ幼少期の夢(犯行前)。酔った群衆が痩せ細った小さな馬を殴り殺そうとしている。彼は必死に止めようとするが届かない。
*スヴィドリガイロフ少女の夢。すやすや眠る無垢な5歳の少女を覗き込むと、少女が急に目を見開き、妖艶な笑みを浮かべる。
*1ルーブル = 100コペイカ
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自分が不幸なとき、他人の不幸をより強く感じる。ドストエフスキー『白夜』1848
人間とは、いかなるものにも馴れる動物である。ドストエフスキー『死の家の記憶』1860
「地下室の男」の日記。理性は人間に賢明なことを教える。論理的思考。計算(二かけるニは四)。固有の肉体と血液を持った人間であることを恥じ、未だかつて存在したことのない普遍的な人間になろうとしている。しかし、人間は愚の骨頂・非合理とも言えることをわざと意識的に望む権利があり、それにより自らの人格や個性を保つことができる▼「地下室の男」は理性を疑うが、一方で信頼・受容・不確実性を引き受けることもできない。例えば他人(娼婦リーザ)の愛をそのまま受け取ることができない。愛を受け入れるのは自分の弱さを認めること、相手への依存は相手に支配されること、だと考えている。フョードル・ドストエフスキー『地下室の手記』1864
*過剰な内省により合理的行動すら放棄
レフ・ニコラエヴィチ・ムイシュキン。男。純粋無垢。善良。無償の奉仕。精神疾患を患い、スイスで療養、退院してロシアに戻る。ある日、ムイシュキンは女ナスターシャに出会う。ナスターシャは過去のトラウマから自己否定が強く、感情に飲み込まれがち。ムイシュキンはなんとかナスターシャを救済しようとする。また一方でムイシュキンは別の女アグラーヤ・エパンチンと顔見知り。アグラーヤは上流階級の娘で、誇り高い。アグラーヤは結婚相手として社会的に望ましい相手。しかし、ムイシュキンはアグラーヤを選ばず、ナスターシャの救済(破滅的な愛)を優先。結局ナスターシャを救済できず(死んでしまい)、アグラーヤ(普通の愛)も失う。ムイシュキンの精神は崩壊し、再びスイスの療養生活に戻る。フョードル・ドストエフスキーDostoevsky『白痴』1868
●ロゴージン。男。裕福な商人。衝動的。激情。情欲。支配欲。ナスターシャにつきまとい、手に入らないとわかるや否や憎悪からナスターシャを殺害。
●イッポリート。男。若い知識人。結核で死期が近い。ニヒリズム。自然は人間を無差別に殺す。ホルバイン「墓の中の死せるキリスト」自然の掟に屈した人間キリストの死体。苦しみに理由はない。救済はない。
地方社会に広がる不安定な空気の中で、革命思想が人々の精神に“憑依”するように浸透していく。知識人層や若者たちは革命思想に酔い、暴力や破壊を正当化し始め、共同体は徐々に崩壊。やがて、革命グループ内部で対立や疑心暗鬼が激化し、メンバーの一人(シャートフ)が裏切り者として殺害される。犯罪は隠蔽できず、組織は崩壊へ向かう。関与した者たちは逮捕されるか自滅。革命思想は人間を救済するどころか、むしろ人間関係・倫理・共同体を破壊する「悪霊」。フョードル・ドストエフスキーDostoevsky『悪霊(あくりょう)/取り憑かれた人々』1871
*人間は他人に騙されるよりも、自分で自分に嘘をつく。他人の嘘よりも自分の嘘を信じている。
◯ニコライ・スタヴローギン。男。上流階級。外見は洗練され、冷静で知的。宗教は信じず、道徳的確信もない。理想や目的がない。喜びや苦悩すら希薄。虚無。冷笑主義。自身の内面の空虚と罪悪感に耐えられず、過去の罪(性的スキャンダルや倫理的逸脱)も含めて破滅的な結末へと向かい、最終的に自死を選びます。
●ピョートル・ヴェルホーヴェンスキー。男。過激な革命思想を持つ若い陰謀家。社会秩序を破壊するために秘密結社を組織し、テロ的手段による革命を企てる。イデオロギーを道具として利用し、人間関係や倫理を完全に軽視する冷徹な扇動者。仲間のシャートフを殺害。
ミーチャ(ドミトリー)。長男。退役軍人。酒と女好き。激情家。直情的。反面、誠実・高潔を求め、シラーを愛読。財産や女(グルーシェニカ)をめぐり父親と対立。父に「殺してやる」。険悪▼イワン。次男。理科大卒。理性。合理主義。無神論。イワン自作の詩「大審問官」(神が存在するなら、なぜ世界は悪に満ちているのか)。※「白痴」のイッポリートに近い▼スメルジャコフ。フョードルと愛人との間にできた子。使用人。てんかんの持病。父フョードルから差別を受ける。イワンから「神が存在しないなら、すべては許される」と唆され、父フョードルを殺害。「自分が父をした」とイワンにだけ告白して自殺▼裁判。長男ドミトリーが父殺害の容疑をかけられる。父を殺すと公言していた、事件当夜に現場付近にいた、大金を必要としていた、しかも激情家。イワンは「自分がスメルジャコフを唆して間接的に殺させた」と発言するが、イワンは兄を助けようと錯乱しているだけだと受けとられる。長男ドミトリーは有罪判決を受け、シベリア流刑を宣告される。ドミトリーの恋人グルーシェニカや弟アリョーシャは脱走計画を立てる▼アリョーシャ。三男。純真無垢。温和。信仰。修道士。※「白痴」のムイシュキンに近い。少年たちとの交流を通じて、人間同士の愛や信仰、赦しへの可能性を語る。フョードル・ドストエフスキーDostoevsky『カラマーゾフの兄弟』1880
※人間は自分の姿や心に似せて悪魔を創り出した▼良心の自由ほど魅惑的で苦しいものはない▼民衆の中には忍耐強い無言の悲しみがある。
他人のために自分を忘れること。そうすれば他人はあなたを思い出してくれる▼金が何よりも卑しく厭(いと)わしいのは、それが人間に才能まで与えるからである。ドストエフスキー
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フレスタコフ。貧しい小役人。見栄っ張り。ある田舎町で(行政の腐敗を調査する)検察官になりすます。腐敗しきっていた田舎町の市長と役人たちは、悪業を見のがしてもらおうと、「検察官」に扮したフレスタコフをちやほや。フレスタコフは賄賂をたんまり貰って、姿をくらます。その後、本物の検察官がやってきたが、時すでに遅し。市長と役人たちは驚きのあまり、黙ったまま立ち尽くす。ニコライ・ゴーゴリGogol『検察官』1836
※自分の面が曲がっているのに、鏡を責めて何になろう。
※君たちは何を笑っているのだ、自分で自分を笑い飛ばしているのに気づかないのか。
コワリョフ。下級公務員。ある朝、起きたら自分の鼻がなくなっている。鼻を探していると、教会に入っていく鼻を見つけ、声をかけるが人違いだと言われる。しばらくして、鼻は見つかり、元通り顔につく。ニコライ・ゴーゴリGogol『鼻』1836
美しい女のもつ精神的欠陥は、嫌悪の情をもよおさせるが、魅力的である。ニコライ・ゴーゴリGogol『ネフスキイ大通』1842
チチコフ。詐欺師。ロシアでは戸籍調査は数年に一度しかないため、ある年に死んだ農奴がいても、次の調査までは生きていると見なされ、地主は人頭税を支払わなければならない。そこで詐欺師チチコフは金儲けを考える。まず地主たちが抱えている「死んだ農奴たち」を書類上、買い集める。次に安い土地を買って、そこに「死んだ農奴たち」を「移住」させる。つまり、本当は誰もいない荒れ地だが、書類上は農奴たちが作物を生産する価値のある土地に仕立てあげる。そして価値のない土地を担保に国から大金を借りる。しかし、チチコフの計画はバレてしまい、逮捕される。ニコライ・ゴーゴリGogol『死せる魂』1842 ※未完、プーシキンの弟子
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中部ロシアの農民たちの生活。イワン・トゥルゲーネフ『猟人日記』1847
ルージン。男。理想主義者。真理・自由・美、崇高な理想を語る。地主の娘ナターリヤと恋仲になる。が、モスクワからフランスに渡り、二月革命をパリの労働者と共に戦い、バリケードの上で死ぬ。イワン・トゥルゲーネフ『ルージン』1856
女の愛を恐れよ。この幸福を、この毒を。イワン・トゥルゲーネフ『初恋』1860
エヴゲーニイ・バザーロフ。医師を目指す青年。何者も尊敬しない。何事も批判的見地から見る。いかなる権威の前にも頭を下げない。いかなる原理も、そのまま信条として受け入れない。目下、否定がもとっとも有益だ。科学こそ万能、神を信じていない。科学者は詩人よりも20倍役に立つ。人間はいかなる道徳的・社会的制約からも自由だと考える。ニヒリスト。神・伝統を神聖なものとして崇めている親世代を軽蔑している。ある日、バザーロフはある未亡人の美しさと知性に強く惹きつけられ、「恋愛なんぞ虚しい」というニヒリストとしての考えが揺らぐ。バザーロフは病床に臥し、両親への愛情を吐露し、息を引き取る。イワン・トゥルゲーネフTurgenev『父と子』1862
●パーヴェル。バザーロフの叔父。貴族趣味。バザーロフと意見が衝突。
〇ニコライ。バザーロフの父親。
〇アルカージイ。バザーロフの友人。パーヴェルの息子。
〇オジンツォーワ。未亡人。美人。
※青春は過ぎてしまったが、老年はまだ訪れていない。希望に似た哀惜と哀惜に似た希望の時期。人生のうす暗い黄昏。
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戦争は醜悪である。もてあそんではいけない▼純朴と善良と正義こそ偉大▼この無限の空以外はみんな偽りだ▼ナポレオン戦争。ロシア貴族の没落。ロシア農民の力強く生きる姿。レフ・トルストイTolstoy『戦争と平和』1869
※登場人物559人。
アンナ・カレーニナ。美人。教養。夫(カレーニン)は冴えない俗物。夫婦関係は冷めている。ある日、青年将校の男ヴロンスキーと不倫、妊娠、夫と子供を捨て、外国へ駆け落ちする。しかし、愛人の男との関係は冷えていく。夫と子供を捨ててまで、本当の愛に生きるはずだったのに。アンナは鉄道に身を投げて自殺する▼コンスタンチン・リョーヴィン。男。地主。農村で畑仕事の毎日。働いて、家族を持つ。ささやかな幸福。愛に溺れることなく、社会規範とも折り合う。シンプルな生活と道徳が大切だと「一応の納得」をして生きている。レフ・トルストイTolstoy『アンナ・カレーニナ』1877
※幸福な家庭は似通っているが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸である。
※道を踏み誤った人間は、人間ではなく、神が罰する。神「復讐するは我にあり」
深く愛することのできる人だけが、深い悲しみを体験することができる。トルストイ『幼年時代』
自己愛は死の初めであり、神と万人への愛は生の初めである。トルストイ『読書の輪』
すべての人は世界を変えたいと思っているが、自分を変えようとは思っていない▼恋はロウソクの火▼逆境が人格をつくる。トルストイ
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オブローモフ。32歳。仕事もやめて、怠惰な引きこもり生活を送る。オブローモフを心配した親友シュトルツがオブローモフを家から連れ出し、美しい娘オリガを紹介。オブローモフはオリガへの恋が芽生えるが、煩わしく感じるようになり、元の生活に戻る。その後、オブローモフは心臓病で息を引き取る。イワン・アレクサンドロヴィチ・ゴンチャロフ 『オブローモフの夢』1849
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ロシア農奴解放令(1861)。貴族は没落し、農奴たちが土地を所有するように▼ラネーフカヤ夫人。没落貴族。情緒不安定。カネがないのに贅沢な暮らしを続けている。桜の木で有名な夫人の領地は借金の担保になっている。農奴の子ロパーヒンは「領地を別荘地として賃貸に出せば収入が得られる」と提案するが、夫人は拒否。桜の木がある領地は競売にかけられ、落札される。落札したのは農奴の子ロパーヒンだった。それを聞いた夫人はショックで泣き崩れる。アントン・チェーホフChekhov『桜の園(その)』1903
〇ロパーヒン。商人として成功した資産家。農奴の息子。父はかつてラネーフスカヤ家で農奴をしていた。ラネーフスカヤ夫人を敬愛。
〇グリーシャ。夫人の息子。幼い頃、川で溺死。
〇アーニャ。夫人の娘。17歳。
〇トロフィーモフ。大学生。貴族は過去の栄華は断ち切って、勤労の中に生きるべきと説く。
●ガーエフ。夫人の兄。、