ドストエフスキーのレビュー一覧

  • 罪と罰 下

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    そして長い物語の最後にあるエピローグは格別に美しい。罪と罰はひとえに救済の物語なんだと思う。社会的圧力に苦しむ人、他人の欲望に苦しむ人、そして罪悪感や自らの自意識に苦しむ人。そうした人たちに対してドストエフスキーは暖かい眼差しを込めて、人間であることを最大限肯定しようとする。「彼はただ感じただけだった。思弁の代わりに生活が登場したのだった。」ここには許された者のみが持ちうる開放感が込められている。そう、殺人も、淫蕩も、詐欺も自殺も、アル中も狂人も見栄も強欲も金貸しも、ここでは全てが救われているのだから。

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    2013年01月14日
  • やさしい女・白夜

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    『やさしい女』は41歳の中年男の話。『白夜』は26歳の青年の話。オジサンと若者だけどどっちも理屈っぽくてプライドが高い男の考えが綴られる。もう読んでいて「バカ!バカ!バカ!」と泣きたくなるくらい。でもそんな不器用な人間の話だからこそ、今読んでも面白いのかもしれない。

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    2012年11月25日
  • 悪霊(上)

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    「ニコライ・スタヴローギンは事実、部屋の中にはいっていた。彼はごく静かに部屋にはいってくると、一瞬戸口で立ちどまり、もの静かな眼差しで一座をみわたした。」

    やっと出てきたか、と言いたいけど、スタヴローギンの登場で物語は動き出す。

    ヒントは二つある。

    (ヒントその1)
    ミハイル・バフチンはドストエフスキー小説の特徴を、

    「自らの意思と声を持つ、自立的な存在としての登場人物を設定し、

    相違なる思想同士の、事件に満ちたポリフォニー(多声楽)のような対話が実現している。

    そのジャンルは民衆的な笑いの文芸、カーニバルにたどりつく。」と述べている。

    (ヒントその2)
    ドストエフスキーは世界中

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    2012年10月23日
  • 悪霊(下)

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    ドストエフスキーのなかでも、なぜだか今まで読むことをためらっていた一つ。(タイトルがタイトルだからでしょうか)

    しかしながら、そうしておいて良かったように思える。

    高校生ぐらいの自分が、スタブローギンに出会ってしまっていたら、完全にハマってしまっていたでしょうよ、恐ろしいことに。

    非常に魅力的な作品。

    10年ぐらいしたら、もう一度読もうと思って、傍線をいくつも引いておいた。。。

    そういえば、大江健三郎氏の作品で、この悪霊が根柢のトーンとなっているものがありますので、ご興味ある方はどうぞ。

    キリーロフがシャートフに”永久調和の訪れ”を告白するシーンは、大江氏の『洪水は我が魂に及び』の

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    2012年09月22日
  • 賭博者

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    賭博狂の心理がリアルに描かれていて、非常にスリリング、かつ恐怖感を抱かせる作品だった。
    賭博で大勝をする興奮、負けを取り返すという心理、それらを醒めた眼で眺める第三者的な視点と、自分自身がそこにはまり込む快楽の全てが、圧倒的なリアリティを持って描写されている。そのあまりのリアルさに、この作品に描かれている狂気が決して人事ではないと感じさせ、善良な人間も、賢い人間も、老いも若きも男も女も、簡単に狂気へと転落させる賭博行為への恐怖感が強烈に後味を残す。

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    2012年09月15日
  • 虐げられた人びと

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    ネタバレ

    10点つけたい。

    読んでる間も読み終わった後もずっと胸が痛い。
    ちょっとすごすぎてまだ感想が出てきません。
    エレーナ!!;;

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    2012年08月19日
  • 悪霊(下)

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    ネタバレ

    こんなに好きな作品にめぐりあったことに感謝してます・・・。
    人によってはこれ以上ないというほどハマれる作品ではないでしょうか。
    ドストエフスキー独特の思想がこれでもかというほど盛り込まれてて、謎もあふれかえるほど出てきます。
    主人公のスタヴローギンのように考えて考えて苦しみ続けたい人にオススメ!

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    2012年06月13日
  • 悪霊 3

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    新潮文庫で以前読んでから10年ぶりくらいの再読。

    観念にとりつかれた人々の織りなす陰惨な悲劇。愛さえも、より大きな悲劇を引き起こすだけなんだけど、それでも観念と同時に愛にも取り付かれていた人たちの悲劇にはまだ救われる気持ちがする。
    愛と縁がない登場人物たちの殺伐さたるや!

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    2012年06月02日
  • 未成年(上)

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    5大長編はどれも寝食忘れて読み耽ってしまうおもしろさです。
    この未成年は長編のなかではマイナーなイメージがある。
    読んだ当時は古本屋にしかなかったからこのリニューアルは嬉しい。
    主人公の回送シーンなどは涙が止まりませんでした。

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    2012年05月27日
  • 罪と罰 1巻

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    ドストエフスキーの『罪と罰』を題材として、
    とんでもないお話が展開されている。
    ものすごいとしか言いようがない。
    まったく興奮できないエロ本ともいうことができよう。(ババァだけに)

    一方で謎めいた全裸のかわいらしい女性の登場。
    ババァとその女性の対比というのでしょうか、そういうのも何かしら関係してるのかなぁと勝手に解釈。(コラム「超読解」的に)

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    2012年05月18日
  • 罪と罰 3

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    ネタバレ

    辛いときには幸せな物語を読むより、同じように辛い物語を読む方が救われたりするので一気に読んでみました
    ラスコーリニコフの考えは完全に理解するのは難しいけど、似たように苦しんでる立場だったりするとポルフィーリーに追い詰められる辛さや、大切なのに疎ましく思ってしまう家族や友達への感情は痛いほど理解できた

    それにしても彼はあれで救われるのでしょうか?
    でもどんな状況になっても少しは希望は見えるものなんだなぁと思った


    最後の一行は私も気に入ってます

    (2023/10/25:再読)

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    2023年10月25日
  • 死の家の記録

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    法を犯して罪を背負った人々に、足枷をはめさせ労役を科し、鞭の浴びせて自由を奪う。
    そんな死の家に押し込まれた囚人たちの生活模様を描いた物語。
    壁の中での生活は、本当に人を更正させることができるのか。
    考えさせられる小説です。


    この作品は、ドストエフスキーの実体験をもとにリアリズムの手法によって書かれていて、19世紀ロシアの監獄のスケッチとしての価値もあり、また、優れた観察眼による緻密な人間描写は、文学としての完成度を最高のものにしています。

    「カラマーゾフの兄弟」を始めとする、ドストエフスキーの後年の大作たちの原点とも言える、大変素晴らしい作品でした。

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    2012年02月03日
  • 罪と罰 中

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    ネタバレ

    上巻の冗長さが嘘のように、中巻以降は山場につぐ山場である。息もつかせぬ展開と言ってもあながち過言ではなく、いよいよ作者の本領発揮という感じだ。

    中巻の見どころは、主人公ラスコーリニコフと予審判事ポルフィーリイの2度にわたる対決と、ラスコーリニコフとソーニャの密会である。中でも、ラスコーリニコフとポルフィーリイの初回の対決は際立ってエキサイティングだ。推理小説ばりの心理戦が展開されるだけなく、ここで初めて主人公の思想の全容が明らかになるからだ。上巻でちらりと示されたテーマが、さらに過激な形をとって再び読者に提示される。

    すなわち、人間は「凡人」と「非凡人」に大別される。凡人は従来の思想の枠組

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    2022年09月06日
  • 悪霊 3

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    難解だったが、2巻の途中から引き込まれてあっという間に読めた。先に読んだマンガも面白かったが、全体の描写はされていなく、原作は非常に深い。歴史的背景などを勉強すればもっと面白いだろう。

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    2012年01月29日
  • 死の家の記録

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    ドストエフスキーの経歴を考えれば、この内容は生の体験から得た情報がたくさん入っているようでとても真剣に読んでしまいました・・・
    もちろん、書いてある事の心情だったり、そういう描写もとても良かったのですが、シベリア流刑を受けていた囚人たちの生活、行動、そういう事が詳細に描写されていて想像しながら読むのがとても面白かったです。

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    2012年01月02日
  • 悪霊 3

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    待望の3巻を読む。1→2→3と進むにつれて深みが増す。堰が切れたように、死んでいく人々の描写が圧巻で、一気に読めた。ロシアの当時の世情に疎く、何が起こっているのか詳細はわからないのに、圧倒的に押し込まれる気持になった。

    今年読んだ中でベストの本。解説などは、これから読むけれど素直にそう思う。

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    2011年12月19日
  • 白夜

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    ドストエフスキーの初期の短編作品。夢想家の主人公がやはり夢見る娘と偶然知り合い、逢瀬を繰り返すうちに2人が、というお話。『カラマーゾフ...』や『罪と罰』とは一味違った雰囲気を持つ作品ですが、主人公のモノローグの部分など、大作に通じる片鱗が見受けられます。

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    2011年11月14日
  • 罪と罰 中

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    話も少しややこしいしロージャの目くるめく心境の変化に混乱しそうになるけど、何が一番取っ付きにくくしてるかっていうとロシア人の名前長い。いろんな形で呼ばれててわかるまでややこしい。ロジオン・ヌマーヌイチ・ラスコーリニコフ(ロージャ)。ながい!

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    2011年11月04日
  • 悪霊 2

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    少し前に1巻の文句を言ったのを反省したくなるぐらい面白い。

    心理的な怖さが持続しつつ加速、一気に読んでしまった。2巻だけでも傑作。
    こうなると、あれ程読みにくくて、投げ出しそうになった1巻すら読み返してしまった。

    さっき3巻を買いに行ったらまだ出てなくて、衝撃を受けた。
    3巻が待ち遠しい。

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    2011年10月27日
  • 罪と罰 1巻

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    表紙の出オチ感が芸術的である。まあ、芸術など、画太郎先生の前では下僕のような存在であるが。

    先生はついに漫画だけでなく、文学作品までも再構築しはじめたようだ。まったく不思議なことではない。自然な流れである。むしろ、なぜ今までやっていなかったのかと盲点をつかれた思いだ。

    うんこ、トラック、斧、という、文学では欠かすことの出来ない神器を使って人間のすべてを描き、断罪している。

    ドストエフスキー本人がこの作品を読めないのが非常に残念ではあるが、読まずとも、こう言うであろうことは明白である。

    「まん中もぬってーッ!!!」

    次巻でエビゾーはババァに軟膏を塗ることができるのだろうか。

    おそらく

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    2011年10月09日