ドストエフスキーのレビュー一覧

  • 未成年(上)

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    ドストエフスキーが描くロシアの混沌は、まだまだ未熟な「未成年」アルカージイを木っ端微塵に打ち砕くほど複雑怪奇なものでした。 ドストエフスキーのかつての理想郷「ヨーロッパ」の没落と、ロシアの混沌。 そんな八方ふさがりの悲惨な状況の中で何が人々を救いうるのか。それをドストエフスキーはこの作品で読者に問いかけます。 そしてこの作品で提出された問題はその後ますます熟成し最後の大作『カラマーゾフの兄弟』へと組み込まれていきます。 『未成年』は他の作品と比べると影が薄い作品となってしまっていますが、思想的な意味では非常に重要なものを含んだ作品です。

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    2024年08月14日
  • 悪霊(上)

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    この作品の持つ魔術的な力は計り知れません。 あくが強い人物たちが一つの舞台でぶつかり合い、自らの存在を主張し合います。 まさに「悪霊」に憑りつかれたごとく、悪役たちは巧妙にそして残酷に社会を混乱に陥れていきます。その過程があまりにリアルで、読んでいてお腹の辺りがグラグラ煮え立ってくるような感情が私の中に生まれてくるほどでした。 やがてそれは生きるか死ぬかの究極の思想対決へと進んで行き、一体これからどうなるのか、彼らの心の中で何が起こっているのかと一時も目が離せぬ展開となっていきます。 これは恐るべき作品です

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    2024年08月14日
  • 虐げられた人びと

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    私個人の感想ですがこの作品は一言で言えば、「歯がゆい!」に尽きます。 典型的な「いい人」、主人公のワーニャが幼馴染で才色兼備のナターシャに恋をしています。しかしナターシャはあろうことか典型的なダメ男に恋をし、家族まで捨てて破滅にまっしぐら。 ワーニャはそんなナターシャを見捨てられず、あれやこれやと世話をしたり、恋敵との取り持ちまでさせられる始末。 「いい人」の悲哀がこれでもかと描かれています。

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    2024年08月14日
  • 死の家の記録

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    この作品は心理探究の怪物であるドストエフスキーが、シベリアの監獄という極限状況の中、常人ならざる囚人たちと共に生活し、間近で彼らを観察した手記なのですから面白くないわけがありません。あのトルストイやツルゲーネフが絶賛するように、今作の情景描写はまるで映画を見ているかのようにリアルに、そして臨場感たっぷりで描かれています。
    この小説はドストエフスキー作品の中で『罪と罰』と並んでその入り口としておすすめな作品です。

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    2024年08月13日
  • 死の家の記録

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    新潮文庫の表紙が暗ぼったくて、また不穏なタイトルと相まって敬遠していましたが、全くの誤解。ドストエフスキーの4年間の投獄経験に基づく本作は、大変面白くて興味深い内容でした。

    本作は、ロシア生まれの地主貴族である主人公が、妻殺しの第二種流刑懲役囚として10年間の獄中生活を送り、出獄するまでの囚人たちとの共同生活を通して、驚きや苦痛の断片を書き連ねたルポルタージュです。

    当時のロシアの監獄では、足枷こそはめられていますが、大っぴらではないにしろ酒が手に入ったり、タバコが吸えてたりするのが意外でした。それらは、お金がものをいうのですが、やはり手先が器用な人は、どこに身を置いても強いですね。しかし

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    2024年08月11日
  • 罪と罰 上

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    罪を犯した後の生々しい感覚や自己嫌悪の感情が緊迫的に描かれていてすごい。ページを捲る手がどうにも止まらない。人物たちの話が現代にも繋がる感覚があるため、読んでいる途中一旦自分でそのことについて考えを巡らせる時間が発生する。これが最高すぎる。読書であり何かを考える時間。

    ラズミーヒンいい奴。ラスコーリニコフ、苦手な性格と思いきやなんだかんだおもしろくまさしく人間という感じ。酔っ払った女性が男にあとをつけられていて助けようとするも突然「どうにでもなっちまえ」的な感じで急に無関心になるところが何故か印象に残った、どういう思考回路、、?
    ラスコーリニコフってすごいハムレットじゃんと思った。

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    2024年07月15日
  • 地下室の手記

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    主人公は、なんとまあ面倒くさい人でしょう。リアルでは関わり合いたくない人ですが、意外と共感できる人も多いのではと思ったり。

    第一部『地下室』は、とち狂った男の黒歴史を語る妄言の数々がひたすら書かれていますが、人間の内面に潜む自意識をひたすら省みる内容には、意外にも知見に満ちた珠玉の言葉(一部笑いを誘う言葉)に溢れていて読み応えがあります。なんとまあ、人間の内面の愚かしいこと…。

    第二部『ぼた雪に寄せて』は、第一部で語っていた自意識について、それを実際に言葉や行動として表象されたとき、自らはどのような結末を迎えるのかが書かれています。つまり、一見退屈とも難しくも感じられる第一部を読み切ると、

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    2024年07月14日
  • カラマーゾフの兄弟(下)

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    人類史上最高文学と称される「カラマーゾフの兄弟」

    高野史緒さんの「カラマーゾフの妹」を先日読み、原作であるこちらももう一度読もうと思い飛ばしながら読んでいった。

    実際にしっかりと読破したのは時間を持て余していた3年位前のコロナ禍の時。俗に言われる「カラマーゾフを読んだ側の人間」に40歳を越えてやっとなれた。
    中学生の時、20才頃、2度挫折した経験がある。読みにくいし言葉が分かりにくく物語は長いし正直つまらなかった。そもそもカトリック、プロテスタント、ロシア正教会等のキリスト教の知識が多少ないとあまり理解できない作品で、知識が未熟だった時分では到底読んだ側にはいけなかった。

    この作品が人類

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    2024年07月18日
  • カラマーゾフの兄弟〈4〉

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    圧巻。さすがに面白すぎる。イワンの悪夢、裁判の一連の応酬、、本当にここまで読んできてよかったとそう思わせてくれる面白さ。
    フェチュコーヴィチの父親論、大変痺れました。

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    2024年06月09日
  • カラマーゾフの兄弟〈5〉エピローグ別巻

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    エピローグで何かあるかと思ったがこれもあっけなかった。 
    それより全体解説の「ドストエフスキーの生涯」約100ページと「解題」約200ページがわかりやすくてすばらしい。ロシア皇帝権力に対するテロ事件に影響を受けていた様子がよくわかった。単なる芸術家ではなく祖国を何とか良くしたかった。 
    だから第2の小説は13年後のアリョーシャやコーリャが皇帝暗殺を目指すという説に説得力がある。ドストエフスキーがもう少し長生きして執筆してくれてたら・・・。でも若い頃国家転覆の罪で銃殺刑に処されかけたのが恩赦で助かって第1の小説を書いてくれただけでも良しと考えよう。ドストエフスキー万歳!

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    2024年05月28日
  • カラマーゾフの兄弟〈4〉

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    第4巻はコーリャ少年のキャラクターがよい。しかしコーリャ登場も唐突。これは確実に第2の小説につながる。鉄道や爆薬のエピソードは何気なく読んでしまったが、将来ロシア皇帝を暗殺することを暗示しているという解説はなるほど。
    裁判は最後に何かどんでん返しがあるかと思ったがあっけなかった。 
    全体を通して似たような構造の別の話が折り重なっていて重層的という表現がぴったりの小説。第1の小説だけでもいろんな読み方ができる。この懐の深さは確かに世界最高レベル。それでもストーリーはやや中途半端かも。より重要な第2の小説があると言われるとなおさら。

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    2024年05月28日
  • カラマーゾフの兄弟〈3〉

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    第3巻はゾシマ長老の亡骸から腐臭がすると皆が「実は聖人じゃなかったんだ」「甘いものをかまわず口にしてたもんな」「そもそも苦行僧がサクランボのジャムでお茶楽しんでていいのか?」(p26)ってなってて19世紀末でもこんな迷信まみれなのがおもしろい。と思ってたら解説で腐臭や甘いものは小説上のモチーフとありなるほど。のん気な読みをしていた。 
    ミーチャが大騒ぎするシーンは描き方はうまいのだが、薄い内容をペラペラしゃべる長セリフには辟易とした。よく見るとミーチャ以外もセリフが無駄に長くてロシア人って皆こんな感じなんだろうか。主人公のアリョーシャだけは口数が少なくて別格。 
    第3巻から誰が殺人犯かの謎解き

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    2024年05月28日
  • カラマーゾフの兄弟〈2〉

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    第2巻の有名な大審問官のくだりは一読しただけではよく解らず何度も読み返した。キリストの教えでは大多数の弱い庶民は救えないのでローマカトリックは悪魔と手を結んだと大審問官がキリストに語る。よくこんな不信心な発想できるな。でも仏教の大乗/小乗の分裂(人々の救済を目指す/自身の解脱を目指す)と似ているとも思った。イワンの主張は大審問官の1つ前の子ども殺しのくだりと併せてごもっとも。科学がさらに発達した現代の我々にとってはイワンの考え方が近く感じる。解説に出ていたライプニッツの楽天主義を批判するヴォルテールの小説カンディードもいつか読んでみたい。

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    2024年05月28日
  • カラマーゾフの兄弟〈1〉

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    最高に面白い小説と紹介されていたので読んでみた。難解なので面白いとはちょっと違うが、世界最高レベルの小説ということはよくわかった。それをわからせてくれたのが第5巻にある訳者の亀山郁夫という人による全体解説。正直解説無しでは本書の良さはわからなかったかも。全部で5巻と長いが、各巻末にあるこれまた訳者による「読書ガイド」という解説もわかりやすく、置いてけぼりにならず伴走されている感じで最後まで読めた。一般に文庫本の巻末解説はしょーもないのが多いが、出版社は反省して本書のような優れた解説を付けるようにして頂きたい。値段が高くなってもいいから。とにかくカラマーゾフの兄弟は読んでよかった。そして光文社文

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    2024年05月28日
  • 地下室の手記

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    ネタバレ

    ネガティブな人はきっと好きだと思う
    でも、社会不適合者じゃない大多数の人にこそ読んで欲しい

    安っぽい幸福と高められた苦悩と、どっちがいいか?
    ぼくらは死産児だ
    のところ、僕もずっとそんなことを考えていたんだ!って泣きそうになった。
    ずっと考えてた人に言えないモヤモヤを言い当ててくれたみたいな清々しい気持ち
    ありがとう

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    2024年05月04日
  • 虐げられた人びと

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    何が好きかって、彼の作品のキャラは作者に踊らされていない
    それぞれの人の欲望や信念が丁寧に描かれている

    天才なんだなと思う。
    何故、女性の機微をここまで理解出来るのだろうか
    彼は時々、熱病そのものだったのではないかと勘繰ってしまう

    そしてドストエフスキーの作品における
    純粋無垢が故の悪漢
    中々に気持ちが悪い
    こういった気持ちの悪い人間が幾重にも重なるのだが
    作品にメッセージがあるなら、幸せの所在は
    狂ったかのような熱病や情動に動かされるのではなく
    今ある幸せを軽視する事なく見つめ直せと
    喝破されているようだ

    個人的に好きなのが伯爵と主人公が対峙して露悪的な心情を吐露するシーン

    伯爵が金

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    2024年04月27日
  • 地下室の手記

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    主人公に、まるで未来の自分が書いたような強い共感を感じた。肥大化したプライドで他者を見下し、同時に自己が矮小で卑劣な存在だと認識していながらも、それを変える為に前向きな、つまり現実と対峙することから逃げ続ける。高すぎる理想で、他人を嘲笑するが、それは自分自身にも適用される。

    自己嫌悪、自意識過剰、低い肯定感と高い自尊心、全て共感できた。
    主人公が語る事柄も、経験があることばかりだった。物語自体、何も解決せず、循環する陰鬱を記して終わる。救いはないし、読み終わった後に何が変わるでもないが、100数十年前に自分と似たような人間がいて、それを描いた小説が古典的名作として世界中で受け入れられている事

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    2024年04月17日
  • 罪と罰 上

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    初罪と罰は亀山訳だったが、こっちの江川訳の方がなんかしっくりくる感じがある。
    マルメラードフのどうしようもなさ、でも憎めなさ。
    ラズミーヒンいいやつすぎ。

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    2024年04月14日
  • カラマーゾフの兄弟〈4〉

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    ネタバレ

    ミステリーの行方にドキドキしてるってのに、最初はコーリャとかいう自称社会主義者の14歳の少年とアリョーシャとのなんだかこれいる?っていうエピソードから始まります。が、これがとても良いのです。アリョーシャの修道院を出ても変わらぬ態度を堪能出来ましたから。

    そしてイワンとスメちゃんのやりとり。これこそ真実でしょ?でも、イワンも悲しいかなもう1人の自分という悪魔に苦しめられてる…

    そういうのぜーんぶ持って第12編の『誤審』へ。ここはまるでオリエント急行の殺人の後半のように事件の真相が暴かれていくかとおもいきや、ミーチャの態度がおもろすぎて…自滅しかねませんよ!
    さらに検事と敏腕弁護士との腕の

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    2024年03月29日
  • カラマーゾフの兄弟〈3〉

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    ネタバレ

    いろんな意味で衝撃でしたしミステリー小説の始まりみたいになっちゃってて、おや?私は世界的に有名な文学作品読んでるはずでは?と戸惑いました。

    始まりは不穏としか…これまで数々の奇跡が語られてきたゾシマ長老の棺から、腐臭が漏れだし、あっという間に噂になってしまう。反長老派や不信心者たちからは嘲笑われることに…

    アリョーシャが打ちひしがれながらも長老の言葉通り修道院をでてゆくと、神学生仲間の嫌味なヤツ、ラキーチンによってグルーシェニカの元へ。

    ここで、村上主春樹さんの『街とその不確かな壁』に登場するベッドの上に残された葱を2本を思い出さずにはいられないエピソード、第3部第7編の3章に「一本

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    2024年03月29日