あらすじ
ドタバタ劇は一気に加速する。〈ぼく〉アルカージーは、臨終の床にある戸籍上の父マカールと出会い、その数奇な放浪譚と信仰に清冽な衝撃を受け「復活」に向かう。謎の手紙をめぐる陰謀、実父ヴェルシーロフとの熱く長い会話。もつれる愛の行方、そして驚愕の結末……。作者は、無秩序、混沌の泥沼に足をとられた登場人物たちの「復活」の道のりを丹念に描きこんだ。最晩年の作者が到達した世界観が顔をのぞかせている。
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Posted by ブクログ
終わってみれば何のことはないのだが、語り手アルカージーだけが事態に気づいていないパターンが繰り返され、読者としても振り回されるかたちになった。
父と子が揃って幼稚で、醜態を演じていて呆れ返ってしまった。特に感動屋で相手の嘘を見抜けないアルカージーにはヤキモキさせられる。どこに行っても子ども扱いされていて、まさにその通りの若者なのだ。今後働き口を探したら探したで何かよからぬことに巻き込まれそうだし、大学に行ったら行ったで詐欺に遭いそうで正直不安だ。
マカールの話を聞いているときだけは少なからず幸せを感じた。しかし彼の話はそれを聞いている瞬間は感動を呼び起こすが、忙しない日常のなかに埋もれていくものなのかもしれない。そのためには語り続けなければならず、アルカージーやその家族に必要なのはマカールだったのではないかと思う。
それにしても大変な物語だった。読みにくいことはなかったが、読み切るにはそれなりに根気がいる。アルカージーに付き合う根気が。
Posted by ブクログ
草稿段階でのタイトルが「混沌」だったというのが納得できるような大ドタバタ劇。
娘が父親を禁治産者にしようとする企みを書いた手紙の行方が一貫して重要なのだが、その肝の手紙をコートに縫い付けた後、ちっとも現物確認をしない主人公が、案の定悪友に騙されすり替えに遭う。
父親が女中に手を出し主人公を産ませ、従僕と結婚させ、その従僕が死ぬとその女中と結婚しようとして、やっぱり別の人にプロポーズしたり、その相手は息子(主人公)の想いびとだったり、とかなり精神分裂気味で、物語終盤で本当に分裂する。
これでドストエフスキー五大長篇を読み終えた。