角幡唯介のレビュー一覧
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グリーンランドの高緯度の地域を極夜中に数ヶ月かけて探検した著者の体験を綴った本。
思うに、文明とは自然環境と生身の人間の間にある膜のようなもので、これを極力剥ぎ取って、どれだけ自然と直線接点を持つかが、この方がやったことなのだと思う。著者に対しては寡黙でストイックなイメージがあったが、こんなにユーモアを持った人だとは思わなかった。元々こういう人なのだろうか、それとも過酷な環境を乗り越えるため、ユーモアを必要としたのだろうか。。どちらにせよ面白かった。
探検というと、未知の風景を求めて未踏の地を進んでいくイメージだが、著者は、未知の環境に身を置き、自身の心がどう変わるかを試したのだと思う。
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山登りでは分かれ道に来たらまず地図を確認する。登山では常識レベルの作法だが、この男はその常識を捨ておいて地図を持たずに日高山脈に突撃する。地図=システムの象徴だのとのたまい、システム外部を求めて、システム(地図)を捨てて日高へ向き合う。
「頼りになるのはGPSのような私の経験とは何も関係ない空疎なテクノロジーではない。(中略)旅という行為が土地とつながること、それがここで生きていけるという濃密な実感を生み出すのである。」(273p)
現代で指折りの、十分に頭のおかしな登山家の一人だ。(※褒め言葉)
2017年の初回の旅では悪場のゴルジュに疲弊し嫌気が差している。よくぞ正直に脚色せず書いてく -
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ネタバレ感想を素直に書くと、「こじらせてるなぁ……」という感じになる。
確か、高野秀行さんも、「誰も行ったことがない場所に行きたいと思って色々やってきたのに、気づいたら地球上に誰も言ったことがない場所がなくなっていた」というようなことを書いていた気がする。
この本だと、同じように悩んだ筆者が、じゃあ自分は次に何を目指せばよいのかを、内面を向き合いながら、迷走している過程がずっと書かれている。
特に前半は、その悩みっぷりがすごいというか、自分の闇にハマってたんだろうな、という印象で、「地図を持たないで山を登ることが自分にとっての新しい目的だ」ということを正当化するためのエクスキューズが続く、ように -
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ネタバレ「極夜行」という著書にて、第一子が誕生直後なのに、北極へ命懸けの旅に出かけた著者に驚く。作中にあまり妻子の話が登場しなかったので、その心中いかにと思い、手に取った。
この本には、「極夜行」前後での、家庭の話がたくさん書かれていて、意外と「普通のお父さん」であり、冒険に際してはちゃんと逡巡があったことに勝手に安心したし、親バカな様子を微笑ましく思った。
また父親の視点から子育ての話として興味深かった。自分のライフワークとの間の葛藤とか、育児場面での所在のなさとか、男親としての立場を獲得する過程とか、異性としての娘の見方とか…良し悪しは別として新鮮だった。夫が読んだら共感するのかな。気になる。
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ネタバレ地図なき山
~日高山脈49日漂泊行
著者:角幡唯介
発行:2024年11月20日
新潮社
久々に冒険家(探検家)・角幡唯介のルポ。今回は北海道にある日高山脈の登山だけれど、普通の登山ではなく、地図を持たず、事前に調べることも全くせず、登山計画もなし。そして食料も一定量しかもたずに後は現地調達。具体的には魚釣りが中心。衛星電話は非常のとき以外は使わない。それって、たんなる冒険好き、危険を乗り越えるのが好きなだけのリスクジャンキー?と思ってしまうけれど、実はそうではない。著者は以下のように言う。
「脱システム」という思想に取り憑かれた。海外を旅するときもスマホ片手で知人とつながり、スターバッ -
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ノンフィクションを書く二人の作家の対談本。ノンフィクション作家の苦労や「あるある」が語られる。
ノンフィクションとニュース、ジャーナリズムの類似点、相違点が語られるところがとても印象に残った。
どちらも事象を観察して出来るだけありのまま伝えるが、やはりそこにはストーリーや所謂「盛り場」が必要で、嘘にならないように、一方で面白くなるように書くことが求められる。綱渡りのような危うさがある。
ノンフィクションはあることが起きるまでの変化を描くことが出来るが、ニュースは起きないと描けない(まだ起きていないことはニュースとしての価値がない)
物書きのマネタイズについて触れられていたり、色んな悲哀を感 -
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ネタバレ帯を見て「極夜行」のスリリングな感じを期待して読んだが、個人的にはそこまでのスリルはなかったように感じる(やってることは十分危険だと思うが)。というよりかは、地図無し登山をすることで、冒険への計画性や未来予測性を排除し、本質的に自然との調和を図り、生を実感する、といういわば「縛りプレー」の試みを6年間にわたって実行した記録。
この試みを始めるに至った経緯には一定共感できるところがあった。例えば飲み屋を探している時、食べログで綿密にリサーチをして評価が定まっている店に予約して入るよりも、ふらっと看板を見て入った方が、あたりであろうとハズレであろうと楽しい体験になる、みたいなこと。スケールは違えど -