角幡唯介のレビュー一覧
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ネタバレ四方八方雪と氷しかないなんて、想像はできても感覚は全くつかめない。それなのにこの一冊はものすごい現実感が迫ってくる。
だからなのか、読み進めるのはとても疲れた。消耗していくのがはっきりとわかった。300Pぐらいで休みをいれて、普通の小説を読んだらなんだか体から力が抜けるようだった。
すごいな、なんでそんなにまでなって、などと読んでいる間に何度思ったかわからない。特にヘルペス。写真を見なくても痛々しさがわかりすぎて、どこでもドアで薬を手渡しに行きたくなった(もう旅は終わっているのに)。あと生肉でおなかをこわした日。休めないからとよれよれと前へ身体を進ませようとする姿が痛々しい。荻田さんが見か -
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新聞の書評で本書を見つけ、開高健ノンフィクション賞を受賞した時から気になっていた著者でもあり、読んでみた。
19世紀半ばに、ジョン・フランクリン率いる北西航路探検隊129名全員が亡くなった航路を辿ることで、彼らの見たものを自分の目で確かめようと、著者と極地探検家の荻田泰永の二人で挑んだ北極冒険譚。
彼らの旅の行程をなぞりつつ、途中途中にフランクリン探検隊の謎にまつわるエピソードが差し挟まれていくという構成で、語りもうまく、そのあたりなかなかニクイ。
かなり厳しい旅であったことは想像に難くないのだが、思いのほか淡々とした印象を持ったのは私だけだろうか?
ただその中でも、麝香牛を殺して食べるシ -
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グリーンランドの高緯度の地域を極夜中に数ヶ月かけて探検した著者の体験を綴った本。
思うに、文明とは自然環境と生身の人間の間にある膜のようなもので、これを極力剥ぎ取って、どれだけ自然と直線接点を持つかが、この方がやったことなのだと思う。著者に対しては寡黙でストイックなイメージがあったが、こんなにユーモアを持った人だとは思わなかった。元々こういう人なのだろうか、それとも過酷な環境を乗り越えるため、ユーモアを必要としたのだろうか。。どちらにせよ面白かった。
探検というと、未知の風景を求めて未踏の地を進んでいくイメージだが、著者は、未知の環境に身を置き、自身の心がどう変わるかを試したのだと思う。
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山登りでは分かれ道に来たらまず地図を確認する。登山では常識レベルの作法だが、この男はその常識を捨ておいて地図を持たずに日高山脈に突撃する。地図=システムの象徴だのとのたまい、システム外部を求めて、システム(地図)を捨てて日高へ向き合う。
「頼りになるのはGPSのような私の経験とは何も関係ない空疎なテクノロジーではない。(中略)旅という行為が土地とつながること、それがここで生きていけるという濃密な実感を生み出すのである。」(273p)
現代で指折りの、十分に頭のおかしな登山家の一人だ。(※褒め言葉)
2017年の初回の旅では悪場のゴルジュに疲弊し嫌気が差している。よくぞ正直に脚色せず書いてく -
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ネタバレ感想を素直に書くと、「こじらせてるなぁ……」という感じになる。
確か、高野秀行さんも、「誰も行ったことがない場所に行きたいと思って色々やってきたのに、気づいたら地球上に誰も言ったことがない場所がなくなっていた」というようなことを書いていた気がする。
この本だと、同じように悩んだ筆者が、じゃあ自分は次に何を目指せばよいのかを、内面を向き合いながら、迷走している過程がずっと書かれている。
特に前半は、その悩みっぷりがすごいというか、自分の闇にハマってたんだろうな、という印象で、「地図を持たないで山を登ることが自分にとっての新しい目的だ」ということを正当化するためのエクスキューズが続く、ように -
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ネタバレ「極夜行」という著書にて、第一子が誕生直後なのに、北極へ命懸けの旅に出かけた著者に驚く。作中にあまり妻子の話が登場しなかったので、その心中いかにと思い、手に取った。
この本には、「極夜行」前後での、家庭の話がたくさん書かれていて、意外と「普通のお父さん」であり、冒険に際してはちゃんと逡巡があったことに勝手に安心したし、親バカな様子を微笑ましく思った。
また父親の視点から子育ての話として興味深かった。自分のライフワークとの間の葛藤とか、育児場面での所在のなさとか、男親としての立場を獲得する過程とか、異性としての娘の見方とか…良し悪しは別として新鮮だった。夫が読んだら共感するのかな。気になる。
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ネタバレ地図なき山
~日高山脈49日漂泊行
著者:角幡唯介
発行:2024年11月20日
新潮社
久々に冒険家(探検家)・角幡唯介のルポ。今回は北海道にある日高山脈の登山だけれど、普通の登山ではなく、地図を持たず、事前に調べることも全くせず、登山計画もなし。そして食料も一定量しかもたずに後は現地調達。具体的には魚釣りが中心。衛星電話は非常のとき以外は使わない。それって、たんなる冒険好き、危険を乗り越えるのが好きなだけのリスクジャンキー?と思ってしまうけれど、実はそうではない。著者は以下のように言う。
「脱システム」という思想に取り憑かれた。海外を旅するときもスマホ片手で知人とつながり、スターバッ