前川ほまれのレビュー一覧
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精神科の専門病院である富士見ウエスト病院には、性の在り方に関する不調をケアする「SOGI支援外来」がある。そこの担当医・海野彩乃先生をメインに第七病棟での出来事を綴った連作短編集。
SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を取った略称。この言葉を初めて知った。
見た目を全く気にせず、ほんわかした雰囲気で、常に患者の心に寄り添う海野先生。性的指向を指摘され、心に傷を負った人たちには、海野先生の何気ない一言が心に響くんだろうな。
前川さんが現役看護師だけあって、富士見ウエスト病院で働く看護師さん、精神保健福祉士さん、院内 -
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読書備忘録907号。
★★★★★。
ラスト。涙が溢れました。
テーマは東日本大震災とヤングケアラー。
軽々しく感動すべきテーマでも無いし、分かった風な評論をすべきでもない。
だけど、物語として心をえぐった。
物語の構造を備忘録として(ネタバレになっちゃうかなぁ・・・★ご注意★)
2010年。
宮城県の海岸沿いの架空の街、磯網地区。
主人公、女子高校生の織月小羽。
母は統合失調症で離婚。
プーちゃんが電波で攻撃してくると言う。
祖父もいるが脳梗塞で倒れる。
母の面倒はすべて自分がみている。
主人公の友人、松永航平。
母親は既に亡く、父は漁港で働き、祖母は精神疾患を患っている。
祖母の -
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上下二段組350ページの中に、ヤングケアラー3人の、震災に直面するまでの日常と震災後の成長と再会を描く、量も質も重厚・濃密な小説でした。
第一部は、それぞれケアを要する家族がいる3人の高校生と、東京から移り住み彼らに寄り添い支えようとする女性が被災するまで。第二部が、震災から11年後、東京で再会した3人のこれまでの軌跡と今後が描かれます。
多くの今日的な社会課題を盛り込み、現代社会を淡々と炙り出し、人が人を支えることの難しさと尊さを描き出す内容でした。災害も含め、困窮している人に寄り添うという点で、周りの私たちの立ち位置として新たな視点を与えてくれる気がしました。
改めて痛感させら -
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ヤングケアラーと東日本大震災と、その後のそれぞれの人生が描かれた物語。
特に、ヤングケアラーに関する描写は、当事者(ケアをする側)の意識と感覚を想像させられました。
「手を離す」という選択肢があまりにもピンとこない世の中であるが、その選択肢を必要世代に示すとともに、手を離すということに対する周囲の偏見を緩和させていき、根本的な認識から少しずつ変化させていくことが、今後の社会に求められるのかなぁと感じた。
このような本を沢山の人が読むことで、たとえ当事者にはならなくとも、身近な方や偏見がある方に「そうじゃないんだよ」と言えるような世の中になっていけばいいと感じました。 -
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ネタバレ2024/09/02予約 11
宮城県に住む高校2年の3人のヤングケアラーの日常から東日本大震災を経て東京で再開するまで。統合失調症の母を介護する小羽。双極性障害の祖母を介護する航平。アルコール依存症の母の介護と弟の面倒をみる凛子。
家族という名のもとに 存在する「福祉における含み資産」。とんでもない言葉が突き刺さる。「家族は支援者にはなれない」これも、その通り過ぎて、赤の他人に言われないと気づけないことかもしれない。
著者は男性だったんですね、勝手に女性だと思い込んでた。
ヤングケアラーにも、他にも福祉の谷間に落ちてしまう人にも、必要な支援が届くようになってほしい。
つらい話も多いけど目をそ -
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Posted by ブクログ
小さめフォントと1ページに上下段構成で、なかなかの文字数です。
が、最後には泣いてしまってページを捲れません。あとがきにまで泣いてしまいました。
第一部は、ヤングケアラーからの東日本大震災とかなり重たく苦しい内容です。
家族なんだから、家族の面倒をみるのは当たり前。そんな環境で高校2年生の小羽、航平、凛子の3人は学校から帰ってきた後の時間を介護と家事に費やします。
藍色時刻。なるほど。
そして、被災。
第二部は被災から11年後。看護師になった小羽。震災後、連絡をとっていなかった航平、凛子との再会から当時に向き合うまで。
3人にとっての、青葉の存在の大きさ。
あとがきの最後には、心からの同