【感想・ネタバレ】藍色時刻の君たちはのレビュー

あらすじ

2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽(こはね)は、統合失調症を患う母を抱え、介護と家事に忙殺されていた。彼女の鬱屈した感情は、同級生である、双極性障害の祖母を介護する航平と、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を見る凜子にしか理解されない。3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ、誰にも助けを求められない孤立した日常を送っていた。しかし、町にある親族の家に身を寄せていた青葉という女性が、小羽たちの孤独に理解を示す。優しく寄り添い続ける青葉との交流で、3人が前向きな日常を過ごせるようになっていった矢先、2011年3月の震災によって全てが一変してしまう。2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある時、彼女は旧友たちと再会し、それを機に過去や、青葉が抱えていた秘密と向き合うことになる……。宮城県出身の現役看護師による、魂が震える傑作!

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Posted by ブクログ

すさまじい作品だった。まず読みやすい。そしてヤングケアラー、精神疾患、東日本大震災などさまざまな要素があり、読めない人も少なくないだろう。しかし愛ある作品だった

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

読書備忘録907号。
★★★★★。

ラスト。涙が溢れました。

テーマは東日本大震災とヤングケアラー。
軽々しく感動すべきテーマでも無いし、分かった風な評論をすべきでもない。
だけど、物語として心をえぐった。

物語の構造を備忘録として(ネタバレになっちゃうかなぁ・・・★ご注意★)

2010年。
宮城県の海岸沿いの架空の街、磯網地区。

主人公、女子高校生の織月小羽。
母は統合失調症で離婚。
プーちゃんが電波で攻撃してくると言う。
祖父もいるが脳梗塞で倒れる。
母の面倒はすべて自分がみている。

主人公の友人、松永航平。
母親は既に亡く、父は漁港で働き、祖母は精神疾患を患っている。
祖母の面倒はすべて自分がみている。

主人公の友人、住田凛子。
母親はアルコール依存症で使い物にならず。
幼い弟の面倒はすべて自分がみている。

そして、朝倉青葉。
小羽のじいちゃんが脳梗塞で倒れた中華料理店の店員。
ヤングケアラーの3人を何かとケアしてくれる。
家族のケアを自分がするのが当然のことと考える3人に、一人で抱え込むな!もっと人を頼って良いんだと。
ただ、そんな青葉に人殺しの過去がある、と噂が流れる。青葉はどこ吹く風。

章と章の間に青葉が先生?に宛てた手紙が差し挟まれる構成。ここがポイント!
青葉の過去に何があったのか?

2011年3月11日。
東京に戻っているはずの青葉は、小羽の母が気になり磯網地区に残っていた。
そして14時46分。地震が襲った。津波が襲った。
堤防で途方に暮れる小羽の母親。青葉は小羽に逃げろ!と言う。母は自分に任せろと言った!
とにかく内陸の高台へ・・・。

時は2022年。
3人は東京に居た。
28歳の小羽は精神科の看護師になっていた。そしてパニック症を抱えていた。
28歳の航平は介護士をしながら、AYA世代の癌サバイバーとして戦っていた。
28歳の凛子はカレー屋を営んでいた。同性婚が許されていない日本においてパートナーの女性と一緒に。

震災が彼らから奪ったもの。忘れることが出来ないそれぞれの記憶。未だ地元に戻れない3人。
青葉の壮絶な過去・・・。

そして3人は共に故郷に向かう・・・。

エンディング。
見つかったプーちゃんの石細工。
「#4君の羽を想う」5ページの真実。
もうダメです。ここ!(٭°̧̧̧ω°̧̧̧٭)

作者さん。ほまれ、というからには女性かと思ったら男性だった件。
看護師をしながら執筆業もしていると。
夏川さんかっ!
ちょっとこれからはフォローしてみるし。

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2025年03月31日

Posted by ブクログ

 上下二段組350ページの中に、ヤングケアラー3人の、震災に直面するまでの日常と震災後の成長と再会を描く、量も質も重厚・濃密な小説でした。
 第一部は、それぞれケアを要する家族がいる3人の高校生と、東京から移り住み彼らに寄り添い支えようとする女性が被災するまで。第二部が、震災から11年後、東京で再会した3人のこれまでの軌跡と今後が描かれます。

 多くの今日的な社会課題を盛り込み、現代社会を淡々と炙り出し、人が人を支えることの難しさと尊さを描き出す内容でした。災害も含め、困窮している人に寄り添うという点で、周りの私たちの立ち位置として新たな視点を与えてくれる気がしました。

 改めて痛感させられるのが、当事者の事情・家族状況・心情は皆違うということ。家族だからケアするのは当たり前と考え、距離を置けない現状です。自分の人生を自分で選択して生きていくために、第三者の気付きと支えは必要不可欠ですね。
 震災への向き合い方も、消せない傷もあり〈風化させない、あの日を忘れない〉の裏に潜む、配慮のなさや傲慢さも自覚する必要があると思いました。

 過去に折り合いをつけ、少しずつ未来へ希望を抱く結末の彼らの姿に救われますし、読み手の私たちも問題意識を持ち、何かできることはないかと考えるきっかけを与えてくれる物語でした。
 ブルーモーメント(日の出前や日没後に空が濃い青色に染まる時間帯)を「藍色時刻」と表現し、彼らの人生の時と重ねながら表紙の色とリンクさせた工夫も秀逸でした。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

ヤングケアラーと東日本大震災と、その後のそれぞれの人生が描かれた物語。
特に、ヤングケアラーに関する描写は、当事者(ケアをする側)の意識と感覚を想像させられました。
「手を離す」という選択肢があまりにもピンとこない世の中であるが、その選択肢を必要世代に示すとともに、手を離すということに対する周囲の偏見を緩和させていき、根本的な認識から少しずつ変化させていくことが、今後の社会に求められるのかなぁと感じた。
このような本を沢山の人が読むことで、たとえ当事者にはならなくとも、身近な方や偏見がある方に「そうじゃないんだよ」と言えるような世の中になっていけばいいと感じました。

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2025年02月05日

Posted by ブクログ

ヤングケアラーの問題が表面化されてきて、まだまだ日は浅い

介護が当たり前に存在すると、疑問には思えなくなる
それは、日常だから

もっと手を差し伸べて
もっと利用しやすい制度を
そして、もっと周知を

誰でも自分の人生を生きていいはずなのに囚われてしまうのはなぜだろう

綺麗な言葉だけで片づけない

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2025年02月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2024/09/02予約 11
宮城県に住む高校2年の3人のヤングケアラーの日常から東日本大震災を経て東京で再開するまで。統合失調症の母を介護する小羽。双極性障害の祖母を介護する航平。アルコール依存症の母の介護と弟の面倒をみる凛子。
家族という名のもとに 存在する「福祉における含み資産」。とんでもない言葉が突き刺さる。「家族は支援者にはなれない」これも、その通り過ぎて、赤の他人に言われないと気づけないことかもしれない。
著者は男性だったんですね、勝手に女性だと思い込んでた。
ヤングケアラーにも、他にも福祉の谷間に落ちてしまう人にも、必要な支援が届くようになってほしい。
つらい話も多いけど目をそらしてはいけない、考えることの多い作品でした。

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2024年11月15日

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前川ほまれさんの本はいつもグサグサくる。当事者でないからこそ感じておきたいし忘れずにいないといけない。

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2024年10月22日

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ヤングケアラー×震災×自身の生きにくさで激重な作品。統失の母を持つ小羽、アル中母と幼い弟を持つ凛子、ボケた祖母を持つ航平。全員片親。そこに降りかかる震災、その後も続く人生…
冒頭、殺人事件の公判から始まり、誰が殺しちゃうんだ…?と考えながら読んだ。
パニック障害、癌、セクシャルマイノリティにも触れられていて、ページ数のボリュームと相まって読み応え抜群だった。

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2024年06月14日

Posted by ブクログ

家族と家事のケアに縛り付けられて、閉塞した毎日と選択が狭めらめた未来を抱える3人の高校生と、手を差し伸べる青葉さんとの交流。そこに東日本大震災の津波がその日常をも飲み込んでしまう。どの描写もリアルで胸が詰まります。そして震災から11年後の3人は・・・
羽ばたくことができないヤングケアラー、青葉さんの小羽たちへの想い。ずっしりした読み応えで、読む前にはなかったものが心に残されました。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

小さめフォントと1ページに上下段構成で、なかなかの文字数です。
が、最後には泣いてしまってページを捲れません。あとがきにまで泣いてしまいました。

第一部は、ヤングケアラーからの東日本大震災とかなり重たく苦しい内容です。
家族なんだから、家族の面倒をみるのは当たり前。そんな環境で高校2年生の小羽、航平、凛子の3人は学校から帰ってきた後の時間を介護と家事に費やします。
藍色時刻。なるほど。
そして、被災。

第二部は被災から11年後。看護師になった小羽。震災後、連絡をとっていなかった航平、凛子との再会から当時に向き合うまで。

3人にとっての、青葉の存在の大きさ。
あとがきの最後には、心からの同意。

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

ヤングケアラーの同級生3人に寄り添う青葉さんという女性。震災で青葉さんは亡くなるが、彼女を忘れられない3人は成人後再会し、青葉さんの過去を知る人と知り合える。青葉さんが錦糸町の店と繋がる場面が少々強引な話の運び方とは思ったが、精神疾患を看護する家族の辛さは、身に染みる

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2024年03月04日

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友人の紹介で拝読。ヤングケアラー,震災という重く暗いテーマに一筋の光が差し込む感覚がありました。印象的だったのは「手を離すことは、誰かに託すとか、他人に委ねるって言い換えることができるかもしれない」という言葉。どうか似た状況におかれている方々に寄り添える一冊となることを願います。

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2024年02月18日

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震災を境目にしてものの見え方が変わる感じ。
大切な人がもういないという喪失感と、
生き残ってしまった罪悪感。
今普通に過ごせていることへの後ろめたさ。

今また震災があったこのタイミングで読むには身に迫り過ぎてしんどかった…けど今読んでおいてよかった。

他人に甘えることを教えてくれて、いつか手を離して自分の人生を歩めと言ってくれる人。
自分を愛してくれる人。
親じゃなくてもいい。そういう存在に出会えることは宝物のようなことだ、と思ったら涙がとまらなくなった。

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2024年01月13日

Posted by ブクログ

当事者とは言えないが、とても共感(という言葉が合っているのかよくわからないが)できた。
震災の話は正直に言ってまだ受け止めきれない。
でも読むべき本だったと確かに思える。

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2023年12月29日

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ヤングケアラーの話はすごく考えさせられて、もし自分がその立場だったら?もしくはヤングケアラーと今出会ったら何ができるのだろう?と考えた。青葉さんのように手を離しなさいねと言ってあげられるのだろうか。
何事もそうだけれど経験した人にしかわからない痛みがあって、その痛みに簡単に寄り添えるわけがないけど寄り添いたい、でも本当にその痛みを理解するのは難しいのだろうな、だから経験者同士の輪というのも大切なんだろう。
また震災についての話も同様でこれも経験した人とそうでない人では理解の仕方が全く違うだろうし、その痛みを乗り越える、抱える、忘れる、向き合う、人それぞれなんだと思った。自分がその立場にいたら向き合えただろうか?逃げ道があることは心を保つ上でも大切だと思うし..とまあ、まとまりのない感想ですが、色々考えさせられた本でした。

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2025年09月23日

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ヤングケアラーの毎日が、ここまで辛く大変なものだとは、全く想像も及ばなかった。父親が、自分の子供に親の介護を押しつけるなんてあり得ない!本人がSOSを発するのは難しいように思ったので、気が付いた周りに居る大人が、少しずつでも支援の手を差し伸べることができると良いが。

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2025年07月07日

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ヤングケアラー×震災がテーマ。それでいて重くなりすぎない空気を纏ってるのはすごい。過去の自分と同じ立場の若い子に手を差し伸べてあげられる人になりたいね。宮城に来る前に読めて良かった! 明日は石巻に行く。

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2025年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校2年生の青春ものだったらどんなに良かっただろう。ヤングケアラーとして家族を支える3人それぞれの終わりの見えない日々と友情、偶然知り合った優しい女性の励ましと支え、そして何もかも飲み込んだ震災。前半の重いテーマに胸ふさがりながら後半へ。11年後を描いた生き残った人の苦しみを読みながら、最後に明るい兆しが見えて良かった。

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2025年01月09日

Posted by ブクログ

暗くて地味で救いのなさそうな展開もジワジワと引き込まれていく筆力は経験者だからなのかと。被災者一人ひとり、考え方、乗り越え方は異なり、経験してない私達はただただ寄り添ってあげることが大事なのかなと考えさせられた。

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2024年12月29日

Posted by ブクログ

苦しい
ヤングケアラーの話
ずーっと、親の様子を伺いながら、学校行っている間も、帰ってきてからも、ずーとこれやってあれやって、親の相手して、あれやって、これやってと家事の段取りを考える。

その忙しさは、まるで赤ちゃんを育てながら仕事しながら家事をする親と一緒だ。
稼いでいない分更に辛く、
赤ちゃんではなく、親や祖母であるということも更に辛い。

統合失調症、双極性障害、アルコール依存症…
静かにずっとしんどい。でも続きが気になるし、どうにかいい結末であってくれと祈りながら読む感じ。

そしてさらにそこに震災も組み合わさってくる。

2010年10月 11月 2011年2月 3月と、
2022年7月 8月 9月 10月 の物語。

よく書ききったなと思った。
追悼の本だったのかな。

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2024年09月08日

Posted by ブクログ

構成が本当に巧みだった。医療用語が沢山出てくるので、少々堅苦しさはあるものの、ストーリーの構成や各キャラクターの掘り下げが上手く、最後まで飽きなかった。

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2024年08月14日

Posted by ブクログ

一気に読ませられた。かなりボリュームあるけど、読んでしまう。

ヤングケアラー、震災遺児、に反応してしまう場合は気をつけて読んだ方がいいと思うくらい、かなり人物の気持ちが四方八方から飛び込んでくる感じ。

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2024年07月09日

Posted by ブクログ

 社会問題として認識されながら、潜伏して表面化しにくいヤングケアラー。かつて、ヤングケアラーとして苦しんだある女性と、いま(設定は2011年の震災前後)ヤングケアラーとして苦労している高校生男女3人の交流を描いた物語。
 頑張りすぎて、助けを求められない高校生たちに、声をあげて良いんだよ、と優しく寄り添ってきた女性は津波にさらわれてしまう。
 そして、10年が経ち女性と同じ歳に達した彼等が気付きはじめた女性の思い。
 山田風太郎賞って、もっとエンタメ色強い賞だと思っていたけれど、こんな重いテーマでも受賞するんだね。
 泣きはしないけど、感動的な話ではある。こういうのを有名なインフルエンサーは紹介して欲しいよ。うす~い、やつじゃなくて、こういう、ズシ~ンとくるものを。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

まず第一部が苦しい。
作品紹介に「3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ」とあるが、そういわれてしまえば、私自身も苦しめる側の無理解な人間だと思うし、読みながら自分の無力さと、小羽たちの重い日常と色々考えて、どんどん辛くなった。

そして第二部は震災後の苦しみ。
こちらもやはり、同じ経験をした者にしか心を開くことが難しいように思える…
そもそも私が理解したいとか、寄り添いたいとか思うのは傲慢なのかもしれないなんて思ってしまったり…。

本当に難しい。

でも苦しみが少しでも癒えて欲しいと願う。
この物語の中で、小羽たちは青葉さんとの出会いで救われ、青葉さん自身も、この三人との出会いに救われていた。
沢山の苦しさの中からも、小さな温かい光が感じられたし、小羽が最後に一歩を踏み出せて良かった。

子どもたちへの温かな眼差し、忘れないようにしよう。
作者のあとがきは、必読だなと思います。

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2024年03月23日

Posted by ブクログ

ヤングケアラーという問題と被災者のメンタルヘルスの問題。大きな2つの問題について描かれた小説だ。両方ともあまりに大きな問題なので、両方詰め込むのはお腹いっぱいになりそうだが、ちゃんと整理されていて読みやすかった。

統合失調症の母を持つ小羽、双極性障害の祖母を持つ航平、アルコール依存症の母と幼い弟をもつ凛子。これでもかというほど苦難の連続でいっぱいいっぱいになりながら、現実から逃げることも許されずに頑張るしかなかった彼らに、手を差し伸べる青葉。
震災があって3人ともヤングケアラーではなくなった。ヤングケアラーではなくなったが震災は彼らに大きなしこりを残していった。

震災前の彼らの生活は、読んでいてあまりにもしんどかった。身内だからやるしかない。でも、彼らが頑張ってしまうから、大人たちは彼らのしんどさに気づかない。
手離したらいいと言われても、どう手離せばいいのか見当もつかない。
彼らみたいなヤングケアラーが問題視され始めてまだ日が浅い。今後、彼らを大人たちが守る制度ができてほしい。

震災についても、あの日を忘れない、がんばろう東北…と励ますためのキャッチコピーも、彼らを追い詰める言葉になってしまう。忘れさせて…もう頑張ってるよ…と思って歯を食いしばっている被災者がいるのだ…

能登被災者も、今も、そしてこれからも試練が続くのだろうと思うと心が痛む。メンタルヘルスは単純な問題ではないが、せめて物理的な不自由さから早く解放されてほしい…

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2024年03月21日

Posted by ブクログ

作者の前川さんは、現役の看護師だけあって、医療関係の記述は疎かにせず、事細かく書き込まれてますが、読者にも呑み込みやすいように、表現を噛み砕く工夫があっても良かったと思います

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

物語は子を殺した誰かが、裁判所で裁かれている所から始まる。一転、高2の三人の生活が描かれて行く。織月小羽は母が統合失調症。父は離婚して側にいない。航平は祖母が双極性障害。母は幼い頃亡くなっている。凛子の母はアルコール依存症で幼い弟がいる。父は家族に暴力を振るうような人で、耐えていた母は離婚した後、依存症になった。最初に三人の日常が丁寧に綴られていき、抱えている鬱憤や諦念のようなものが十分に共感させられる。そこに、近くの中華料理店になにやら訳ありそうな青葉という女性が来て、同じ高校で親しくしている三人とそれぞれ関わり始める。そんな日常を襲う東日本大震災。
後半は震災を経て日常が一変し、離ればなれになった三人が再会し、それぞれ過去を乗り越えるために当時を振り返る。青葉さんがどんなひとだったのかも後半に明らかになる。
内容としてはスカッとしないものなのに、読まされた。暗い話だと結構読むペース落ちるのだけどこれは青春時代なのと、再生の話なので、それが救いだったのかも。
ヤングケアラーは立場がピンキリだと思うけど、この三人のように、家族が頼れないと本当に厳しいと思う。
統合失調症やパニック障害など、普段馴染みのない症状も追体験できて良かった。
基本は中学校からだけど、長くてルビなしが問題なければ小学生から大丈夫。テーマは重いものが多そうだが、この著者の他の作品も読んでみたい。

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2024年02月12日

Posted by ブクログ

統合失調症の母をもつ小羽、母がアルコール依存症で幼い弟の面倒もみる凛子、躁うつ病の祖母を介護する航平の3人の高校生。似た境遇ゆえ夫々の置かれた状況をお互いに理解し合える友達である所謂ヤングケアラーであるこの3人に、東京から来た十程歳上の青葉さんは寄り添い、サポート、アドバイスをする中で、理解し合える様になってきた矢先に東日本大震災の津波に襲われてしまうという、なんとも切ない第一部。
第二部は、その12年後に彼らが再会し、青葉さんの実相に辿り着くという流れ。
家族の面倒をみる高校生達の本音であろう部分が変に感傷的ではなく淡々と描かれていると感じる。ラスト間際の、青葉さんが小羽の母親をおんぶして津波から逃れようとするシーンに特にそれを感じ、返って哀しさ、儚さが増していると感じた。

それにしても、老人介護は介護保険の整備など社会的認知も進み、所謂「家族が手を離す」事が進んでいるとは思うが、このヤングケアラーの方はまだまだだと感じる。

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2024年01月18日

Posted by ブクログ

ヤングケアラーの問題と震災が絡んだ話なので、かなり重い題材です。
ただあまり重く感じなかった。小羽、凛子、航平たちが淡々と現状を受け入れているからかな~と思った。苦しくもがいているというより「淡々と」。そんな感じ。
最近はニュース等でヤングケアラーの問題が取り上げられたりするようになっているが、ただその状況を受け入れている子供たちがまだ多くいるのは変わらないと思う。
あくまでも小説の中の話だけれど、少しでもそんな子供たちの感情を知ることができてよかった。

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2024年06月27日

Posted by ブクログ

前川ほまれさん著の『藍色時刻の君たちは』の概要と感想になります。重苦しい内容のため、ご注意下さい。

概要です。
小羽、凛子、航平の高校生三人にとって一度きりの青春時代は、家族の介護と東日本大震災という傷だらけの想い出を残して過ぎ去った。
ただ三人の救いは、震災前に出会った少し年上の格好良くて優しい浅倉青葉というお姉さんと過ごした日常。
三人は青葉さんにそれぞれの憧れを抱きながら大人へ成長するが震災後も未だに癒えない傷は多く、11年振りに奇跡的な再会を果たした三人は苦しさを承知で故郷を訪れる。

感想です。
本作でヤングケアラーという言葉を初めて知ったことと、私の読書歴の中で初の二段組の長編を読んだことで、なんとも言えない読後感を味わっています。
どのような感情を抱くことが正解なのか分からずじまいですが、自分の知らない日常と感情と闘っている人々の存在を他人事だと無視できないなと感じています。

相手を思いやる気持ちは大事ですが、本作で語られるような境遇にある人々は自分を責めずに、頑張ってきた自分をたくさん褒めて労って欲しいです。

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2024年04月08日

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