【感想・ネタバレ】在る。 SOGI支援医のカルテ【電子版特典付き】のレビュー

あらすじ

「あなたの性にまつわる在り方は、あなたが決めて良いの。どんな選択をしたって、間違いなんてないしね」
富士見ウエスト病院には、性の在り方に関する不調をケアする「SOGI支援外来」がある。同外来を担当する、第七病棟医長の精神科医・海野彩乃先生は、マイペースな人だけど患者には優しい・意外と面倒見も良いという評判で、各地から患者が集まっていて……。
『藍色時刻の君たちは』で山田風太郎賞を受賞した現役看護師作家がおくる、希望が広がる医療連作短編集。

第一章「二人のエックス」
春、富士見ウエスト病院に勤める休職明けの看護師・倉木透子が配属になった第七病棟は、ストレスケアの治療を中心におこなう「病棟に見えない病棟」。病棟医長の海野彩乃先生とは、休職前にあるやりとりをしていた。復帰した倉木が紹介された患者は、十代のXジェンダーで……。
第二章「溶ける光」
夏、精神保健福祉士の岡田樹里は、アルコール依存症患者の退院支援をしている。担当する尾形佳奈のベッドの近くには、【公正証書 謄本】と書かれた封筒があった。
第三章「反転文字の向こうで」
秋、服飾学生の山口佑樹は、急性一過性精神病性障害で入院している。病室に持ち込んだ【自分史】には、「性別不合の診断を頂けたら、ホルモン療法を開始したいです」という文言があった。
第四章「種の行方」
冬、医師の滝本政成は、新しい病院への転職を予定している。海野先生が新担当となった患者の実姉の情報は、自身の境遇のことを思い起こさせるものだった。
エピローグ「春に」
当直明けの海野は、強迫性障害を患っている担当患者の千田光一から、亡くなった大学の同級生の話を聞く。

*電子書籍版特典として、「反転文字の向こうで」の番外編ショートストーリー「窓辺の声、輝く壁」を収録

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Posted by ブクログ

精神科の専門病院である富士見ウエスト病院には、性の在り方に関する不調をケアする「SOGI支援外来」がある。そこの担当医・海野彩乃先生をメインに第七病棟での出来事を綴った連作短編集。

SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を取った略称。この言葉を初めて知った。

見た目を全く気にせず、ほんわかした雰囲気で、常に患者の心に寄り添う海野先生。性的指向を指摘され、心に傷を負った人たちには、海野先生の何気ない一言が心に響くんだろうな。

前川さんが現役看護師だけあって、富士見ウエスト病院で働く看護師さん、精神保健福祉士さん、院内の様子、患者さんとのやりとりがリアリティに溢れていた。

最寄りの沿線にある病院が舞台で、馴染みの地名や路線が出てきて、前川さんにちょっと親近感が湧いた。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

一人ひとり、ステレオタイプに括れない
いろんなひとがいるんだなと言う
当たり前のような気づき。

多分自分はマジョリティであるという
無意識の安心?みたいなもの、持ってるなーと
自分を省みる。

知らないでいることは
知らないうちに誰かを傷つけてしまうような気がして
この作品で知った多様性はすごい学びだ。
それを自然体で受け止める海野先生
私は医師ではないけど、イチ医療人として憧れる。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

SOGI(ソジ)支援医、という言葉を初めて知る。セクシュアルマイノリティの「からだ」と「こころ」の健康をサポートしているとのこと。性同一性障害は、現在は性別不和や性別違和という呼び名に変わっている。わかりやすく学べる。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

海野先生の患者さんにかける言葉は患者さんの生きづらさに寄り添い患者さんの心にひびくものでした。
私も悩んでいる生徒に寄り添える言葉をかけていきたい。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

2025/08/29予約1
「SOGI(ソジ)支援医」の海野先生。からだと心が一致せず悩む人のための支援をする医師。治すことが目的ではなく、生きやすくなるための支援を一緒に考える。今は「性同一性障害」ではなく「性別不合」と言うらしい。自認の性別に変更するにも決められた要件があり生殖機能を失くす手術は適応する人しか出来ないので、そもそもそこで選別されている。だからといって簡単に変えられたら男女別のトイレや更衣室の意味がなくなる。当事者も周りも生きやすいってどういうことか、わからなくなる。
考えるいいきっかけになった。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

富士見ウエスト病院の名物医師である海野先生は、性の在り方にまつわる不調をケアする「SOGI支援外来」を担当している。

さまざまな悩みを抱える患者にかける言葉には、先生というような威圧感もなく、心を柔らかにしてくれるような対応をする。

ストレスが多い日常で不安定になる心を解きほぐすのは精神科医であるのだが、なかでも海野先生は、不安や悩みを軽減させる力を持っている。

一見、ふわっとした掴みどころのない感じだが、話すと胸の内が凪ぐ、そして何を悩んでたんだろうと思わせてくれる不思議な人である。


「反転文字の向こうで」が特に印象に残った。
急性一過性精神病性障害の弟と脳出血の兄のその後…。
兄の自分史で知ったこと。
海野先生のさりげない『お姉さん』の一言や蘭さんという呼びかけやリップ。
自然だった…何もかも自然だから嬉しいのだと感じた。
兄が瞳の動きで伝えた気持ちに愛があった。




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2025年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

臨床のスピカではじめて前川さんの作品を拝読したのですが、今作も医療者と患者の感情や、病状について丁寧に描かれていて、きめ細やかな作品だなと思いました。
セクシャルマイノリティに関して、少しずつ知られている、と私は思っていました。
けれどまだまだ自分の知らない感情を持つ人々がいて、ハッと思い知らされたのも事実です。
海野先生のような方がいるのは、性のあり方に悩む人にとって救いだなと感じました。
人と違うということを、気にしない人もいるけど、大半は気になるだろう。そんな人と違うことに悩む人を決して否定はせず、おおらかに包み込むような優しさを持つ先生。
海野先生みたいな方が、悩む人のそばにいてくれたらすごく安心できるだろうなと思いました。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

2冊目の前川ほまれさん。『臨床のスピカ』が結構良かったので、9月に発売された新作です。

こちらのお話は、ある精神科病院の第七病棟を舞台にした、4章プラスエピローグからなる連作短編集です。

休職明けの看護師・倉木透子
精神保健福祉士の岡田樹里
急性一過性精神病性障害で入院中の山口佑樹
第二病棟の医師・滝本政成
病棟医長でSOGI支援医でもある海野彩乃

SOGI〈ソジ〉とは、性的指向、つまり「恋愛対象となる性」を表すSexual Orientationと、性自認、いわゆる「心の性」を表すGender Identityの頭文字をとった言葉で、すべての人に関わる概念です。

サブタイトルから、LGBTQ+がメインのテーマなのかと思って読み始めました。もちろんLGBTQ+に関わる、例えば性別不合や同性婚、アウティングなどの問題にも触れつつ、でもそれだけではなく、誕生日に希死念慮を抱く「バースデー・ブルー」やアルコール依存症、オーバードーズ、強迫性障害などなど、様々な精神に関わる疾患が描かれています。正直なところ、ちょっと情報量が多すぎて感情移入しにくいのですが、ラストにタイトルが回収されていて、作者のタイトルへの思いに触れた気がして胸にグッときました。

また、トランスジェンダーが脱・精神病理化になったのは2022年なんだそうです。そんな最近の話だったのかと驚きました。

前川ほまれさん、山田風太郎賞を受賞した『藍色時刻の君たちは』も読みたいです。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

SOGI支援医と患者さんとの日々を描く。sexual orientation and gender identityこの言葉はつい最近まで知らなかった。心がふっと軽くなるような声掛けの出来る先生は良いなぁ。半分しか、ではなく半分も、など。

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2025年10月27日

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