あらすじ
アルコール依存症の母親をもつ柳岡千明は、退院後の母親が入所する施設「セゾン・サンカンシオン」へ見学に行く。そこは、さまざまな依存症に苦しむ女性たちが共同生活を行いながら、回復に向けて歩んでいくための場所だった。迷惑を掛けられてきた母親に嫌悪感を抱く千明だが、施設で同じくアルコール依存症を患っているパピコとの出会いから、母親との関係を見つめなおしていく――。人間の孤独と再生にやさしく寄り添う感動作!
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Posted by ブクログ
すごいものを読んでしまった…
依存症の現実を垣間見た気がします。
家族が受け入れることは簡単じゃない、そう分かっていてもつらすぎる。
何年経っても完全に解放されることはなく、「回復を続ける」という表現も重い。
自分が当事者になったら、あるいはその家族になったら、どうしたらいいんだろう。怖い。
でも忘れたくないのは、依存症になってしまった人たちの心に傷つきがあったこと。最初のきっかけは、傷つきや問題を自分で何とかするために嗜癖に手を出している。
その社会的解決なくして、依存症を減らすことはできないと感じる。
Posted by ブクログ
「人を依存症にするのは、快楽じゃないよ。
心身の痛みや、それぞれが感じている生きづらさが原因で依存症になっていくの」
アルコール依存症の母親をもつ柳岡千明は、退院後の母親が入所する施設「セゾン・サンカンシオン」へ見学に行く。そこは、様々な依存症に苦しむ女性たちが共同生活を行いながら、回復に向けて歩んでいくための場所だった。迷惑を掛けられてきた母親に嫌悪感を抱く千明だが、施設で同じくアルコール依存症を患っているパピコとの出会いから、母親との関係を見つめなおしていく――。
☆最高!最高!最高!☆読み終えた後、興奮してなかなか寝つけなかった。目を瞑るとシーンが瞼の裏に浮かんできて、自分のココロがグラグラ揺さぶられて、心をチクチク刺してくる。"全心"がストーリーで満たされて、酔ったような感覚が気持ち良い。以前に『シークレットペイン』を読んだ印象では、積極的にこの作家さんは追いかけないでおこう……と思っていたのだけど、その考えを改めることにした。これからこの作者をずっと追いかけていきたい、そう思った一冊。アルコールやニコチンを欲したことのある方なら共感できると思います。おすすめ!
Posted by ブクログ
精神科で働いている時に読みたかったな
依存症について、細かい専門書を読むよりリアリティだし入り込みやすいと思う
依存症の人を見たことがある分、家族が間違いなく崩壊していくのも見たことがあって
どちらも疲弊していた
受け止めることが大事
よく聞くけれど、当事者家族としては物凄く難しいことだと思うし、それができたら家庭崩壊しないよね
埋もれてるのがもったいない、もっと知って欲しいと思える本でした
Posted by ブクログ
アルコールやギャンブル、窃盗などの依存症に苦しむ女性達とその民間療養施設、セゾン サンカンシオンの物語。
初めて知る依存症の現実ばかりだった。「再飲酒は風邪の時の鼻水のようなもの」「完治はしない」「回復を続ける」という表現に、この「病気」の難しさと当人の苦しみを感じだ。
そうなるには、皆大きすぎる悲しみや辛い体験を抱えている。だからこそ人の温もりが回復のための大きな力になるのだろう。物語の最後に希望の光が見えて救われる。
Posted by ブクログ
前川ほまれさんの新刊 児童書を読みたいと思い、初作家さんはどんな本を書いているのか知りたくて手に取った本。
アルコールや薬物、ギャンブルなど依存症の人達とその家族、療養所のセゾン・サンカンシオンと指導員の塩塚さんの話。
依存症は周りの理解が難しいこと、本人の辛さ、詳しく書かれて、暗く深い内容に何度も挫折しそうになりながら、でも読まない選択ができない本でした。
Posted by ブクログ
様々な依存症の女性達が暮らす民間施設セゾン・サンカンシオン
依存症になってしまった女性達と家族の物語。
第5章のタイトル 三寒四温を目にしてようやくセゾン・サンカンシオンと結びついた。
Posted by ブクログ
岡本歌織さんの装丁から。なんらかの依存性を抱えた人たちが暮らすセゾンサンカンシオン。三寒四温の言葉どおり、依存性との戦いは一歩ずつ。ぐっとくる小説だった。
Posted by ブクログ
根気が必要と分かっていても
あまりにもその道のりが長く
本人も家族も疲弊していくのは
仕方がない・・・と思えるほど
作中の皆も
道半ば
終わりなき道のりの長さに
本人が一番絶望するな
でも三寒四温というのは
とても ぴったりなタイトルですね
寒さに震えていても
少しづつ 春が近づいていく
Posted by ブクログ
アルコール、ギャンブル、薬物、万引き‥‥様々な依存症を抱える女性たちが共同で暮らしながら社会復帰を目指す場所「セゾン・サンカンシオン」。
そこで暮らす女たちがここに行き着くまでの経緯、依存を断ち切れず苦しむ今、そしてこれからへの小さな希望、彼女らが失ったものと彼女らを支え、または突き放す家族らの姿を描く5つの連作短編。
そして、章の合間に挟まれる一見関係なさそうなごく普通の家族の日常。ほんのちょっとした経緯で依存症に陥り家族が崩壊していく姿を見る時、依存症が決して特別なものではなく私たちの日常と地続きのところにある病なのだと認識させられる。
「だらしないから」「弱いから」「自己責任」と切り捨てる世間。依存症は並行して精神的な病も患うことが多く、意志の力だけで断ち切れるものではないというが、繰り返す依存、嘘、裏切りを目の当たりにした家族の苦悩も理解できる。
それでも、「依存症の根源にあるのは、寂しさなんじゃないかな」という言葉が胸に響く。快楽のためではなく、それなしでは生き延びることができなかった。人間って脆い。だけど、そうやってでも生きようとしてきたなら、きっと立ち直って生き直してて欲しい。
ラストの、主人公の空っぽの身体を満たしてくれたのが、お酒ではなく他人の温もりだったというくだりは泣けた。
厳しい現実を描きながら、ほんの少しの光を用意したそれぞれの短編は読後も爽やか。読んでよかった作品でした。
Posted by ブクログ
世の中に多数ある依存症の、患者本人と家族の様子を語った連作短編でした。厳しい日々が語られる中で、それらは脳内物質に関わる病気であり、誰もが患者になり得て、もしそうなったとしても適切に治療を行える、そういった趣旨だったのかもしれません。私としてはストーリーの上がり下がりがないようにも感じてしまったところがありますが、そこがノンフィクション的なリアルさも感じさせて面白かったです。星3つといたしました。
Posted by ブクログ
色々な依存症の民間回復施設、セゾン・サンカンシオン。
アルコール、万引き、ギャンブル、覚せい剤、様々な依存症の人とその家族が描かれていて、読んでいてずっと苦しい。
依存症は病で意志やモラルでどうにかなるものではない。
アルコール依存症の人が再飲酒するのは病の症状であって、風邪をひいた時に咳や鼻水を出すなと言われても出来ないことと同じなのだそう。
「人を依存症にするのは、快楽じゃないよ。心身の痛みや、それぞれが感じている生きづらさが原因で依存症になっていくの」という言葉に、何も言えなくなる。
本人の辛さ、そして周りにいる家族の辛さ、それが痛いほどに伝わってくるので、読んでいるのが辛くて、最後まで読んで、もう二度と手に取りたくないと思ってしまった。
そこまで感じさせるので、きっと問題を訴える力のある作品なのだと思います。
なんとか自分の感想を絞り出すとすると…
依存症の人が、自分の人生を取り戻していけるように、寂しくない場所があるといいなと思う。そして、それが家族である必要はないと思う。