今村翔吾のレビュー一覧
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長い長い映画を見終わったような、充実感というか高揚、陶酔、うっとりした読後感だ。史実、昔物語に作者の創作を掛け合わせ、最後は見事に終わっていった。スケールの大きい話だった。創作のキャラクターがいつの間にか昔話で聞いた酒呑童子になり、渡辺綱に腕を落とされる。まさかり担いだ金太郎が登場する。この字面だけみると日本昔ばなしのアニメのようだが、そこに至るまでにじっくりとこの小説は物語世界の地ならしをしているので全く不自然さはない。さらには、私がいま住んでいる土地や出身地、仕事で馴染みのある地名など、近畿・関西圏が舞台となっているのもざっくりとした舞台が頭に浮かんできやすく、楽しかった。まぁ、京都を中心とした時代の話を書けばそうなるか。そこに金髪碧眼の容貌をもつ主人公が現れたのか。現代なら、「カッコいい(とろ〜ん)」とでもなりそうだけど、昔は鬼とも呼ばれていたんだろう。当時の雰囲気をイキイキと感じられる文章だ。多少の姿形の違い、風習・文化の違いなどで「童」という差別語で呼ばれ、虐げられた人々が反乱し、朝廷と戦う。和睦しそうにもなるが、謀によりそれも叶わず。そんな戦いの物語だった。三部作の第一部と位置付けているそうだけど、もう第二部、三部は世に出ているのかな?調べておこう。
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「戦国武将伝」西日本編。
大阪府の秀吉が良い。自分の好きな秀吉像であって好きです。老醜を晒すことで、残虐酷薄なイメージが強い秀吉像もあるのですが、陽の秀吉というか、闊達な部分が色濃く出ているのが好きです。思えば「戦国武将伝」に登場する秀吉像は、そちらの陽の豊臣秀吉が多かったように思います。陰と陽、どちらもあっての人物だとは重々承知ですが、読み物として好きなのは陽の方の秀吉です。
そうじゃないと上巻ですが、傾いた伊達政宗を許したりしないでしょう。
和歌山県の雑賀孫一。「修羅の刻」の蛍は「陰徳太平記」か発想を得たのか、という新たな気づきを得ました。こういう気づきがあるから読書はやめられない。愛媛県の加藤嘉明もそう。「ブラタモリ」の松山城を思い出しました。
今までの経験がどこかで結びつく日のために読書をしているのだよなぁ、ということを再確認させてくれた「戦国武将伝」。
こういう読書の喜びっというのは、経験者にはわかってもらえるけども、未経験者には怪訝な顔をされてしまう。思いがけないところで何かが繋がったときの喜びなんだけどなぁ。 -
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作家というと、才能が大きくものをいう職業だと思っていましたが、本書を読んで考えが変わりました。
作家も突き詰めればビジネスパーソン。売れるためには、作家を生業とするためには何が必要なのか。具体的な立ち居振る舞い方法から印税のことまで、知らなかった世界を垣間見ることができました。
印象に残ったのは、作家になるためには読書を重ね、プライドを捨てること。社会人経験の中でも、特にコミュニケーション能力が必要とされること。質は量から生まれること、などです。
当たり前のことですが、ビジネスパーソンとしての仕事に向き合う真摯さが、作家にも必要なのだなと感じました。
作家志望の方にも、また、作家というジャンルのお仕事を知りたい方にもおすすめな一冊でした。 -
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日本全国で戦乱が吹き荒れた戦国時代。四十七都道府県ゆかりの戦国武将を一人ピックアップして掌編にするという試みの「戦国武将伝」、東日本編です。
北海道の蠣崎慶広編のように、ピックアップされていても物語の主人公は違う、と言うこともありますので、武将個人よりも彼らにまつわるエピソードを拾い上げて、の方がしっくりくるかもしれない。ここは徴兵されたアイヌのお話になってます。
ミステリー仕立ての今川義元編や、好敵手であることを押し出した武田信玄と上杉謙信の両編は気持ちの良いものでした。武田・上杉の関係性は「推し」出したと言ってもいいかもしれない。
秋田の矢島満安編。大勢に飲み込まれた豪傑の物語で、己の武勇だけでは抗しようもない無力さもあるのだけど、それでも抗い続ける覚悟の強さが見えて好きです。小国であるゆえの戦乱の生き抜き方でいうと、敗北なので失敗例ですが、最後までもがいてもがき続ける姿はいいものです。
青森の津軽為信や栃木の宇都宮国綱の、乾坤一擲の大勝負に賭けて勝ち取ったと言うのもいいですけどね。
やはり、覚悟と決意で生き抜く姿というものには、後世の評価の勝敗問わず、心ひかれるものです。 -
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西国の各都道府県に所縁の武将を描く短編。どれも読みやすいが面白さには濃淡あり。色々と構成が練られているが、ややひねりすぎと感じる話も少なくない。
好きなのは「謀聖の贄」と「夢はあれども」。前者は小国人の梅津主殿助視点から尼子経久の天性の才を浮かび上がらせる構成が見事。井の中の蛙の滑稽さと、自惚れは身を滅ぼす教訓が詰まっており、短編としての完成度が高い。後者は亀井茲矩の出世を、夢というキーワードを軸に描く。島根に生まれ海を隔てた先に外国があったからこそ育まれた海外への憧れ。そのためには武士の誇りよりも実利を取り、生き延びる必要があるという思いに共感できる。“琉球守”という史実を落ちに組み込む構成も良い。