宇佐美まことのレビュー一覧
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「憎しみ」を抱え続けた人が、それを復讐というかたちで遂げる人にいだく気持ち、というものについて考えさせられた。
これは、誰かを本気で「殺したい」と願うほど憎んだ経験がある人には、共感できる物語かもしれない。
自分のなかにある「憎しみ」を、見て見ぬふりをしてやり過ごして、なんとか日々の生活を送るのが普通のやり方。思うままにそれを発散させる犯罪者とは違うんだ、と思ってはいるけれど、やっぱりそれは紙一重なのだろう。だから多くの人は、犯罪者の手記やノンフィクションに惹かれるのだ。
作中、戦後の混乱で、女性が置かれた悲惨な境遇が赤裸々に描写されていて、胸が苦しくなった。最近、こういうの読む機会が多いな……。たまたまなのか、こういう描写の作品が増えてきているのかわからないけど……。しんどくて、途中いったん他の本を読みたくなってしまう心の弱い人間です……。 -
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第一次世界大戦後のイギリスで、オーストリア人の不遇のピアニストのためにドイツ人ピアノ技師が持てる技術と最高の素材で作り上げた至高のピアノ「ニーマイヤー」が辿った数奇な運命と、現代の日本人ピアニスト伸太の栄光・挫折・再生が交互に語られる物語でした。
音楽と小説ってなんでこんなに相性が良いんだろう。音楽的素養ゼロの人間なのですが、文章からピアノの美しい旋律が聴こえてくるようで、うっとりしました。
ピアニストやピアノ調律師のピアノにかける情熱にも胸が熱くなりました。ピアノってこんなにも人の心を揺さぶったり癒したりする力があるんだなぁ。
物語としてとても面白かったし、伸太が挫折から立ち直る様子にはとても励まされました。時に、全てを失ったように思えて絶望しても、恥や見栄といった余計な感情を捨てれば自分にできることは沢山あるのだということに改めて気付かされました。
ただ、悲劇的な運命を辿る華族のお嬢様・隋子と封建的な田舎の素封家の娘・須美が、主体性がなく運命に翻弄された弱々しい存在として描かれていて、もうちょっとなんとかならなかったのかなぁ…と。どちらも、女性が自由に生きることができない時代と環境にあるのは分かるのですが。隋子は最後は自分のやりたいことを貫いたのですが、須美は何を考えていたのかも全く分からず、ただ流されただけのように見えてしまって…。悲劇的な運命を背負わせるための物語の駒として描かれているようでモヤモヤしました。 -
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ネタバレ戦後の連続殺人犯北川フサのルポを書くにあたって深く調べていくフリーライターの海老原誠。
なぜ5人もの命を奪ったのか。その根底にあるのは。
戦後の話ということで、とても苦しい回想でした。家族を失った子どもたちにとっては、戦中より戦後の方がずっと辛い世の中だったという事は恥ずかしながら初めて知りました。
北川フサ、靖雄、誠、道上、清子。すべてに共通するのは「強い憎しみ」
憎しみに抗わなかったフサに惹きつけられてゆく。
結局大垣氏は全てを語らなかったけれど、最後は良い終わり方だったと思う。
中々フサという人物に迫れなかったからかモヤモヤ長く感じたのかもしれないけれど、面白かったと思う。 -
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ネタバレ小説版はだしのゲンでした。鬱で会社を辞め一人暮らしで引きこもっているところを、離婚して離れていった父からの電話で松山の祖父が亡くなり実家をやると言われ、幼き頃に何度も遊びに行った父の実家に訪れてみたところ、ひょんなことから5年前のカレンダーを発見した。そのカレンダーには13月が存在したことからこれは何?というのが話の始まり。なぜ父は母と別れ、家族に対して関わり合いを持とうとしなかったのか、父息子の確執は実はこの13月のカレンダーの謎に隠されていたという感じでワクワクしながら読む勧めていくとそこははだしのゲンの世界だった。祖母のルーツを探求していくながら紆余曲折あって自分が実は今も研究がしたくて、その血は祖母の兄の意志であっただとか原爆二世問題だとか実は同じ研究室にいた同期の女の子がほにゃららだったとかその奇跡があーってはなったが、13月のカレンダーである意味あったのかがいまだ分からんw
あと同期の女の子のデータはもう少し最初に伏線張ってあったらもう少し劇的だったかなぁと思った。 -
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満州引き揚げは、飢え・鬼畜・陵辱・屍を乗り越えてと…過酷だった。衝撃な内容もあったが、日本は勝ち進んでいる時に同じような加害をしてもいたのだろう。戦勝国・敗戦国どちらにしても地獄。リアルな描写が気になって参考文献を見ると6人の記があった。こういった記録は日本のみならず各国の政治家は読むべきだ。
兵士としての無惨な体験がPTSDとなった夫と、孤児となって無事満州から帰国した益恵の人生。それを辿る旅を俳句仲間と進んでいく。
題名は教会のパイプオルガンから響いたバッハのカンタータ。「統治者が優れている地では、安息と平和が訪れる」と歌い上げる。
最後の娘婿とのくだりはちょっと気に入らなかったので辛めの採点。 -
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風呂に入るまでが面倒くさい。
サッと入ってしまえばすぐに済むのに、毎夜、「あぁ、風呂に入らないとなぁ……」と思いながら、何時間も無駄な時間を過ごしてしまう。
スマホというやつは本当に良くない。テレビも見られるし、ラジオも聴ける。こうして、風呂に入るまでの時間はいくらでも溶けていく。
「5分後にお風呂に入りたくなる!」
そんな謳い文句を見て、縋るような気持ちでこの本を手に取った。
本書には、入浴にまつわる18篇の小説と4篇のエッセイが収録されている。どれも5分もあれば読み切れるような短い作品ばかりだ。
しかし、これを読んだら即座に風呂に入れる、という作品は、残念ながら一篇もなかった。
私とて、正直な話、この本を読んだからといって、簡単に風呂に入れるとは思っていなかった。
ただ、少しでも早く風呂に入る決心ができるようになるためのヒントがないかと思ったのだ。そのヒントは、結局「風呂に入らない」2篇の中にあった。
風呂に入らないと決め、痒みや気持ち悪さといった数多の「受難」を乗り越えて、ついには「思い込み」の力で、風呂に入らなくても「入浴の効用」を得られるようになったと主張する青年を描いた、さや香新山作の『プラシーボ!』。
風呂に入らなくても身体を完璧に洗浄する技術が開発された近未来で、人類が入浴という苦難から解放され、ついには入浴が法律で禁止される世界を描いた、日野瑛太郎の『そして誰も風呂に入らなくなった』。
人間というのは天邪鬼なもので、他人から「やれ」と言われればやりたくなくなり、「やるな」と言われれば、やりたくなるものだ。
同じように、風呂に入ることを固く禁じられたなら、私は今すぐ風呂に入りたくて仕方なくなるのかもしれない。 -
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本書は、お風呂にまつわる22篇の短編小説・エッセイ((小説18篇、エッセイ4篇))からなるアンソロジーです。
タイトルに「5分後に」とあるように、1篇5分ほどで読み終えられます。
大変恥ずかしながら、わたしは風呂キャンセル界隈のひとりです。
疲れて帰ってくると、そのまま寝落ちてしまいます。
ですが、疲れた時こそお風呂に入らなくてはいけないという義務感は持っています。
なので、お風呂に入るモチベーションが湧かない日に1篇ずつ読んで、これで入浴できれば最高だと思って購入しました。
が、結論から申し上げますと、本書のおかげでお風呂に入れるようになったということはありませんでした。
お風呂に入るモチベーションが湧かないくらい疲れている日は、小説にも手が伸びなかったからです。
わたしが風呂キャンセル勢なのは、モチベーションの問題ではなく、お風呂に入る体力がないからだとわかりました。
このことを明らかにしてくれたのは本書の功績です。笑
というわけでわたしは体力のある日にまとめ読みしましたが、たぶん編者のかたは、お風呂に入るモチベーションが湧かない日に1篇ずつ読むことを想定しているのだと思います。
以下、感想です。
5分で読める短編小説と言えば星新一作品ですが、本書には星新一作品ほどウィットに富んだ小説は見当たらないかなと思いました。
宇宙が舞台になっているなど、設定が奇抜な作品はいくつかあったのですが。
(ちなみに、宇宙が舞台の小説は3篇もあります。宇宙というお風呂に入りづらい環境を描くことで、逆説的にお風呂の素晴らしさを強調する意図でしょうか。)
どちらかというと、平凡な1日が描かれていて特に衝撃的なオチがあるわけでもない作品のほうが印象に残りました。
特に日向夏『回復の泉』なんかは、RPG風の軽妙な筆致が良かったですね。
「5分後にお風呂に入りたくなる!」の謳い文句からは、お風呂の素晴らしさを称賛する作品ばかり並んでいそうな印象を受けますが、お風呂に入らなくてもよくなったと主張する人を描く作品、更には「人類を風呂から解放する」と高らかに宣言する作品まであるのも非常に面白いところです。
(ネタバレ防止のために、具体的な作品名を挙げるのは避けます。)
本書が風呂キャンセル界隈の人のモチベに効くかはわかりませんが、お風呂というテーマがここまで多様な作品を生むことに感動できるのは間違いないです。 -
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ネタバレ【あらすじ】
くたくたに疲れて帰った日、ショート動画でだらだら時間を溶かしてしまう日。
「お風呂に入らなきゃ」と頭ではわかっているのに、入る覚悟が決まらない!
あなたに効く小説、ここにあります。
『わたしは本当にばかだ。あの会社を蹴ってしまうだなんて。
けれど、わたしが何度も頭を下げて選んでいただくなんておかしい。いま、こちらが未来を選んでいるはずだった。もっと気高くいなければ。わたしは落ち込んで醬薇風呂に入るような女なのだから。』
【個人的な感想】
お風呂に入りたい!とはならなかったが、色々な方の作品が読めて面白かった。
特に、この2作品が好きだった。
・無力 小原晩
・薔薇風呂の日々 くどうれいん -
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この物語の舞台となるのは、平家落人伝説も残る四国山中の集落。
そこには「入らずの森」があり、過去の二つの殺人が絡んでいる。
この設定からすれば、土着の呪物かなと思いますが、驚いたことに参考文献には南方熊楠関連のものが連なります。
私は、岩井圭也さんの『われは熊楠』しか読んでおらず、熊楠についての知識も小説止まり。
宇佐美さんは、どうやってここにたどり着いたのでしょうか。
熊楠から「粘菌」だったのか、あるいは粘菌から熊楠だったのか。
写真で見るだけでも、色も形も実に多彩な粘菌類。植物と生物の境界にいるような、不思議な存在です。
人の手が入っていない森の中には、まだまだ私たちの知らないものが潜んでいる。
そんなことも、あるのかもしれない……と思わせるお話でした。