宇佐美まことのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまず、民俗的・伝奇的な要素が前面に押し出された舞台設定が私の好みで、最初から嬉しくなる。
これは「パラサイト・イヴ」(瀬名秀明 著)や「天使の囀り」(貴志祐介 著)などのように、創作された科学的根拠に裏打ちされたSFミステリー、あるいはホラーなのかな…と思いながらページを繰っていったが、どうやらそこまで厳然と定めているわけではないようで、さらには過疎地の農村移住につきまとう諸問題、愛に飢えたティーンエイジャーの苦悩、老親の看取りを巡る家族の軋轢、挫折を味わったスポーツエリートの再生に至る道筋…等々、現代の日本社会が抱える様々な歪みや課題までがてんこ盛りに詰め込まれているではないか。
それが確かな技術と筆力のおかげで、特にとっ散らかっている感もなく、スムーズに読み進められた。
人が触れられたくない恥部というか、記憶の底に封印してしまいたい瑕疵のようなものにこうもズバズバ斬り込まれると、もう拒否ではなく感心するしかない。
肝心要の粘菌にまつわるくだりは、やや説明が硬く回りくどいきらいがあるので少しもったいなく感じ、付け足しのようなエピローグもいかにも凡庸な印象で、そこは残念だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいや~よくできてる作品だ。
訳あって四国の山あいの中学校で教師をしている金沢圭介、会社勤めが嫌になり脱サラして夫婦で農家を営む松岡隆夫、認知症と心臓を患い埼玉の病院で最期の時を迎えようとしている菅田ルリ子。それぞれの話が並行して語られる。
圭介の中学校の校歌にまつわる過去が明らかになり、何の繋がりもなかった三つのエピソードが一つに繋がったとき、思わず鳥肌が立った。
平家の落人伝説、粘菌、南方熊楠、意図的に消された校歌の3番の歌詞、天井裏からしか見えない部屋にいる少女・・・
ぬり、にゅるり、とぷん、ぴゅちょ、ぎゅるあらゆる気持ち悪い擬音語を駆使して表現される「それ」の不気味さ。
自分が「それ」に取り込まれていくような心もとなさを感じながら、読む手が止まらない。
人間の強い負のエネルギーを養分にして巨大に育つ「それ」は深い森の中で今もじっと機会を狙って待っているのか・・・あ~怖かったよ~。でも最高に面白かった。 -
Posted by ブクログ
「憎しみ」を抱え続けた人が、それを復讐というかたちで遂げる人にいだく気持ち、というものについて考えさせられた。
これは、誰かを本気で「殺したい」と願うほど憎んだ経験がある人には、共感できる物語かもしれない。
自分のなかにある「憎しみ」を、見て見ぬふりをしてやり過ごして、なんとか日々の生活を送るのが普通のやり方。思うままにそれを発散させる犯罪者とは違うんだ、と思ってはいるけれど、やっぱりそれは紙一重なのだろう。だから多くの人は、犯罪者の手記やノンフィクションに惹かれるのだ。
作中、戦後の混乱で、女性が置かれた悲惨な境遇が赤裸々に描写されていて、胸が苦しくなった。最近、こういうの読む機会が多いな……。たまたまなのか、こういう描写の作品が増えてきているのかわからないけど……。しんどくて、途中いったん他の本を読みたくなってしまう心の弱い人間です……。 -
Posted by ブクログ
第一次世界大戦後のイギリスで、オーストリア人の不遇のピアニストのためにドイツ人ピアノ技師が持てる技術と最高の素材で作り上げた至高のピアノ「ニーマイヤー」が辿った数奇な運命と、現代の日本人ピアニスト伸太の栄光・挫折・再生が交互に語られる物語でした。
音楽と小説ってなんでこんなに相性が良いんだろう。音楽的素養ゼロの人間なのですが、文章からピアノの美しい旋律が聴こえてくるようで、うっとりしました。
ピアニストやピアノ調律師のピアノにかける情熱にも胸が熱くなりました。ピアノってこんなにも人の心を揺さぶったり癒したりする力があるんだなぁ。
物語としてとても面白かったし、伸太が挫折から立ち直る様子にはとても励まされました。時に、全てを失ったように思えて絶望しても、恥や見栄といった余計な感情を捨てれば自分にできることは沢山あるのだということに改めて気付かされました。
ただ、悲劇的な運命を辿る華族のお嬢様・隋子と封建的な田舎の素封家の娘・須美が、主体性がなく運命に翻弄された弱々しい存在として描かれていて、もうちょっとなんとかならなかったのかなぁ…と。どちらも、女性が自由に生きることができない時代と環境にあるのは分かるのですが。隋子は最後は自分のやりたいことを貫いたのですが、須美は何を考えていたのかも全く分からず、ただ流されただけのように見えてしまって…。悲劇的な運命を背負わせるための物語の駒として描かれているようでモヤモヤしました。 -
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ネタバレ戦後の連続殺人犯北川フサのルポを書くにあたって深く調べていくフリーライターの海老原誠。
なぜ5人もの命を奪ったのか。その根底にあるのは。
戦後の話ということで、とても苦しい回想でした。家族を失った子どもたちにとっては、戦中より戦後の方がずっと辛い世の中だったという事は恥ずかしながら初めて知りました。
北川フサ、靖雄、誠、道上、清子。すべてに共通するのは「強い憎しみ」
憎しみに抗わなかったフサに惹きつけられてゆく。
結局大垣氏は全てを語らなかったけれど、最後は良い終わり方だったと思う。
中々フサという人物に迫れなかったからかモヤモヤ長く感じたのかもしれないけれど、面白かったと思う。