宇佐美まことのレビュー一覧
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増水で土が抉られた堤防の土中から、謎の骨格標本が発見されたというニュースを見た豊は、数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。だが、それは記事の発掘場所とは異なっていた。
あれは本当に骨格標本だったのか。そんな思いを抱いた豊は、今は都内で勤務する哲平に会いに行くことに。
あの日、俺たちは本当は何を埋めたんだろう。
横暴な教師へのいたずらのため、骨格標本を隠して埋めた小学生時代の思い出。それから数十年後、目にしたニュースをきっかけにその日の真実を明かそうとするミステリー小説です。
小学生って、大人からみると本当に子どもに見えるけど、時々大人もハッとするようなことを -
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ふとした弾みで事件に巻き込まれ逃避行を余儀なくされた、地味で平凡な主婦の自立と覚醒を描いたヒューマンサスペンス。
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川田沙代子は1人、おんぼろのラパンを闇雲に走らせている。以前から続いていた夫の暴言に耐えきれなくなり、思わず家を飛び出してきたため行く宛はない。
気づけば見知らぬ場所に来ていた。どうやら歓楽街らしい。沙代子は街の片隅にある小さな公園沿いに車を寄せて停止した。
ため息をつきふと助手席に置いたバッグに目をやる。発作的な家出ということもあり、持って出たのはこの普段使いのショルダーバッグのみ。
バッグの中にあるのは大して入っていない財布と運転免許証、ハン -
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タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。
貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして、絶妙のバランス加減だと感じました。
「私」という一人称展開で、「私」が誰なのかミスリードに混乱するなど、多くの伏線の張り巡らせ方と回収法も見事ですし、重いけれども先の見えない展開にも引き込まれました。
3部構成で時代・場所が変遷し、各章題『武蔵野陰影』『筑豊挽歌』『伊豆溟海』も秀逸です。
宇佐美さんは、貧困 -
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気弱で家庭で虐げられている専業主婦の沙代子は、衝動的に家を飛び出す。そこで出会ったキャバクラ嬢の紫苑に指示されるまま行動を起こしたところ、それはとある誘拐事件の身代金を奪い取るというとんでもない行為だった。下手すれば暴力団や、それよりも恐ろしい犯罪集団「鬼炎」を敵に回すという事態に巻き込まれ、沙代子は徐々に自分にできることを考え始める。ハラハラドキドキ、そしてすっきりすること請け合いのサスペンスです。
容姿が冴えず鈍重で、気が弱く思ったことも言えない沙代子の取り柄は料理の腕だけ。とはいえ、ただの料理上手でもないんですよね。幼少期に身に着けた圧倒的な知識を武器に難局を乗り越えていくさまがとにかく -
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今までの宇佐美まことさんの雰囲気とは、ガラッと雰囲気違うなぁ…なんてジャケットからして思ったわけで、ちょっと興味も湧き読み始めた途端…。
ノンストップでの逃走劇をノンストップで読んでしまった!(ノンストップが二回)
川田沙代子は、夫の暴言に耐えきれずに家を飛び出しピンク色のラパンに飛び乗り、あてもなく走っている最中にいきなり飛び出してきたキャバクラ嬢の紫苑を轢きそうになる。(飛び出すが三回)
鈍くてとろいおばさんと呼ばれながら紫苑の言いなりに動いているうちに誘拐犯になっていて…。
地味で平凡な主婦だけど、逃げてるあいだも薬草やストック食材だけでも充分に美味しい料理を作る沙代子。
行動力 -
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滅びゆく者をテーマにした本は何故かそそられる。背景に流れている雰囲気が好きで冒頭から引き込まれた。昭和初期、限られた時代を生きたある華族の哀しみと、異能の作庭師の熱情が静かに呼応する「美しい庭」の物語だった。
当主である房興は家というものに取り込まれ、個を埋没させている。経済的には恵まれてはいたが、自分らしい豊かな人生を生きてきたわけではなかった。才能ある純朴な新進気鋭の庭師・溝延兵衛に庭園を造ってもらうことになり、彼の生き様や、彼の作品である庭に寄せる思いを聞き、房興と彼の妻・韶子は自分自身を見つめ直す。
作庭師が雇い主の吉田房興に話す
「決められた道を行くことは簡単でございます。既にある -
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『清閒庭(せいけんてい)』は昭和初期に天才庭師・溝延兵衛(みぞのべ ひょうえ)が、時の公爵・吉田房興(よしだ ふさおき)の依頼を受け、池を埋め立てて作り上げた広大な枯山水である。
浜辺に打ち寄せる波の音が聞こえてくる心地がする。
この庭に魅せられたのは現代の建築設計士・高桑透(たかくわ とおる)。
彼も知らない、清閒庭と吉田家にまつわる秘められた物語を、公爵夫人・韶子(あきこ)付きの女中トミが語る。
滅びの予感が漂う。
「華族」といえば「斜陽」・・・と条件反射のように連想してしまう。
これも一つの、沈みゆく陽の物語だと思う。
庭づくりに熱中し、やがては取り憑かれたかのようにのめり込んでいく・ -
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ネタバレ宇佐美まこと作品2冊目
前回読んだ『羊は安らかに草を食み』は、老婆3人が主人公だったが・・・
今回 謎を解き明かすのは中年のおやじ3人
松山の小さな町の古い銭湯仲間 新聞記者の弘之、銭湯店主の邦明、骨董店の店主富夫。
事件は銭湯の蒔き釜が老朽化をして、融資を銀行に頼むことから始まる。
担当の銀行員 丸岡はまじめな好青年で手続きを進めてくれていたのだが・・・
その丸岡が大雨の日 不審な死を遂げる。
その真相を暴くため立ち上がった3人
事件は大きな裏組織や代議士・病院が関わっていた。
登場人物たちのキャラがたっていて、会話のテンポも心地よく 一緒になって謎解きをしてるかのように引き込まれていく