宇佐美まことのレビュー一覧
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今さらながら差別について考えさせられました。差別とは、絶対あってはならないもの。そんなことは誰もが自分の中の常識にきっとあると思う。でも、最近だったらコロナの時どうでしたか?今ではコロナに罹った人を偏見の目で見ることはないと思いますが、令和2年の頃だったらどうだろう?令和元年だったら?きっと自分が罹ったとしたら人に言えなかったんじゃないでしょうか?
それが原爆だとしたら。
この物語は原爆の被爆者がいつまでも抱えている問題を浮き彫りにしています。そもそも差別って、差別される側は何も悪くないことがほとんどだと思います。例えば肌の色であったり、貧困であったり、差別されるべきではないのに差別さ -
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「原子爆弾が投下されて、十四万人もの命が失われた」という数字では到底表せない、一人一人の物語に想いを馳せる。
それぞれに名前があり、それぞれが悲惨な最期を迎えた事実に胸が締め付けられる。
私の祖母も被爆2日目に広島市内に姉妹を探しに行った“入市被爆者“だったけど、生きている間に原爆の話を聞くことはついぞなかった。
被爆者への差別や無理解は凄まじく、人間の弱さ、醜さを思い知る術となる。
テーマは重く、原爆の悲惨さを知ることのなかった人が読む分には良作なんだろうけど、13月にまつわるファンタジー要素や最後の奇跡的な部分が私にはちょっとはまらなかったのが残念。 -
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認知症を患った友と一緒に
彼女がこれまで暮らした土地を訪れ、
過去を紐解く老女三人の旅。
自分自身も老いを意識し始めているため
この先どう生きて行くか、ということを最近よく考える。
この本を読んで
何か明確な答えが出たわけじゃないけど、
読んで良かったなと思える作品だった。
そして
戦争を扱った作品は出来るだけ避けてきたけれど…
読むのがつらくてもやっぱり
ここで語られたような悲惨な体験を知っておかねばと思った。
知ることで一層、戦争がどれほど無意味で
実質的な痛みと共に、心にも深い傷を負わせる行為であるかを改めて強く思った。
ところでこの本を読むまで
作者の宇佐美まことさんを男性だと思 -
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1840年、五百石の弁才船が難破し、なんとかボニン島(小笠原諸島)に流れついた。そこで水主達が出会ったのは、アメリカ捕鯨船団の補給基地となった島で暮らす西洋人や彼らと共に移ってきた南海諸島の人達だった。そんな小笠原諸島の歴史を背景にしたミステリーです。
厳格な音楽家一家に生まれ、チェロの才能を持った少年は、有る事件をきっかけにチェロの音が聞こえなくなる。一家からはみ出し者扱いの父親(娘婿・フリーカメラマン)は彼を連れて小笠原諸島に向かう。同じ船便には、祖父が残したオガサワラグワの木製品を手に、自らのルーツを探す中年男が乗っていた。
色々、我が家に関係がある話です。
わが家は江戸から大正時代にか -
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小さな花屋“フラワーショップ橘”を中心に花をテーマにゆる〜く繋がる6篇の連作ミステリ。
水溜まりの上に倒れた遺体のそばにあった萎れたガーベラ「ガーベラの死」
切り落とされた満開の花穂と上がり框の方を向いた靴「馬酔木の家」
ある一点に収斂していく運命の行先「クレイジーキルト」
遺体についた花粉と蜜蜂の働き「ミカン山の冒険」
尻尾の曲がった猫と火事「弦楽死重奏」
“家族写真”の真実と写真が繋いだ縁「家族写真」
事件の謎解き的な作品が四つと、ちょっといい話的な作品が二つ。ミステリとしては短いながら上手くまとまっていて、ガーベラ、馬酔木、ミカンと謎解きの鍵として花が効果的に使われている。花屋の女 -
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【2025年115冊目】
女を犯して殺す――夢を見るのだ。夢だとわかっているのに、なぜか強い現実感を伴う。だが、夢で見たのと同様の事件が起こっていることがわかり、僕は困惑する。テレビに映っている犯人と思われる男の似顔絵は僕と瓜二つの顔をしていて――表題作を含む12編の短編集。
短編集より長編の方が好きだったのですが、最近は短い時間で集中して読むことのできるので、短編集も好きになってきました。デビュー作である「るんびにの子供」も楽しんで読んだ記憶がありますが、今作も楽しんで読めました。なにせ、表題作からして、かなりセンセーショナルなあらすじだったので思わず手にしてしまいました。
「赤い薊」「 -
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初めて読む作家さん。
みなさんのレビューで興味を持って読んでみた。
主要人物は50代で刑事と結婚した、花屋を営む志奈子。
第一話「ガーベラの死」では、友人の叔母の死の真相を、現場に残されていた不審なガーベラから解き明かす。
この話は死の真相よりも、志奈子の親友の性格や態度の方が気になった。よく言えば前向きだが…。
その後も志奈子が探偵役として話が進むのかと思っていたら、視点は夫で刑事の昇司、昇司の同僚の鑑識官、志奈子の店で働くアルバイト店員ライ、と次々変わっていく。彼らが全くの脇役として登場する話もある。
謎解きのカギも植物が多いが、エッセンス程度のものもある。
人が亡くなった事件ばかり -
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宇佐美まこと作品3冊目
話の中心となるのは、花屋を営む志奈子とその夫 刑事の横山昇司
この夫婦の周囲に起こる事件の数々を集めた短編集
お得意さんの老婦人の死因は何なのか。
身障の親に寄生する息子が殺害されたのだが 犯人は。
などなど
事件はどれも迷宮入り寸前なのだが、
真犯人に近づくヒントを身近な草花が教えてくれる。
殺人事件なので 殺伐とはしているのだが、事件解決の糸口が草花だったり、登場人物の人となりが穏やかで 生きてきた人生を感じさせ、ストーリ展開が上手い。
読者にも考える時間を持たせつつ、その上をいく事件解決も気持ちよい。
「家族写真」まで読んで思ったのだが、この感じ・・・
ド -
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ネタバレ角川ホラー文庫ベストセレクションの第二弾。今回も8名の作家の8作品だった。特に印象に残ったのは以下の3作品。
「骨」小松左京
なにかに突き動かされるように庭を掘り続ける主人公の姿が最後に悲しみを誘った。何かを思い出しかけているという描写がよかった。
「或るはぐれ者の死」平山夢明
こんなにも悲しい話だとは思わなかった。自分だけでも死者を埋葬しようとしたその清らかな心は悪意に踏み躙られる。
「人獣細工」小林泰三
この作品が最も衝撃だった。自分と父の秘密を探らずにはいられない、そのはやる気持ちが痛いほど伝わってくる。凄まじいラストだった。