宇佐美まことのレビュー一覧
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『清閒庭(せいけんてい)』は昭和初期に天才庭師・溝延兵衛(みぞのべ ひょうえ)が、時の公爵・吉田房興(よしだ ふさおき)の依頼を受け、池を埋め立てて作り上げた広大な枯山水である。
浜辺に打ち寄せる波の音が聞こえてくる心地がする。
この庭に魅せられたのは現代の建築設計士・高桑透(たかくわ とおる)。
彼も知らない、清閒庭と吉田家にまつわる秘められた物語を、公爵夫人・韶子(あきこ)付きの女中トミが語る。
滅びの予感が漂う。
「華族」といえば「斜陽」・・・と条件反射のように連想してしまう。
これも一つの、沈みゆく陽の物語だと思う。
庭づくりに熱中し、やがては取り憑かれたかのようにのめり込んでいく・当主の房興。
莫大な財と高貴な家柄を誇る吉田家は、次々と不幸な事件に見舞われる。
しかし、不幸は偶然ではなく、大木を中から食い荒らして死に至らしめんとする害虫のような輩が存在したのだ。
庭師と当主夫人の清らかな魂のふれ合いが、広大な枯山水の前庭ではなく、茶室の露地で描かれるのは対照的で奥ゆかしい。
人が死んでも庭は残る。
高桑の存在は、過去と現在を繋ぐために必要だったのだろう。
しかし、ドローンの使用の是非です。
自分の作った庭を鳥になって上から見てみたいと兵衛は言っていた。
それは不可能だと思ったからこそ、秘めた思いを作庭に込めたのだろう。
まさか未来の技術で上から覗かれるとは!!
時代の流れには抗えないのであった。
しかし、高桑にとっては、庭を守り続けるために必要なことだったのだろう。
庭がそこにある限り、房興の、韶子の、そして兵衛の思いもひっそりと生き続けていくのである。 -
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ネタバレ宇佐美まこと作品2冊目
前回読んだ『羊は安らかに草を食み』は、老婆3人が主人公だったが・・・
今回 謎を解き明かすのは中年のおやじ3人
松山の小さな町の古い銭湯仲間 新聞記者の弘之、銭湯店主の邦明、骨董店の店主富夫。
事件は銭湯の蒔き釜が老朽化をして、融資を銀行に頼むことから始まる。
担当の銀行員 丸岡はまじめな好青年で手続きを進めてくれていたのだが・・・
その丸岡が大雨の日 不審な死を遂げる。
その真相を暴くため立ち上がった3人
事件は大きな裏組織や代議士・病院が関わっていた。
登場人物たちのキャラがたっていて、会話のテンポも心地よく 一緒になって謎解きをしてるかのように引き込まれていく。
前作でも感じたが この作家さんは登場人物それぞれが「抱えている悩みや気持ち」を話に乗せていくのが上手い。
そして (あっ アレかも。)と読者にも謎解きをさせ、(そうきたか)とストンと落ちるどんでん返しが小気味いい。
この秋 おすすめの1冊です。 -
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ラプンツェルと云ったらディズニーですよね。でも、元々はグリム童話! 知りませんでした‥。
本書は、ディズニーとは似ても似つかず、余りにも悲惨で虐げられた人たちの物語で、終盤まで続く救いの無さに、切なく辛い内容でした。
舞台となる多摩川市は、開発の進む北部地域と荒んだ臨海部の南部地域に分かれ、この南部を地元の成金が建てた展望塔が見下ろしているのでした。
育児放棄された5歳男児、性的虐待を受ける17歳少女、その少女を救う少年、取り憑かれたように不妊治療をする夫婦の危機、業務に忙殺され疲弊状態の児童相談所職員‥。これらの人々の人生が交差し重なっていきます。
「ラプンツェルが、塔の上から金色の髪を垂らして地獄から救ってくれる」‥これが少女の心の支えであり、他の恵まれない子への励ましに繋がっていて、とても切ないです。
それでも、展望塔の下から逃れられない、ではなく、そんな中で模索する憧れや勇気が、きっと道を切り拓いていく道筋を示してくれた気がします。
声なき声に気付く人、ちょっとしたきっかけや手助けをする人は誰なんでしょう? 赤の他人でもいいような気がします。誰かが気付き誰かに繋げば、子どもは荒波を渡って行ける術を身に付けられるのではないでしょうか?
ほんの少しでもと救いを与え、決して生きることを諦めてはいけない、という筆者の願いが伝わる物語でした。 -
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昭和初期、華族である吉田家の庭にある池から白骨死体が見つかった。過去の令嬢の醜聞に関わる噂が飛び交う中、池は埋められ壮大な枯山水の庭が作られることになる。作庭師の溝延兵衛が手がけるその庭の工程が進む中、庭づくりに魅入られた吉田家の当主夫妻は徐々に変化を見せていく。ミステリ的な部分もあるけれど、それだけではない魅力に満ちた作品です。
池から見つかった白骨死体に関わる謎がメインのミステリかと思っていましたが。主役は庭と作庭師ですね。もちろんミステリとしての部分にもきっちりと驚かされ、納得させられましたが。庭に魅せられ魅入られる人たちの物語を読むうちに、こちらも引き込まれていきました。そしてこの時代の、華族の儚い栄華が虚しく切なく感じられます。さらにそれを理解していた房興の姿が悲しくもありました。華族の先行きを見据えながらも、華族としての体面を保ち生きることしかできないんですよねこの時代では。
一方で確とした自分を持つようになった夫人の姿も印象的です。こちらもまたこの時代に、置かれた立場で生きるしかないという悲しさがありながらも、凛とした佇まいが眩しい。作庭師との絆が単なる恋愛などというものでないのもまた清々しいです。 -
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スカッとする一冊。人生の下り坂にいるオヤジたちが一念発起!ただの逆転劇じゃなく、しっかりとミステリー要素もあり、どんでん返しも用意されていて、読み応え十分でした。
冒頭である銀行員が殺されます。その銀行員の恋人という女性がオヤジたちの集まるみなと湯にやってきて、彼は殺されたのだと言い、気の良いオヤジたちは、彼女のため、事の真相を探ろうと動き出します。
その真相は、巨大な悪が潜んでいて、それが発覚した頃には彼女がいなくなり、殺された銀行員の恋人ではなかったことがわかり・・・。
色んな謎が絡んでいて最初から最後まで楽しく読めました。世の中の中年オヤジたちにエールと檄を飛ばしてくれる一冊。読後感もスッキリ! -
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ネタバレっちゅうわけで、みんみん&おびーの腐女子え女子?コンビおすすめの『愚者の毒』です(また余計なこと言う)
毎回言ってますが、相変わらず驚愕の抽斗の多さですね
しかも開け方が的確
今野敏さんなんかもめちゃくちゃ抽斗多いですけど「そこ開けなくていいのに」(また余計なこと言う)
よっけいな〜ものなど〜なっいっよね〜♪
(遂に余計こと歌い出す)
えー、どうしよ
方言について語るかタイトル『愚者の毒』について語るか
うーん、ここは飛鳥に敬意を表して愚者の方で!(はい余計)
いろんな説明すっ飛ばして先生が達也に言ったセリフね
「『命を奪う毒と命を救う薬との違いはほんのわずかである』ってね。人が普段気にとめもしない両性類、バクテリア、昆虫、植物、爬虫類なんかが護身用に身に付けた毒素が、人間を救う夢の薬に生まれ変わるんですよ。素晴らしいでしょう?小さいから役に立たないなんて思ってはいけません。この世に存在するすべてのものは意味を持って生まれてきてるんですからね」
「身の内に毒をお持ちなさい。中途半端な賢者にならないで。自分の考えに従って生きる愚者こそ、その毒を有用なものに転じることができるのです。まさに愚者の毒ですよ」
で、ラストです
達也が持っている知識や技術(毒)を、先生の言いつけを守って有用なもの(薬)に転じたわけですよね
だから彼は最後に「愚者の毒」と言ったわけです
誰にとって有用だったのか?もちろん薬を飲む人にとってです、普通の人にとっては毒だけどその人にとっては薬(救い)だったのではないでしようか
そしてもっと言えばその毒は達也の手から渡されなければ薬になり得なかったのではないか
だから最後に彼は現れたのではないか
そして物語はこんなことを問うているんではないでしょうか
果たして勇次と希美は中途半端な賢者だったのか、それとも身の内に毒を持った愚者だったのか
そしてあなたは? -
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熟年を迎え、人生に疲れを感じ始めた男たちが義憤に駆られて、不正を働く町の権利者たちに立ち向かうサスペンスミステリー。
◇
宮武弘之。東洋新報松山支局記者。
東京本局での出世争いに敗れ、故郷の松山でルーティンワークをこなしながら定年退職を待つのみ。息子は独立して家を出て行き、妻からは熟年離婚を申し渡され、孤独な生活を送っている。
戸田邦明。町で唯一営業を続けている銭湯みなと湯の主人。
66歳になり、みなと湯の古い薪釜同様くたびれてきた。老妻と2人、できるところまでがんばろうとは思うが、風呂釜の交換時期に来ており、その費用に頭を悩ませる毎日だ。
小松富夫。邦明の幼なじみで怪しげな骨董品屋を営む。
家では自由気ままな父親と気が強く偉そうな妻との間で気を遣い、心の休まるときがない。そんな自分を情けないと感じながらも、みなと湯で邦明たちとたわいない話をするのが唯一の気晴らしだ。
定本吾郎。みなと湯の釜焚き。
元は暴力団員だったが、お人好しで悪事に向いておらず組をお払い箱になった。流れ着いた松山で知り合った邦明に雇ってもらった恩は忘れていない。
みなと湯が休みの日には趣味の手品を活かして、ボランティアで施設を回るのが楽しみだ。
巽達郎。かつて暴力団で定本吾郎の後輩だった。取引でヘマをして窮地に陥ったところを吾郎に救ってもらったことを恩義に感じている。現在は大阪で特殊詐欺グループに属しているが、末端扱いの人生に嫌気が差している。
こんなしょぼくれた男たちが侠気を感じて立ち上がった。きっかけは、みなと湯の銀行融資を担当していた瀬戸内銀行三ツ浦支店の行員、丸岡将麿が松山市内の川で溺死体で発見されたことだった。そして、丸岡が太鼓判を押したみなと湯への融資話がなぜか凍結されていたことも判明する。
いつものようにみなと湯に集まり、丸岡の死を悼みつつ融資凍結に憤っていた宮武たちのもとを、友永礼美という女性が訪れる。
礼美は丸岡の婚約者で、丸岡は殺されたのであって、その死の裏に松山西部病院への不正融資が絡んでいて、丸岡はその不正について調べていたから殺されのだと訴えた。
宮武の記者魂に火が着いた。
一方、邦明に恩義を感じている吾郎も達郎と計って一世一代の大博打に打って出ようとしていた。
* * * * *
巨悪に立ち向かうのはしょぼくれ男たち。ドン・キホーテに勝ち目は薄いように思うけれど、作戦実行に適した役者が揃っていたのです。
新聞記者の宮武。詐欺師の達郎。そして元暴力団員にして奇術師の吾郎。さらに怪しげなモノを店先に並べる富夫。
物語は正攻法を仕掛ける宮武を中心に描かれていきます。それはそれでおもしろかったですが、やはり時間がかかるし、大勝とはいきません。
大きな見せ場となったのは、物語終盤の吾郎と達郎の活躍です。
達郎が組織から大金を騙し取ります。富夫は邦明のために達郎を輔け、現金の運び役を務めました。ちなみに詐欺のネタになったのは富夫の骨董品屋にあった模造金塊でした。
そして吾郎はというと……。
中盤まではひどくジリジリする流れだっただけに、この最後の展開にはシビれてしまいました。
社会正義だけでは裁けない悪は現然として存在します。そのもどかしさを身にしみて知っているだけに、痛快な読後感が味わえる、しょぼくれ男たちの武勇伝でした。 -
Posted by ブクログ
4.5点くらい。
他の本を借りたついでに借りた本だったが、面白かったー。
不正融資に気がついた銀行員がヤクザといざこざのなかで誤って橋から転落し、溺死してしまうところから始まる。
その不正融資疑惑から病院、政治家、ヤクザ、金融ブローカー絡みの金と利権が入り交じる、大きな展開に。
出世抗争で踏み外し、愛媛に戻ってきた記者の弘之。弘之と同年代の2人と吾郎との銭湯での仲間感もよかった。
銀行員の恋人で無念を晴らしたいと相談してきた女は、恋人ではなかった 果たして誰なのか? 徐々に真実が明らかになっていく描写もテンポよく、飽きなかった。
最後の方に実直な吾郎が詐欺集団から搾取した1億9000万を女性へと渡したという展開や中世の投擲器具で黒幕を殺害してしまったのではないか?と思わせる描写も最後まで面白く読めた作品であった。