あらすじ
何度も同じような夢を見る。それはさまざまな女をいたぶり殺すことでエクスタシーを覚えるという夢だ。その夢はまるで自分が手を下したかのような錯覚に陥るほど、リアルなのだ。ある日、自分が見た夢と同じ殺人事件が起こっていると知る。犯人逮捕のニュースには、自分と同じ顔をした違う名前の男が映っていた―ー。運命の残酷さに翻弄される悲劇を描いた「悪魔の帽子」ほか、植物に取りつかれた男を描いた「花うつけ」、主人公が犬嫌いになった理由があかされる衝撃のラスト「犬嫌い」、著者の出身地である松山が舞台の正統派ゴーストストーリーの「城山界隈奇譚」などの他、文庫化にあたり雑誌掲載原稿を2篇、文庫版書下ろしも収録した充実の十二篇。登場人物たちの心の昏闇や地獄は、自分の中にもあると気付いたとき、すでに著者の術中にはまっている。一度読み始めたら、止められない語り口、一気読み必須の正統派怪談。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
不穏さと怖さがある。この短編集に収められた12編はいずれも一筋縄ではいかない。
見えないはずの現世と幽世の境目が見えて、そこから何かがやって来る様には背筋が凍る。単にグロテスクでおぞましいのとは訳が違う。その異変が起こる要因が、あるいはその背景が明らかになった時、恐怖が起こるのだ。
短い話ばかりなのに一つ一つが印象深いのはどれもバリエーション豊かだからだ。似たり寄ったりの話を量産するタイプの作家ではない。どの話もそれぞれ違い、単純な「怖い」とは一線を画している。味わい深い怖さがここにはある。
Posted by ブクログ
ホラーというよりは、純文学的な空気感を感じた。ホラー的な展開ではあるが、市井の人々の暮らしと悲しみを描きつつエンタメとして昇華させている。
著者の文体によるものなのだろうか、静謐な印象を受けた。
Posted by ブクログ
面白かった。ひとつひとつの短編が、読んだあとしばらく余韻に浸りたくなるようなお話だった。設定はありきたりでも演出が良かったと思う。
特に「みどりの吐息」「湿原の女神」が好きでした
Posted by ブクログ
単行本で読んでいて内容的にはほぼ再読。
新たに収録された三つの短編が、これまたひんやりとした冷たい輝きを放っていて嬉しい。
人の心をざわつかせ、時にゾクリと時にせつなく不意にじんわりと、謎めいた怖さの中に様々な顔を持つ怪談の愉悦にしばし浸った。異彩を放つ「みどりの吐息」、読後の余韻がたまらなく好きな「左利きの鬼」がやはり心に残るなぁ。
ラストを飾る「湿原の女神」の絶望を絶望のままで終わらせないこの上なく爽やかな読後感には改めて驚かされるばかり。
Posted by ブクログ
【2025年115冊目】
女を犯して殺す――夢を見るのだ。夢だとわかっているのに、なぜか強い現実感を伴う。だが、夢で見たのと同様の事件が起こっていることがわかり、僕は困惑する。テレビに映っている犯人と思われる男の似顔絵は僕と瓜二つの顔をしていて――表題作を含む12編の短編集。
短編集より長編の方が好きだったのですが、最近は短い時間で集中して読むことのできるので、短編集も好きになってきました。デビュー作である「るんびにの子供」も楽しんで読んだ記憶がありますが、今作も楽しんで読めました。なにせ、表題作からして、かなりセンセーショナルなあらすじだったので思わず手にしてしまいました。
「赤い薊」「空の旅」「縁切り」らへんが好きでした。おどろおどろしさと結末のやるせなさというか。あとがきを読んで、作者さんのエッセイも読んでみたいなと思いました。なるほど恐怖は、確かに純粋な心の発露ですねぇ。
Posted by ブクログ
一本の話かと思ったら短編集だった。しかし難しいよね、短編って。良質な短編にはなかなか出会えないからこういった感想にもなる。
12篇の物語のうち、ほう!というのは2、3かなー。夏休みのケイカク、犬嫌い、あなたの望み通りのものを、あたりかな。
全体的にキライではないんだけども、文字通り小品感があって消化不良よね。あら、もう終わりなのね、と。
ちょっと不気味なってところで行くと、世にも奇妙な某の原作みたいな感じだ。サクッと読めるので軽く活字慣れしていきたい時には良いのかな。
Posted by ブクログ
強大なモンスターも派手な怪奇現象も出てこないけど、ただひたすらに気味が悪い感じの「静かな怪異」が日常に滑り込んでくるような話が中心。
でも基本的にただ胸糞悪いだけの話はないので読後感は意外とすっきり。
『世にも奇妙な物語』のコメディ話なしバージョン(感動系は多少あるよ!)みたいな感触だった。
同じ状況下なら自分でも普通に抱いてしまいそうなネガティブ感情が話のとっかかりになってるパターンが多くてぞわぞわする……
Posted by ブクログ
短編集とは知らず読んでいましたが,どの作品もスラスラ読めたので楽しめると思います。
自分的には,後編の5作が良かったです。
最後の『湿原の女神』が好きかなぁ。