宇佐美まことのレビュー一覧
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漢の時代の中国から時代を越えて引き継がれる因果の物語。凶悪な禍、不老不死の力を得た男、そして禍を察知し食い止めることができる一組の男女。何度も生れ変わり運命に翻弄される男女はいずれ、巡り合うことができるのか。そして禍に立ち向かうことができるのか。壮大なスケールのファンタジーです。
五つの時代の五つの章で描かれた物語ですが。どの章一つ分でもひとつの物語として読みごたえがたっぷり。その中で生まれ変わった彼もしくは彼女と、彼らを抹殺しようとする不死の男の不穏な対立が実にスリリング。ただし生まれ変わった彼らは一連の事態を把握できていないので、圧倒的に不利なんですよね。実際第四章まではずっと敗北……だけ -
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悲しい話
登場人物が少なく、場所、場面も限られている。ただ、時代が昔の話と現在の話がいったりきたりするので、頭をしっかりしないと、わからなくなる。私は2度読んで、成る程と面白いと思った。登場人物の話は一人を除き、とても温かいのだけど、色んな偶然が重なり、思わぬ方向へ、転換していく。どんでん、どんでん返しみたいな。少し過去の話がうざいところもあるが、一読の価値あり。是非。
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「愚者の毒」が面白かった&WOWOWドラマの「黒鳥の湖」のストーリーが良かったのを受けて宇佐美昨年2冊目。
面白かったです。
久しぶりに終盤まで犯人が誰だか絞りきれませんでした。負け惜しみを言うなら、候補の中にはいましたが。
愚者の毒とはまた全く違った文体、世界観ながらも引き込まれました。
登場人物の数名は、ちょっと現実離れしすぎている設定ではありますが、そこを差し引いても満足度は高め。
この方は親子関係を根底のテーマとされているのでしょうか。
親に愛されずに育った子どもは、作品の中ではやはり幸福とは言えない人生を歩むことになりますが、そうであっても、作中の罪のない子どもに関しては、わず -
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2022.08.27
「愚者の毒」に続き、一気読みしてしまった。愚者の毒も本当に暗い話だったけど、こちらも暗い…とにかく水の底のように登場人物の誰も彼もが境遇が暗くて重い。もうやめて!と叫びたくなるくらい暗い。イケメン御曹司である陽一郎でさえも…。陽一郎って、ガラスの仮面の速水真澄みたいで、唯一の救済者と思ったけど、恋人の殺人を知ってそれでも結婚する陽一郎も相当ヤバイ。
結婚後、母か彩香を殺してほしいと思ってるのかもしれないなと勘繰ってしまうイヤーな終わり方。
こういうのもイヤミスっていうのかしら?
この小説の中に一貫して流れているものは「狂気」だと思う。登場人物全員が心の中に暗くて醜い狂 -
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この作品は四章から成り、章ごとに有名なピアノ曲にちなんだタイトルがつけられています。
第一章「沈める寺」ドビッシー、第二章「水の戯れ」ラヴェル、第三章「雨だれ」ショパン第四章「オンディーヌ」ラヴェル。
そしてこの本のタイトルである『死はすぐそこの影の中』はフランスのピアニスト、アルフレッド・コルトーに命名された「雨だれ」のもうひとつのタイトルです。
そして主人公である一藤麻衣子はピアノの調律師です。
麻衣子は東京の生まれですが5歳で父を亡くし愛媛県の七富利村の村長だった父の兄である伯父の家に母と身を寄せます。
麻衣子は転校生ですが困った時に麻衣子を助けてくれるミツルや司という友だちができま -
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宇佐美まこと『熟れた月』光文社文庫。
全く救いの無い泥々した物語かと思いながら読み進んだのだが、まさかと思うような展開が待ち受けていた。人生とは近道もあれば、遠回りもあるのだと気付かせてくれるような作品だった。
弥生という女性が上司を刺殺する衝撃の場面から物語は始まる。
高校陸上部の阿久津佑太に恋心を抱く高校生の結は佑太の母親から佑太への謎めいた言葉の伝言を頼まれる。そして、冒頭で上司を刺殺した弥生こそ、佑太の母親だったことが明らかになる。何故、彼女は……
場面は変わり、乳癌が全身に転移し、余命半年と宣告された闇金業を営む宮坂マキ子とマキ子に雇われる元銀行員の取り立て屋の乾の物語が描か