宇佐美まことのレビュー一覧
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美しいタイトル「月白(げっぱく)」の持つ意味がもうひとつの「つきしろ」の情景とは違い、とても深くて激しくて冷たい。妻を亡くしたルポライターの誠が戦後混乱期の女殺人鬼フサの人生と事件を追いながら気付く自分の中にも巣食うもの。フサの傍にいたとされる少年、靖男の回想が1番読んでいてつらかった。家族を亡くし飢えと寒さと孤独の寂しさと病と、これでもかと続く過酷な状況に気が塞ぎながらも先が気になり後半夢中で読んだ。フサはなぜ5人もの男を殺害したのか、真実を知ることは叶わなくても3人に通じるものを誠は感じたはず。最後にやっと少し救われた気持ちになれた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ認知症になった高齢女性の読んだ俳句を元に、彼女の人生が語られていく読み応えのある作品だった。
おばぁちゃま達の友情が素敵だなぁという気持ちと、戦後の満州での壮絶な体験にぞっとするのとで気持ちが忙しかった。
たくましく生きる少女ふたりの体験にはらはらした。
終盤に娘のクソ旦那を殺してやろうみたいな展開がいきなり火曜サスペンスっぽいチープさがでて、あまり好きじゃなかった。
しかも益恵さんが手を下すならまだしも、なんでお友達の2人が???という気持ち。
あれだけ大変な日々を共に生き抜いた2人が、人生の終わりにようやく再開して寄りそう。そういうシンプルな終わり方が素敵だったなぁ…
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また読み返したい。でも、読み返したくない。
呼んでいる途中から、相反する感情が頭の中をぐるぐると回っているようだった。
昔の話を紐解いていくタイプのミステリかと思っていたが、実際は人間ならば誰しもが持つ『憎しみ』について戦後と現代を舞台に描かれている話だ。
戦争孤児や女性について描かれているシーンは、読んでいると気分が沈んでいくようだった。それだけリアリティ溢れる描き方がされていた。
学習の一環で戦後について学んできたはずだが、まさかこんなに壮絶だったとは……きっと、現実は想像すらできないほどだったのだろう。
親がいたら…そもそも戦争がなければ……
読みながら何度そう思ったか計り知れな -
Posted by ブクログ
ネタバレ境遇や時代を越える感情のつながり。憎しみという感情と、それを抑える理性。憎しみを持つ人々が選ぶ、それぞれの生き方。
戦後を生きた子供達の生活は想像以上に過酷なものだった。秩序などというものが存在しない世界で、今日を生き抜くためだけに必死に戦う人々。そのためには手段を問わず、他人を切り捨てる人間の惨さがある。戦争は、人の心も何もかもを奪ってしまうのだろう。
戦後の殺人鬼は何を考えたのか。その時代に正しさなんてものはあったのだろうか。全て奪われ、何も持たず、まっとうに生きる術もない人に、誰が善悪を問えるのだろうか。
憎しみという感情が、過去を生きた人間と、今を生きる人間を繋いでいた。全て読んだ後に -
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俳句仲間である友人の富士子とアイが
認知症が進む益江のために
益江の人生を辿る旅に出かけるロードノベル
人生を深掘りするだけのよくある物語かと思ったら
とんでもなかった!
悲惨な戦争体験が絡んだ重たい重たいお話でした
11歳の益江が家族と満洲から引き上げる際
逃げ惑い自分と妹以外は集団自決で亡くなる
赤ん坊の妹は連れては行けず置き去りに
その後同じ境遇の佳代と知り合い
二人の少女だけで満洲から日本への引き上げを果たすがその体験が壮絶だった
本当に辛い思い出は心の奥深いところに沈んでいて
認知が進んで剥ぎ取られていくように
直近の思い出が薄らぎ
奥底の封じ込めていた思いが
露わになっていくよ -