【感想・ネタバレ】ボニン浄土のレビュー

あらすじ

島だけが、すべてを見ていた。

1840年、気仙沼から出航した五百石船・観音丸は荒天の果てに、ある島に漂着する。そこには、青い目をした先住者たちがいた。彼らは、その地を「ボニン・アイランド」と告げた。
時を隔てた現在。すべてを失った中年男は、幼少期、祖父が大切にしていた木製の置物をふとしたことで手に入れた。それを契機に記憶が蘇る。
彼は、小笠原行きのフェリーに足を向けた。その船には、チェロケースを抱えた曰くありげな少年も同乗していた。
物語は、ゆっくりと自転を始める。

※この作品は単行本版『ボニン浄土』として配信されていた作品の文庫本版です。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

宇佐美さんは裏切らない、と改めて思いました。
単なるミステリー作品ではなく,歴史書でもあると感じました。小笠原諸島について、全く知らなかったので、歴史の勉強にもなりました。
過去と現在が交互に書かれていて,それぞれゆっくりとした進行だし,事件も起きないのですが,筆力がすごいのか,引き込まれてあっという間に読み終わってしまいました。
最後は宇佐美さんらしい、希望のある最後でスッキリ!
素晴らしい作品でした。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

面白かったー、これぞTHE宇佐美作品!
小笠原諸島を舞台に語られる全く異なる3つのお話や様々なエピソードが最後に繋がる時のゾクゾク感。でもその繋がりに気付けるのは読者の特権です。
小笠原諸島の歴史も学べて一石二鳥。
なんとなく謎を残したりせずきちんと最後まで書いてくれるのも宇佐美作品のいいとこですよね。

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

小笠原の歴史がわかり面白かった。ニュージーランドに行った時に、マオリの祖先がハワイ近辺から渡ってきたと聞いて驚いたが、小笠原にも来ていたなんて!ちょっとミステリー要素があるのも楽しめた。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

みんみんさん、ひま師匠にご紹介頂き購入しました(*´꒳`*)

ボニン浄土、、、タイトルから外国のお話かしら?何かの宗教かしら?なんて想像しながら読み始めたのですが、時代は過去に遡り、1840年。江戸時代ですかね。

気仙沼から出港した五百石船が難破し、漂流するところから物語が始まります。

吉村昭の漂流という小説がとても良かったですが、この本も出だしは負けないくらいのリアリティで期待がどんどん膨らみます。
ワクワクドキドキしてきた頃、物語は現代に。


あれ?現代になっちゃった。
全てを失った中年男。離婚し、水泳の得意な息子とも会っていない。彼は幼少期祖父母に育てられた。
実父母の記憶はない。ある日偶然祖父が持っていた木製の置物を手に入れるところから、自分のルーツを探り出すことに。

そしてその話も短く、またもう一つ別の現代のお話に。音楽一家に生まれ、チェロの英才教育を受ける少年。
とある事故がきっかけでチェロの音が聞こえなくなってしまう。

これからこの3つの作品をどう繋げるんだろう?


過去の描写が丁寧で、小笠原の歴史がこれでもかとギュッと詰まっていました。
島に行ったことは無いのに、島の情景が浮かぶような描写にうっとり(*´꒳`*)


関係ないような3つのお話。
小笠原で交差します。ガッツリ全てが混ざり合うのではなく、薄ら交差?
読者は色々な情報を持っている状態で読むからさらに面白くなるんです(*´∇`*)
あー!あれはこれで、それはそーゆーことね!読者だけが知ることができます(*´꒳`*)



小笠原の歴史を小説という形を通して知ることが出来ました(*´∇`*)
上質な小説でした(*´꒳`*)

宇佐美さん、とてもいいなぁ。。。これからも注目していきます!


三つの話、もっとがっちがちに繋がって欲しかったので、★5よりの★4でm(_ _)m

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宇佐美まこと氏といえば、土着的なホラーのイメージが個人的に強かったが、それを見事に覆す、まるで壮大な時代小説が始まるかのような導入。
そして、さらにその予想を裏切り、ページ僅かしか進まぬうちに舞台は時空を飛んで現代へ。
実に巧い。
卓越した手腕は全編を通して発揮され、途中までは"余白、遊びの部分が結構多い作品だな"などと思っていたが、あれよあれよという間にそれらすべてのパーツがするすると破綻なく連綿と繋がり、数々のエピソードが集積した一個の大きな物語として閉じるパッケージには、様式美という言葉がふさわしいとすら感じる。
一方で、その超絶技巧を活かすことを第一義として緻密に組み上げられた構成…という印象を持ったことも事実で、ではそれを以てこの作品は読者に何を伝えたいのか、という根幹を成す"背骨"については、そこまで強烈な感銘を受けなかった…充分面白いのだけれど。

見せ場となる重要な場面は多いが、特に私の心に残ったのは、賢人が鯨の歌に呼応しチェロの音色を取り戻すシーン。
まさしく1つのクライマックスであった。
賢人が島を去る前に皆の前で演奏するシーンも然り、音の出ない紙媒体の小説でありながら、音楽の持つ力を感じた。
また、恒一郎が長い時を経た後に生まれた島へ帰郷するくだりには、ケンシロウが修羅の国に戻った時のそれに通じるものがあるではないか。
いくら言葉に尽くせぬ恨みつらみがあろうとも、母が何にも代え難き幼い我が子を残して逝くだろうか…? という疑問は決して拭いきれないが。

蛇足ながら、もう10年前になるが小笠原に旅行した際、真っ青な海でイルカと泳いだことやダイヴィング中にユウゼンを見たこと、ウミガメの煮込みを食べたこと、そして兄島瀬戸の珊瑚礁でスノーケリングしたこと等を懐かしく思い出した。

「出ていく者を見送り、来る者を受け入れた。それは島そのもののあり方だった。」

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2024年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始めと終わりの気持ちの温度差に驚いた。
鎖国真っ只中の江戸時代、日本の端の島「ボニン・アイランド」での遭難者の男と異国の女の出会いから始まる、めくるめく人の運命の変遷と血脈の妙にここまで胸が高鳴るとは!
全く関係ないように見える複数のパートと過去が集約され、気持ちいいほどパタパタとピースが嵌まっていく宇佐美さんお得意の最終章はますます圧巻の境地。
海を渡り歩くカナカの女たちのたくましさと情の深さ、マリアの情熱、幸乃の悲愴な覚悟…小笠原の島を愛する魂の想いが結実し受け継がれていく命と縁の神秘は計り知れない。

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2024年07月26日

Posted by ブクログ

1840年、五百石の弁才船が難破し、なんとかボニン島(小笠原諸島)に流れついた。そこで水主達が出会ったのは、アメリカ捕鯨船団の補給基地となった島で暮らす西洋人や彼らと共に移ってきた南海諸島の人達だった。そんな小笠原諸島の歴史を背景にしたミステリーです。
厳格な音楽家一家に生まれ、チェロの才能を持った少年は、有る事件をきっかけにチェロの音が聞こえなくなる。一家からはみ出し者扱いの父親(娘婿・フリーカメラマン)は彼を連れて小笠原諸島に向かう。同じ船便には、祖父が残したオガサワラグワの木製品を手に、自らのルーツを探す中年男が乗っていた。
色々、我が家に関係がある話です。
わが家は江戸から大正時代にかけて弁才船の船主/船頭として廻船業をやっていました。また、明治期には祖父の兄弟3人がアメリカに移民し、太平洋戦争時に小笠原諸島に住んでいた西洋系住民同様、収容所生活や人種迫害を受けていた事など、結構我が家の歴史に重なる所が多く、前半は興味深く読んでいました。(実はミステリーだと知らずに読んでいた)
でも後半は一気にミステリー色(殺人事件)が強くなって、そうなると興味が持てなくて。。。。
ちなみに初・宇佐見まことです。wikiには「日本の小説家、ホラー作家、推理作家」。ミステリーに手を出さないことにしているから初は当然ですね。おや、女性でしたか。

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2025年10月13日

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