朝井まかてのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
江戸向嶋の苗物屋「なずな屋」をめぐる物語。
普段は時代小説をあまり読まないけれど、完全に掴まれた。新次、おりん、雀は勿論、その周りの登場人物が挙げたらきりがないほどみんな魅力的。
それぞれの章で起きる出来事とそこに流れる日常。桜の謎からの吉野でクライマックスかと思いきや、一気に思いも寄らない展開とその後の軽やかにすべてが回収される終章に痺れた。花火を取ってきてあげる場面が一気に蘇ってきた。
自然に流れていたそれぞれのお話が、すべて緻密に巡らされていたことに気づいたうえで、もう一度振り返りたい。
粋という言葉がぴったりの、じんわりと心に残るお話でした。 -
Posted by ブクログ
朝井まかてさんのデビュー作
隅田川のほとり、向嶋で種苗屋「なずな屋」を営む
花師「新次」と妻「おりん」の商売繁盛記。
商売を営む傍らで、品評会、宴の庭造りなどの難題に取り組む新次とおりん。
2人の元に預けられている子供「しゅん吉」や
いつも温かい手を差し伸べてくれるご隠居の「六兵衛」、何かと人騒がせな夫婦「留吉とおそで」たちと力を合わせ、知恵を合わせ乗り気って行く。
横槍をいれてくる老舗「霧島屋」はかつて新次が修行をした店だが、こちらとのやり取りも清々しい。
江戸の職人物語なので商売への心意気や、人情味あるやり取りも気持ちが良い。
そして題名にもなっている「実さえ花さえ」とは
桓武天 -
Posted by ブクログ
読みごたえのある一冊だった。
それにしても、その頃の女性の立場のないことに驚く。自分からなにかを希望して行うということが、できなかった時代なのだろうか。登世はひたすら見合いを断っていたら理想の男性が向こうから結婚を申し込んでくれて、水戸に行ったあとは家事もできずに家で待つばかり、政変によって妻子まで牢につながれる経験は凄惨だが常に受け身で…いや、牢に同じくつながれた他の妻女は気丈に息子たちに論語を教えたりしていたのだから、すべての女性が無為だったわけではない。それでも、読んでいるともうなんだかもう少し何とかならないのか!と思ってくる。
最後まで読むことで、この小説の本当の良さがわかると思う。 -
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江戸時代は、家族内(自宅)での看護・介護が主流で、職業としての介護はなかったそうですが、本作では、主人公のお咲が口入屋に斡旋され、「介抱人」として仕事をする設定です。この構成と展開が味わい深い作品でした。
8編からなる連作短編集で、様々な老人たちが登場します。この一人一人の老人を始め、登場人物の個性が際立っていて、人物造形が素晴らしいです。
各話が進む中で、お咲の離縁や毒親による借金などが明かされ、物語の深みも増していきます。
介護の陰鬱印象は薄く、けれども軽過ぎず…。人同士の交流が小気味よいです。過酷な介護の困難を超越して、お咲の誠実さ、人の心を推し量る共感力が素晴らしい! お咲 -
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時は天下が揺れる幕末の動乱期。時代物の単なる恋物語などという生優しいものでなく、過酷な歴史の荒波に飲み込まれた、(樋口一葉の師でもある)歌人・中島歌子の壮絶な人生を描いた物語です。本屋が選ぶ時代小説大賞・直木賞受賞作品。
主人公の登世(歌子の幼名)は、江戸の商家の娘でしたが、一途な恋を成就させ水戸藩の藩士に嫁ぎます。夫は尊王攘夷を主張する天狗党の志士でした。
水戸藩では、天狗党と保守派の諸生党の対立が激化し、殺戮と拷問を繰り返す内乱へ突き進みます。
賊徒の妻として捕らわれ、女や子どもが次々処刑されてゆく中、登世は夫との再会を願い、命懸けで詠む歌だけが心身の拠り所なのでした。
地獄 -
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以前NHKで観たことがあり、おもしろかったことを覚えている。
もう一度観たかったが、思いがけず本に出会えてラッキーだった。
はじめはお以乃も、お蝶も、自分本位でとても嫌な女だ。
それが旅を続けていくうちに、それが個性となり、いきいきと動きだし、魅力的にすら見えてくるのだからおもしろい。
道中たくさんの人と出会い、いろいろな出来事とぶつかりながら、自分自身の葛藤と向き合いガス抜きができた。
江戸で燻っていた時とは見違えるほど元気になった姿は、こちらにも元気を分けてもらえたと思う。
江戸に戻ってからの3人の続編も読んでみたかった。
2025/05/22 20:13 -
Posted by ブクログ
植物学者として唯一無二の存在という牧野富太郎の生涯を描いたストーリー。話を読み進めるうちに、小説の感想というより富太郎の人生に色々と言いたくなるのは、文章のうまさか表現の巧みさか、いずれせよ丁寧に彼の性格、思考、思想なりを書き込んもので、牧野ワールドに引き込まれていった。
あまりに好き勝手、学歴も、お金にも無頓着というか全ては自分の植物に対する愛情と探究心を優先する生き方に腹立たしくなる。どれほどすごい研究成果を出したとしても人間としてどうなんだ、とか思う気持ちもストーリー展開そのもの、いや富太郎の人生そのものか。
朝ドラのらんまんで神木隆之介が演じた優しい人の良さそうな雰囲気とはかなり違って -
Posted by ブクログ
第150回直木三十五賞
第3回本屋が選ぶ時代小説大賞
幕末の動乱を駆け抜けた登世(中島歌子)のドラマティックなノンフィクション小説。
江戸の裕福な商家で育ったお嬢様の登世は、水戸藩士の林忠左衛門に嫁ぎ、その半生はあまりにも過酷。
愛する夫と過ごした時間はどれだけあったんだろう。
賊徒の妻子として投獄されてからの様子は、あまりにも酷いと思ったけど、まかてさんは容赦なくじっくり描写されている。
先に処刑されていく婦人たちが残した辞世の句や、会えない夫を思って詠んだ登世の句がとても切ない。
「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしえよ」
激しい恋心が伝わる印象的な句だと感じた。
貞