朝井まかてのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ江戸に吉原という一大遊郭を作り、さらにはその遊郭の場所を移動するという、江戸前半風俗史を遊郭の女将視点で描いた小説。
日本堤の桜ってどっかで聞いたなぁ、と思ったら、朝井まかての以前の小説「花競べ」やったか。明らかな連作ではないがふわっとそこにつなげるあたりの技はさすが。オーラスのゲスト2名の登場もご愛敬。
花魁だの太夫だの言うても、いわばその身を売られてきた売春婦、悲惨な人生背負っているわけで、悲劇の陰が付きまとわざるを得ない。そこから目をそらすわけでもなく、言い訳がましく肯定するわけでもなく、「それはそうだがそれでも必死に生きていく」姿を描くのは、バランス感がとても大切だと思う。朝井まかてだからこそ書けたのだろう。 -
Posted by ブクログ
『すかたん』や『眩』『阿蘭陀西鶴』などで朝井まかてさんの作品が好きになり、今回はこの500ページ超の本作を手に取りました。読み応えありの一冊でした。
幕末から明治にかけて洋食屋・ホテルを開業し、日本の外交を支えた料理人・草野丈吉の妻ゆきの物語。体力はあるが読み書きには疎い彼女が、丈吉を支えながら様々な苦難を乗り越えていく展開に、朝ドラを継続視聴しているような感覚になりました。
岩崎弥太郎や後藤象二郎、五代友厚、陸奥宗光といった時代の寵児たちが丈吉・ゆき夫婦とかかわりを深めていただけでなく、文明開化や不平等条約など教科書で学んだ国内外の史実が、市井の人々にどんな影響を及ぼしていたのかがリアルに伝わってきたのも面白かったですね。
特に、「お雇い外国人」にまつわるエピソードとして、日本のために尽くしてくれた尊敬すべき人もいれば、おのれの私利私欲ばかりを追い求めるような輩もいたことが描かれていたのは「ああそうか そりゃそうだろうな」と妙に納得するのでした。 -
Posted by ブクログ
日本民藝運動の創設者、柳宗悦と、
妻で声楽家の兼子や夫妻の子どもたちと暮らす
日々を、住み込みで働く女中のサチ(ねえや)
の目を通して描いた物語。
宗悦達が買い付ける、古い日用品の器や、汚れた布などは「下手物」扱いとされ、誰も買わない。
それを影で店主達に笑われていた。だが、宗悦達はそれら品々の中に美しさを見出し、価値あるものとして考え、光を当ててゆく。新しい美の基準として
「民藝」と呼び、確立し、活動していく過程が興味深かった。
柳宗悦さん、物静かな人を想像していたが、
意外と癇癪持ち笑 もちろん彼はすごい人だと
思うが、この物語の中で私が一番魅了されたのは、
宗悦の妻、兼子さんだ。
とにかく彼女はパワフルな女性。宗悦が金に
無頓着なために柳家の家計は常に火の車。
そのため、兼子さんが声楽家として稼ぐ。
妻であり、母親であり、声楽家として自分の夢(留学)も決して諦めず、宗悦を支えていく(かっこいい)大恋愛の末に結婚したこの夫婦は、よく喧嘩をするのだが、結局はお互いを認め合っている。
この時代に女性が好きな仕事で稼ぎ、家計を支え、堂々と夫と意見を言い合う。それを認めている
宗悦はこの時代の男性にしては進歩的な考えの持ち主だろうと思う。女中のサチが、この奥様に次第に感化されて、逞しくなっていく姿が良かった。
家計が火の車の柳家だが、美味しいもの好きの宗悦のために、工夫して作る奥様(兼子さん)や、
ばあや、サチ達の料理が本当に美味しそう。
京ばんざいやこの時代には珍しい、ハットケーキやプディング、レアのチーズケーキ、サンドウィッチなど、食の描写に思わず涎が出そうになった、
「輝ける仲間たちとは旦那様たちのことにございますね」と、グロリアソサエテを「輝ける仲間たち」(Gloria Society)と勘違いしたサチは、宗悦から
グロリアソサエテは出版社の名前であると教えられる。勘違いを恥ずかしがるサチに、微笑みながら
「ねえや(サチ)の勘違いは光栄だ」と言う宗悦。
この小説のタイトルは「グロリアソサエテ」だが、
輝ける仲間という意味ならば、宗悦や河井寛次郎、
濱田庄司らだけではなく、彼の取り巻く全ての人々を差しているように思えた。
史実に沿いながら、魅力的な人物がたくさん
登場して進んでいく展開が見事で面白かった。
良書を読むと気分がいい〜♪
-
Posted by ブクログ
とても読み応えがある。高知市にある牧野植物園を訪ねたのをきっかけに本書を手に取った。博物館にあった、高齢になってもなお屈託のない少年のような笑顔を見せる牧野の写真を重ねながら読み進めた。
東大研究室を出禁にされるのも、借金を全て片付けてくれた孟との確執も、そりゃそうなるだろうと思う。そうなってもなおわが道を行き続け、自分のやり方、自分のペースで研究を進める富太郎には何も言えない気分になる。
子だくさん、30回以上の引越し、莫大な借金とその取り立て、家の中には山のような標本と書物。研究者としては間違いなく超一流だが、こんな人が夫だったら本当にたまらない。ただただスエさんに頭が下がる。
そうは言っても、富太郎の無邪気さ、純粋さ、植物に対する一途な思いは、全て「ま、仕方ないか」と思わせるような魅力があったんだろうなあと思った。
緻密な取材に基づいて本書を書き上げた朝井まかてさんにも敬服。 -
Posted by ブクログ
大正から昭和初期に「日用の美」「下手ものの美」を提唱する民藝運動を立ち上げた柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司(作者は彼らを「奇跡の3人」の呼ぶ)らの交わりと宗悦一家の生活をねえやサチの目を通して描く。
それまでの美術界からは見向きもされなかった朝鮮の陶磁器や木喰仏、無名の職人によって作られた下手物に日用の美を見出した宗悦。
河井、濱田たちも宗悦の影響を受け、自ら作陶に打ち込む。
美を追求しながら邪念を持てば台無しになる、無我無欲の境地を得ることの難しさ。
既に高名を得ながらも納得できる作品群を作るのに、河井は数年を要した。
一家の大黒柱で、自ら傑出した声楽家でもあった、宗悦の妻兼子。
収集と執筆、民藝美術館設立に奔走し家計を顧みない宗悦に対し、育児、家政、生活費調達を一手に引き受ける兼子の献身は感心するに余りある。
あまつさえ育児の傍ら自ら段取りしてドイツに声楽留学し現地のリサイタルで絶賛された兼子も、戦後も1984年に92歳で没するまで歌手として歌い続けた傑物だった。
本書に書かれた、共通の目的を追求し支え合う仲間たちの姿は、ある意味作者の理想か。
ねえや、ばあや、大ばあやの存在など、当時の知識階級の暮らしが生き生きとユーモラスに描かれているのも本書の魅力。
最終盤、サチは真鶴という名で沖縄出身であることが明かされる。
宗悦らが朝鮮と並び沖縄にも深い関心を持ち、度々訪れていたことの反映だろうか。
全編で語り手となった本書のヒロイン、サチの行く末はその恋も含めて気になるが、2・26事件、支那事変が起き、徐々にきな臭くなる世情の中で沖縄に暮らすサチの将来には近づく暗雲の存在を感じてしまう。 -
Posted by ブクログ
舞台は江戸。共に三十路(みそじ)を迎え、私生活で行き詰まりを感じていた幼馴染の女子三人が主人公。ある日、彼女たちは突如として日々の鬱屈を爆発させ、家族や仕事に何も告げず、着の身着のままで江戸を飛び出す。目指すは伊勢神宮。いわゆる「抜け参り」。金も計画もない行き当たりばったりの旅だが、東海道を西へ進む中で、さまざまなトラブルや出会いを経験する。彼女たちは笑い、怒り、食べ、泣きながら、「女としての自分」と「これからの生き方」を見つめ直していく。辿り着いた伊勢の町で迎えた結末は。。。最強の「女子旅」エンターテインメント作品。「アラサー女子の弾丸旅行」のような疾走感満載。三人の軽妙な掛け合いが最大の魅力で、思わず吹き出してしまうシーンも。作者得意の重厚な歴史作品を封印した軽快な筆致にさすがの直木賞作家。一気読み間違いなしの作品ですよ~。