朝井まかてのレビュー一覧
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バーネットではありません。なんか、ぽくないタイトルですが「南総里見八犬伝」で有名な曲亭馬琴の一生を描いた歴史小説です。
最近のまかてさんは、歴史上の人物を虚飾することなく史実に沿って描こうとしているようです。いわばリアリズム。この作品もそうで、武家の二男として生まれた馬琴は悪人では無いものの吝嗇で教条的、作品に対しては偏執的で版元や摺師を辟易させる。奥さんの百も強烈で、癇性で周りに毒のある言葉を吐き続ける一方で、幼児には我が子でなくても気を遣う。病弱な息子の宗伯は父に対しては従順だが、母や妻女には母譲りの癇性を発揮する。そんな崩壊寸前の家庭の中、馬琴は膨大な量の小説を描き続ける一方で、何度も滑 -
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ネタバレ馬琴についての小説を読むのは、確かこれが初めてではない。だが、これほどドキュメンタリーに近いものは読んだ事がなかった。
滝沢興邦という名をもつ、武士の次男であった馬琴は、幼い頃から、武士の立場ゆえの、苦しみが絶えない人生を送ってきた。書に親しみ、俳号をもち、読み本作家として押しも押されぬ立場となっても、武士の誇りを捨て切れなかった馬琴。滝沢家の武士の矜持を現代の自分が思い計ることはできないが、馬琴にしてみれば当然、子も孫も、男子は武士として育てねばならなかったし、子女は武士に相応しいところへ嫁さねばならなかった。そのために、筆耕で稼いだ金が費やされた。
その生き方は、師である東山京伝と対比さ -
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五代将軍綱吉と言えば、生類憐みの令で、評判が良くないのは広く知られているところ。
その時代と、綱吉の真意は?
新たな角度から描いた作品です。
五代ともなれば世は穏やかで繁栄しているというイメージがありましたが。
当初はそういう空気でもなく、過渡期だったのかもしれない。
将軍になるとは思わずに育った綱吉は勉学好きで、理想主義者。
戦国時代の荒々しさが残る世の中を憂い、命の大切さを説こうとしていた。
動物愛護の精神まで先取りした先駆者だったのではないかという。
そんな彼を理解していたのが正室の信子。公家の出で教養はあるが、大らかで形式ばってはいない女性。
生類憐みの令は、跡継ぎに恵まれない綱吉 -
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森鴎外の息子である類氏の生涯の物語である。
父鴎外をパッパと呼んで愛し、なに不自由なく少年期を過ごし、父を失ったあと、画家を志してパリへ進学した青年期。そして戦争に終戦の昭和と、明治から平成の日本を生きた物語。
類はずばぬけた画才も文才もないけれど、どちらの世界にも手を伸ばしたいと願い続けるけれども華々しい花が咲くことはない。けれどときどき原稿依頼などあるのであきらめきれずに生涯とりかかる。
彼の生きた明治から令和まで。その克明な描写が全体をかたどった作品だ。
キャラクターというより、その人が生きた背景を楽しむのに目がないかたにオススメです。 -
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ネタバレボタニカを読んで
頭で考えたりするミステリーや
心が動かされてしまうほのぼの系や
感動系の小説ではなく
つらつらと文字と話だけを
追いかけれる小説にはまってしまい、
朝井先生のシリーズを手に取ってしまった。
時代にもまれながら
この人も一生を料理に支えた草尾丈吉さん。
料理で日本を支え、そのうえ
料理でたくさんの人を幸せにしてきた。
妻のゆきも分からないながらも
自分なりに夫と店を見事に支え、
浮気にも肝の座った態度で受け流し
さすがああああと
ゆきをさらに好きになった。
料理の描写も美味しそうで
お料理系が好きな人は
長いかもしれないけど
ぜひ読んでみてほしいです -
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ネタバレ植物そのものにまた世間の人が
触れておらず名前の知らない草花が
たくさんあった時代。
これは何という名前だろう
この花とこの花は似ているから
同じ系統の花かもしれない
それをこの牧野富太郎を筆頭に
日本の植物図鑑がどんどん
華やかに埋め込まれていった。
植物を愛し、植物に愛された人
己の探求心を生涯一度も止めることなく
ただただ生えている草花を愛で
解明を続けた人。
私たちが今、花の名前を知ることができるのも
すべてこの方のおかげだろう。
この人の研究の裏で
妻や子供が少しだけ犠牲に
なってしまったのではないかなと
母の目線で思わずにいられなかった。