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Posted by ブクログ
将軍家綱の綱吉。館林の藩主で、館林宰相と呼ばれている。兄の家綱は病床にあるが、甲府宰相と呼ばれる兄の綱重は既になく、子供の綱豊の代になっている。いよいよ家綱が危なくなった時、大老の酒井は宮家から将軍をいただく案を出す。堀田や水戸光圀の声により、綱吉が次代の将軍と決まる。徳川幕府始まって以来、初めての直系ではない将軍である。
家綱は治世最後のあたりはもうほとんど幕政に関わっていなかった。まず綱吉は将軍の手に政治が戻るように頑張った。越前松平家を改易し、酒井を大老から罷免し、旧勢力を追い払った。安宅丸も廃した。
5歳の嫡男徳松が世をさった。7歳の女の子鶴が残ってはいるが、後継がいなくなった。地震が起きた。代替わりの武家諸法度を制定したが、武より文を基本としたものになった。そんな中、大老の堀田が若年寄の稲葉正休に斬りつけられて亡くなる。稲葉はその場で老中らに斬り殺された。淀川治水工事に稲葉は4万両かかるといい、河村瑞賢に訊いたら2万両で済むと答えられたので、職から外したことが原因らしい。鶴が紀州徳川家に入輿する。
鷹狩に用いるために犬を大名屋敷で飼っているのが、逃げだして野良犬になっていたりして市中に犬が多い。子を捨て、老親を捨て、犬を殺す。慈しみの心が世に広がらないと、命を大事にする風習が育たないように綱吉は思う。食犬を禁じる。生類を憐れむべし。犬小屋などで犬を匿う一方、店の売り物を奪った犬を打ち殺した店主が、入牢のうえ死んだりして、奉行のアホさ加減に腹が立ってくる。
松の廊下事件が起きる。浅野内匠頭が吉良上野介を討とうとした事件だ。なぜ刀を抜く。綱吉は浅野に切腹を申しつける。それが意外な事件を引き起こす。討ち入りだ。結果、吉良は改易、浪士たちは切腹で収まる。
地震が起き、津波が襲い、小田原城が崩れて、大火も起き、浅間山まで噴火した。その後出羽と陸奥で地震。余震も続いている。紀伊に嫁した鶴が亡くなった。綱豊がなつかない。気性にもよるから仕方ない。江戸城に入れて家宣と改名させる。
富士山の宝暦の大噴火。京では大火で仙洞御所と御所が焼けた。麻疹が流行り、綱吉と御台所信子は亡くなる。
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江戸幕府の5代将軍であった徳川綱吉の物語である。
“最悪の将軍”という題名が酷く目立って、同時に強く好奇心を刺激されたので当初は然程気に掛からなかったが、表紙イラストに犬が描かれている。徳川綱吉と言えば、“犬公方”なる綽名を賜った人物で、平和になった時代に君臨して、「犬を大事にする」というような、何やら不思議な政策を採っていたというイメージが在るかもしれない。そしてそんなイメージがふわふわと漂う他方に、「どういう人物だったのか?」ということを正面から捉えて描き出そうとするような小説や映画やテレビドラマのようなモノが思い浮かぶのでもない。
そういう中、本作『最悪の将軍』は、徳川綱吉という人物が将軍に就任することになる辺りから物語が起こり、逝去するまでの生涯に起こった様々な出来事、徳川綱吉によるそれらとの向き合い方が綴られている。なかなかに興味深い。そして本作の徳川綱吉の「在りたい…」というような想いには、少なからず「惹かれる」というような感さえ否定出来ない。そういうことを丁寧に、同時に読み易い分量の中で描いた本作は、なかなかの秀作であると思う。
徳川綱吉は「大きな戦乱から免れている=平和な時代なりの人や社会の在り方」を模索し続けていたような面が在る。その故に「平和で華やいだ時代に君臨」というようなイメージが生まれたかもしれない。しかし…徳川綱吉の治世の下では、自然災害や都市での大規模火災、天候不順等のための飢饉という事態が少なくなく、江戸城内での大老暗殺や「赤穂浪士の討入」という不穏な事態も発生している。本作では、そういう事態に懸命に向き合う徳川綱吉の姿も描写されている。
本作の徳川綱吉は「邪無し」という言を座右の銘のようにしているようだ。「邪無し」とは、“考え”に留まらず、公務から私生活に至るまでの“あらゆる行動”について「正しい」を追い求めようという姿勢のことであるようだ。時代や場所を問わず、こういうことはなかなか言えるものでもない筈だと考える…
申し訳ないが、徳川綱吉は「古い時代の妙な指導者」とでも言うような、変なイメージが漠然と在るだけの史上の人名ということになるのかもしれない。対して本作は、この人物の「漠然としたイメージ以外の部分」に踏み込んでいる。そしてそこに浮かび上がる人物像は、「一定以上の敬意が払われて然るべき人物」というように思える。
様々な自然災害が続くような状況下で自身の理想の体現を願う為政者…古い時代の話しながら、“現代”に通じるテーマが潜んでいる…本作はそんな作品で、広く薦めたい。
Posted by ブクログ
五代将軍綱吉と言えば、生類憐みの令で、評判が良くないのは広く知られているところ。
その時代と、綱吉の真意は?
新たな角度から描いた作品です。
五代ともなれば世は穏やかで繁栄しているというイメージがありましたが。
当初はそういう空気でもなく、過渡期だったのかもしれない。
将軍になるとは思わずに育った綱吉は勉学好きで、理想主義者。
戦国時代の荒々しさが残る世の中を憂い、命の大切さを説こうとしていた。
動物愛護の精神まで先取りした先駆者だったのではないかという。
そんな彼を理解していたのが正室の信子。公家の出で教養はあるが、大らかで形式ばってはいない女性。
生類憐みの令は、跡継ぎに恵まれない綱吉が、母親の干支である犬を大切にすることで子が出来ると信じたという、今から見ればマザコンで、迷信に振り回されたという印象がありましたが。
実は夫婦睦まじく、自立していたイメージに塗り替えられていて、感じよく読めます。
ただそれが史実だったのかどうかは‥
極端な政策に、人心を読めない面があったのは、否定できないところではないかと。
その辺はガーッと通り過ぎていく描き方でした。
御台所との関係も、仲がいい時期はあったかもしれないが、結末は悲劇に終わった説の方が説得力あるような気がします。
ただ綱吉本人が本心目指したものは、高邁な理想だったのかもしれない。それはあり得ることでしょう。
将軍の立場の難しさ、それは端からはわからないこと。
政策も施行への段階のどこでどう歪んでしまうか。
今も昔も、上に立つ者は意外と辛い?!
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