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Posted by ブクログ
老いに対して如何に支え合うかという普遍的な課題、時代は変われども、江戸時代も現代と同じ悩みや葛藤を持ちながら、介護看護に取り組んでいたんだと教えてくれるストーリー。
仕事とは言え、他人の介護看護には親身になって尽くすのに、自分の母親には素直になれない主人公の葛藤、現代も変わらないのではないかと、共感してしまった。
武家時代の忠孝という規範の縛りがあるとは言え、親の介護看護に疲弊し、家族関係が崩壊しかける描写は、制度や仕組みが新しくなった今の時代の「老老介護」や「手厚くならない介護職」の問題に対して何も変わっていないのだな。
介抱人の仕事を通して、死に向かう時間に寄り添い、老いの豊かさに少しずつ気付きながら自身の悩みや葛藤に折り合いをつけていく主人公の心の成長に感銘した。
刺さった一文
•若い者にとっての死と、衰えによってこの世を去る死とは違うのだ。
•水も受けつけなくなった時に、もうお迎えは来てるんじゃないか。
•死ぬ時は皆、独りです。
たった独りでその恐ろしさに耐えるんです。
それだけはいかに孝行な子がいても、誰も代わってあげられない。
だからそばについて手を握り、言葉を交わします。
精一杯、笑って、大丈夫だよと声をかける。
内心では親を見送るのが怖い。この世からいなくなると思うと、介抱してる方も怖いんです。
いかほどの覚悟したって、たいていの人はそうです。
死にたくないし、死なせたくありません。
Posted by ブクログ
まかてさんプレゼンツ、江戸の介護実態。派遣の介護人お咲が一生懸命に介護をしながら紡がれる人情噺。面白かった。
お咲は介抱屋として仕事をしている。40歳くらいの母を養っている。江戸では当主になる者が介護をする。孝を幕府が大事にしているせいだ。
料理屋の主人が3日間家を空けるのでと仕事を頼まれた。中風の後で半身不随だが、頭はしっかりしている模様。お咲は母の借金を背負っているので働かなくてはならない。母はお咲の嫁ぎ先からお金を無心して、お咲は離縁された。給料の前借りにも来る。
道楽婆さんの相手を頼まれる。釣りに連れて行かれて、お咲は酔ってしまった。10日間と言われているがほとほと疲れる。何をやっても楽しくないらしい。そこで菊を見かける。
お咲は別れた仙太郎と会っている。仙太郎には新しい奥さんとの間に3人の子がいる。お咲はお金を返す。
老婆をご隠居様と呼んだら、男なのにお嬢様と呼べとすごまれた。失禁癖がある。家族に呼ばれて耄碌しているかどうか確かめられる。
貸本屋が介護の心得を出版したいらしく、その指南を頼まれる。しかし題材が題材だけになかなか筆が乗らない。
大奥勤めをしていた松と梅の姉妹を世話しているが、妹の梅が松のしたいことを邪魔をしているように見える。家に帰ると、母の恋人がいた。挨拶されて、家を飛び出した。
Posted by ブクログ
介護(本作中では「介抱」)がテーマになる話を、現代を舞台にした小説で読んでいたら、実際に介護にかかわる日々を送っている読者にとっては、あまりにシビアで結構滅入ってしまったかもしれません。
本作を読んでみて、決して滅入ることはありませんでした。これは江戸の町人の暮らしの中での話…と割り切りながらも、老いるということの意味は昔も今も変わらないのだと思いました。
本作のよいところは、「こうあるべき」とか「こうあらねばならない」などと結論付けていないところなのかなと。むしろ本作そのものが、作中に登場する洒落の効いた『介抱指南』のようにも思えてきます。
他人さまの介抱にかけてはプロフェッショナルの域にある主人公の"お咲”が、こと自分の母親のこととなると冷静ではいられなくなる性分であるのも、とても親近感がもてます。
完璧な人なんていない。完璧でなくても、どうしようもない状況でも、少しでもお互いが楽になれるよう、みんなで助け合ってなんとかかんとかやっている。
実際の自分が経験している介護やこれから経験するであろう介護、あるいは自分が受けるであろう介護のことを、割と冷静に考えられる時間にもなりました。
Posted by ブクログ
江戸の介護を描いた時代小説。帯によると「隠れた逸品」とあるが、そのとおり。江戸時代は平均寿命こそ短かったが、これは乳幼児死亡率が高かったためで、60才まで生き延びれば70才、あるいそれ以上生きたらしい。
お咲は嫁ぎ先から離縁され、「介抱人」として働いていた。お咲は母親の借金を返済するため、通常の女中奉公より給金のよい介抱人をしていた。口入屋を介しての今でいう派遣労働者である。
現代も江戸時代も介護の状況は変わらない。日常生活の介助や食事の世話、そして下の世話である。現代ならば介護保険もあり、要介護認定によっては施設入所も可能だ、しかし江戸時代では、儒教思想から親の介護は子の「孝」として考えられていた。そして手が足りない、追いつかない時は、介抱人を頼むというわけだ。
それとてお金がかかるので、一般庶民には無理。本書に出てくる依頼人も裕福な商家や旗本である。そしてお咲が暮らす長屋で菊職人をしながら、一人で老母を介護する庄助の話が出てくる。自分の母親は介護保険を利用して、デイサービスや施設入所ができたが、昔は本当に大変だったと思う。
表紙カバーのネコのイラストを見て買ったのだが、タイトルの「銀の猫」とは、嫁ぎ先の舅からもらった銀製のネコの根付のことである。また、長屋にくるネコのことも指しているのだろう。
Posted by ブクログ
舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。
作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこの振る舞いとなったのは、その人が今まで生きてきた過程の中で根底に残る事柄があるのではないか?これは現代の介護の世界でも見受けられる光景や理解をする際に必要な視点なのではないかと感じました。
よく参考書や教科書などでは、行動の背景に何があるのか知ることが、その人らしさを尊重しつつ適切な援助が行えるようになる…といった事を書かれていますが、この作品では物語(主人公)を通してその気づきを得られるような感覚がありました。実践とまではいきませんが、具体的な例のようにすっと理解できる感じです。
また主人公の人との関わる姿勢が印象的です。戸惑いや理不尽なことに対する怒りなどの感情があっても、相手と正面から向き合い関わっていく姿が心強く思えました。
介護の場で思うことがあった時だけでなく、作品を通して人と向き合う姿勢を感じたいと思う際に読むのも良いかと思います。
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