朝井まかてのレビュー一覧

  • 恋歌

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     江戸末期から明治の動乱の時代を生き抜いた歌人、中島歌子の半生と恋心を描く、骨太の時代小説です。

     物語は、病に伏した師の見舞に訪れた弟子が、師が書いたものであろう手記を見つけたところから始まる。歌人である師のそれはただの書き付けなどではなく、目の前にまざまざと情景が浮かび上がるようなその半生を綴った長い物語だった。手記は若かりし頃の師――登世の娘時代の淡くも色鮮やかな恋から、水戸に嫁いで何かと苦労をしつつも夫を慕うささやかな日々を描いていたものが一変、水戸藩内の内紛から天狗党藩士の家人への苛烈な弾圧、投獄など時代の潮流に翻弄される妻子たちの姿を浮き彫りにしていく。激動の時代をなんとか生き抜

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    2025年12月05日
  • 眩(新潮文庫)

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    かなり面白かったです。
    長野県小布施の岩松院の本堂の天井にある、葛飾北斎が89歳の時の絵「八方睨み鳳凰図」はお栄が描いた部分もあったことが興味深い。近年、お栄が「吉原格子先之図」などの作品を通じて「江戸のレンブラント」と呼ばれるような実力が既に「八方睨み鳳凰図」を描いた頃からあったということが、分かりました。

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    2025年11月30日
  • 名こそ惜しめよ 歴史小説アンソロジー

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    鎌倉初期のアンソロジー

    恋ぞ荒ぶる 朝井まかて 北条義時
    人も愛し 諸田玲子 後鳥羽上皇の大姫への愛
    さくり姫 澤田瞳子 一条能保室(頼朝妹)の話
    誰が悪 武川佑 和田騒動の和田義盛
    女人入眼 葉室麟 北条政子

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    2025年11月26日
  • どら蔵

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    江戸時代、古物商の商家に生まれたドラ息子のとら蔵。
    真贋を見極める才はあるものの、フワフワと頼りない。挙句の果てには勘当同然に家を追い出され。
    真贋に対する古物商たちの矜持が面白い。登場人物たちも魅力的でドラマになるともっとおもしろそう。

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    2025年11月22日
  • 青姫

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    初出 2020〜21「読楽」

    面白かった!

    鎖国直後の江戸初期、田畑のない北国の山あいゆえに支配者がなく、自治を行い籤で物事が決まる「青姫の郷」に、郷役の武士と悶着を起こして逃げ出した名主の弟で杜宇という青年が転がり込む。
    彼は借金し、森を切り拓いて1反(1000㎡)の田を造成して米を作るが1石(180kl)の自己申告年貢に対して4合(720ml)しか取れなかったが、なぜか揉めた相手の武士(久四郎)も転がり込んできて一緒に頑張り、翌年は3石8斗の年貢を納めた。(上田でも標準収穫高は反当たり1石2斗とされ、年貢は5公5民で6斗、一般に新開田は3年無年貢なのでこれは法外)

    籤によって郷の長を

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    2025年11月15日
  • 草々不一

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    身分としきたりに縛られた暮らしの中にも、様々な人生がある。

    縛りがあろうとも、理不尽なことがあろうとも、その枠組みの中で日々を暮らしていく姿を読むと、自分が悩んでいる事柄などたいしたことじゃないなと思った。
    とても贅沢で、じんわりと胸に響く短編集。

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    2025年11月13日
  • 眩(新潮文庫)

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    北斎が主役の舞台を見るために読みました。別の方の作品も読みましたがこちらの方が現代的な言い回しが多く読みやすかったです。北斎の作品の背景も理解できますし、とてもおすすめです。

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    2025年11月11日
  • 最悪の将軍

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    歴史物は全然読んで来なかったが朝井さんで読み始めした。歴史物に慣れておらずとも読みやすいです。登場人物の教養が高いため、読み手も知識があればより楽しめると感じました。

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    2025年11月11日
  • どら蔵

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    面白かった!
    上方で勘当された陽キャなボンの江戸での道具屋修行。
    主人公のどら蔵が気持ちのいい人物で、読んでると胸がスカっとした。
    最後の方は大塩平八郎の乱が描かれ、政治に翻弄される町人の姿に、現代を重ねる部分があったが、しっかりと身を立てて世間を渡るどら蔵に力をもらえる。すらすら読めて読後感もよき。

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    2025年11月03日
  • 眩(新潮文庫)

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    「そうだ、京都へ行こう」のノリで
    「そうだ、北斎美術館に行こう」と謎の閃きに突き動かされ、
    あれよあれよと北斎に魅せられて結局、
    こちらもコンプリート。
    面白くて引き込まれて…娘の人生も味わい深い。

    映画『おーい、応為』を鑑賞したけれど、
    小説とは打って変わって凡庸な、というか
    まぁ人1人の人生ってこんなもんだよな…
    と思い出させるような、
    人生において忘れられないような大きな出来事が起こった時でさえも現実の生活が続いていく(しかない)日々の儚さの方が強くが描かれていて。

    小説ではもっと激動で、リズミカルで
    まさに北斎の『The Great Waves 』のような
    色彩豊かな応為の人生が描

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    2025年10月30日
  • どら蔵

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    久しぶりに「読み終えたくない」
    と強く思える作品に出会った

    その道の手練れ達の丁々発止の真剣勝負が、
    その場に居合わせているかの様なワクワク感を産む

    一癖も二癖もある登場人物達が
    また、たまらなく良い

    続編読みたいなぁ

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    2025年10月02日
  • 雲上雲下

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    もしこの本をホリエモンが読んだらバカにするんだろうな。でも私はとても好きですね。現在44歳ですが、ここ10年ほどは読書にハマってます。デジタル過ぎる世の中に嫌気が差しております。といいつつもスマホは持ってますが。

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    2025年10月02日
  • 福袋

    匿名

    購入済み

    天保の改革くらいの時代の、庶民の生活を生き生きと活写した短編小説集。
    冒頭の作品は、主人公が筆、というところでもう面白い(笑)
    湯屋の少女は可愛いし、莫連女はカッコ良い。
    羽織裏の肉筆画を描く女絵師の、少し色っぽい話もあるし、神田祭のトップをくじで引いてしまう旦那、その日暮らしの若い衆が、モノを売る楽しみに目覚める話など。
    表題作は大食いが過ぎて出戻りになった姉を抱えて弟が、姉を大食い大会に出させて賞金を得て、うまくいかない妻を離縁しようとする、おかしみの中に少し哀しさも混じる話でした。

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    2025年10月01日
  • ボタニカ

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    ネタバレ

    NHK朝ドラ『らんまん』の原作
    植物学者 牧野富太郎博士の話し

    面白かった

    根っからの学者なんだと思った。しかも、田舎のボンボンで本当に社会性が無い

    あんなに有名なのに最後まで困窮していた事にびっくり

    そして、自分は漢字に強いと思っていたが、語句を読めない物が多く反省した。浅井まかて氏、物凄く博学だなと思った

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    2025年09月29日
  • 実さえ花さえ

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    時代小説の醍醐味のひとつは人情だと思っている。この方の作品は初めて拝読したが何とも清々しさに心が洗われるようだった。この時代の市井の人々が花を育てる習慣があったことも初めて知った。と言うか見識の狭さを露呈するがそのことを描く作品に出会ったことがなかった。書評を読んで他の作品も読みたくなった。

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    2025年09月26日
  • ちゃんちゃら

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    久しぶりの時代小説。久しぶりの朝井まかて。
    「すかたん」をずいぶんまえに読んでとてもおもしろかったのでまちがいはないだろうと。
    タイトルの雰囲気が似ていたし。
    江戸徳川11代の時代の庭師の話。いいなあ。タイムスリップするならこれくらいの時代に行って、お百合のような町娘になってみたい。
    登場人物がみんな生き生きしている。ちゃらはもちろんだけど、五郎太がかっこよすぎる。
    お百合に惚れているのに、プロポーズまでしたのに、お百合のこころはちゃらに・・・すると、潔く身を引いて。
    庭の描写や高野槙の仕立て方、石の組み方。ずいぶんと作者は勉強したことだろう、奥付の参考文献を見て納得。長兵衛が、「絵に描いたよ

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    2025年09月10日
  • 恋歌

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    流石、直木賞受賞作。中島歌子がまさか、あの天狗党一味の奥方だったとは本書を読むまでは知らなかった。一気読みです。

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    2025年08月27日
  • 恋歌

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    幕末の水戸藩に嫁いだ中島歌子の人生。
    門下生の三宅花圃が手記を読む形で物語が始まる。史実に基づいた物語に、和歌に込められた心情を巧みな描写で色をつけていくような、引き込まれる文章です。

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    2025年08月24日
  • 青姫

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    ネタバレ

     予想外に(と言ったらとても失礼なのですが)面白かった。ファンタジーのような時代物のような。
     杜宇と久四郎は心を通わせていると信じたかったが、ばっさり裏切られた。でもそれがストーリーにいい味を加えたように思える。
     最終章、良かった。

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    2025年08月04日
  • 白光

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    恥ずかしながら、イコンというものの存在を初めて知りました。
    わたしは絵は描けませんが、これまで漠然と「絵を描くということは芸術」なのだと思っていたので、主人公が思うように絵を描かせてもらえず苦しんでいる間、そのように仕向ける指導者の想いはまったく理解できませんでした。しかし主人公が突然「信仰」を理解するシーンは、それまでの価値観が剥ぎ取られるような、それでいてすべてが腑に落ち、憎しみが削げ落ちて愛の光に包まれるような、インパクトのあるものでした。
    読後半年以上経ちましたが、あの表現し難い衝撃のようなものは胸に残っています。
    中途半端でなく信仰に生きることを貫く人の、凄みのようなものを感じました

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    2025年07月26日