森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。
類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しん
...続きを読むでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている森家の姿勢がこの時代特有の豊かさを表しているように感じた。
誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の生き様を触れ、物語序盤に関わらず明治の男の生き様をみた。
独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。
一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。
二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。
作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。
朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。