朝井まかてのレビュー一覧
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やっと気持ちが乗って読み始めたら、一気読み。
なんとない恋物語から一変し、読むのが辛いのに、止められない。
歴史上幸せな結末でないとわかっているのに、水戸藩の幸せを祈ってしまう。
愛する人を失うとは本当に恐ろしいことだ。斬首も自害も戦死も、想像しただけでゾッとした。
それでも、人は、進まなきゃいけないのだよね。
どうしようもない時代を生きた人たち。その人たちが切り開いていった未来。それが、わたしが生きている今。忘れちゃいけないね。
やり切れない切なさ怒り、そして美しさ。
和歌に興味を持っていたタイミングだったこともあり、大変に響きました。
良き涙を流せた。ありがとうございます。 -
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もしかしたら歴史小説を初めて読んだのは忠臣蔵だったかもしれない。
何作か読んだと思うけど、久しぶりのこの忠臣蔵はアンソロジーで、様々な視点で7人の歴史小説家が書いています。
葉室麟『鬼の影』
朝井まかて『妻の一分』
夢枕獏『首無し幽霊』
長浦京『冥土の契り』
梶よう子『雪の橋』
諸田玲子『与五郎の妻』
山本一刀『笹の雪』
どれも視点が新鮮で面白く読めました。
お気に入りは朝井まかてさんの『妻の一分』。
江戸っ子の語り口調が噺家さんみたいだなぁと楽しく読み進めると、この語り手の正体がわかった時に笑っちゃって!
それと神崎与五郎の元妻の話も、ドラマで見たような話だったけど、うるうるしちゃった -
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葛飾北斎の娘、葛飾應為ことお栄さんの話。
当時では女性絵師は珍しい。女性は家事というジェンダーロールが疑いなく信じられていた頃。
お栄は、描かずにいられない絵師の業が身体に備わっている。絵の才もある。父親の北斎と同じ。
しかし女性であるお栄の感覚は、母親や夫からは欠陥としか見做されない。
やりきれない夫婦生活が破綻したところから小説が始まる。
父であり師であり親方の北斎の工房で、お栄は絵筆を振るう。この辺りはワクワクするお仕事小説になる。
北斎を慕う渓斎英泉との交流も読みどころ。
渓斎英泉がとても良い。色っぽい男だなあと思った。
女性だから、元夫よりも、絵への情熱も才気もあるのに、独り立ち -
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ネタバレ長崎の油商・大浦屋の女あるじのお希以(けい)は女だてらに海外との交易をしたいと願う女商人。
時代は浦賀に黒船がたどり着いた時期、彼女はこれを機会と思い、通詞(通訳)の品川という武士を通じて、テキストルという青年と交易をおこなうことになる。
油を売るはずの油商が油ではないものを売る、ということで周囲の反対や反発を受けながら、お希以は自分の求める自由交易へと突き進んでいく。
長崎女性三女傑(という方がいるのですね、知らなかった)の一人である大浦慶人生を描いた一代記です。
まず、思ったのがとんでもない女性があの幕末の混乱期にいたものだということでした。
そして、何よりも彼女の周囲にものす -
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大矢博子さんの解説を読んで、そうだったのか!とスッキリした。読み初め、やや物語に入り込めない感があったのだが、「おあい」を見ていた自分が、いつしか「おあい」として見るようになっていき、すっかり作品世界に没入していたからだ。大矢さんが書かれている「思えば、目が見えない ー 映像情報がないということは、テキストのみで構成される小説を読む行為と似ている、と言えるのではないか。さらに本書はおあいを語り手にしたことで、物語の中にも人の目鼻立ちや風景の直接の描写はまったく出てこない。しかし読者の目には、台所に立つおあいの姿がはっきり目に浮かぶ。桜鯛を捌く彼女の手が、彼女が出会った人々の様子が、それぞれの読
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ネタバレ戦国乱世が終わって、吉原が出来上がるまでの物語を一人の女将の目から描いた作品。
元々、新しいものが作り出されていく作品が大好きな私には最高に面白かったです。
葦しか生えず、水はけも悪い最悪の土地に売色の場所を作ろうという江戸幕府の思惑から始まった吉原の計画。
土地を埋め立て、ここで生きていくためのルールを定めて、ここへの力への入れ方は凄いなぁと思いながら読んでいました。
戦国の時代は終わって新しい時代を自分たちで作っていくのだという巨大なエネルギーと売られてきて色を売る女たちの哀しさ。その対比の見事なこと。
朝井さんの小説は本当に面白いです! -
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江戸時代の介護ヘルパー…という設定の職業人の話。
全く知らない世界観で、どの老人に話も非常に興味深かった。
介護しながら指南書を作るために自分自身の気持ちを見つめ直すくだりでは、今の介護にも通じる落としどころがあり、妙に納得した。
介抱人としてはベテランで引く手あまたの主人公も、プライベートは恵まれているとはいえず、仕事をしながら気持ちの通じ合いにくい母と付き合い、わかれた元亭主とも借金返済のために会うという、そこを読むときはこちらの気持ちも沈んでしまう。
ただ、周りには主人公の理解者がいて、なんでもすべて味方だというのではなく、必要な意見をちゃんと伝えてくれる。年齢層の離れた友人というか、 -
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井原西鶴と言えば、「好色一代男」を書いた坊主頭の人という知識くらいしかなかったが、読みやすく、登場人物がとても魅力的で非常に面白かった。
盲目の娘おあいの目を通して、父として、また、俳諧師、草子書きとしての井原西鶴を描いている。自尊心が強く何よりも自分が大好きで、自由奔放に人間臭く生きる西鶴が活き活きとしていて良い。
天下泰平の江戸、将軍綱吉の時代を背景に、俳諧が世間を席巻していくさまは、現代にも通じるワクワク感があり、松尾芭蕉や近松門左衛門など、歴史上の人物も登場し、歌舞伎や浄瑠璃といった文化が熟成されていく過程を垣間見ることができる。
盲目の娘おあいの作る料理の数々も、全部美味しそう -
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歴史の「その時」を描くとともに、しっかりしたお仕事小説でもあった。
多くの人に読んでほしい良作。
幕末、開城前夜の江戸城大奥。
大奥はハーレムではなく、女性が自らの才知と器量を発揮し、矜持を抱いて働く、数少ない場だった。
政治と戦争の影響によって、働く場が消失する。
その場に臨んだ5人の大奥女中が、去り難く、信じたくない思いで、職場であり家であった大奥に留まる。
彼女たちの思いに共感した。
いよいよ開城の日、占領する側の男たちの態度ときたら! 憤りを禁じ得なかった。
女性の働く場を土足で荒らした男たちに、言い得ぬ怒りを感じるのは、現代の諸々を想起させるからと思った。 -
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神田三河町の小児科医 天野三哲 娘 おゆん
お話しは ずっと長屋の人たちと薮医と言われててもツボはしっかり押さえてる
でも いい加減なお医者の話し
と思ったら
なんと 天野三哲は 御殿医の家系の息子だった!
なんて話しになる。
毎日 手伝っている娘のおゆんも 父親がどこで産まれて 親は誰か
なんて話しは聞いたことがなかった。
乳飲み兄弟で幼馴染の次郎助は 身近すぎて なかなか恋心は いだけない。
もと武士だった男前の佐吉には ぽおっとしてしまう。
佐吉の別れた奥さんが出てきたり 佐吉と勇太が長崎にいくことになったり
当初 予想してたのとは違う展開
ふらここ とはブランコ