朝井まかてのレビュー一覧
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最近民藝に惹かれているので、民藝にかかわる人たちの物語を知りたくて読んでみた。
柳宗悦は民藝を創設したすごい人かもしれないが、家族から見れば困った人。
自身の散財で家計が苦しいのに、金に糸目をつけずに民藝の品を収集する。
若い仲間たちを気遣うのはよいが、手間や費用は人任せ。
自分は好き勝手しているのに、声楽家である妻の留学には難色を示し、子どものように不機嫌になる。
一方で、河井寛次郎は、卓越した才能があり仕事には厳しいものの、誠実で温かい人物として描かれている。
柳の散財で窮する彼の妻に「困ったらいつでも来なさい。黙って耐えたらいけない。必ず相談してください」と言い、実際に援助を続ける。
先日、河井寛次郎記念館を訪れたとき、彼自身が設計し、彼の美意識にかなった家具調度がおかれた空間がとても心地よかった。
あの場所を居心地よく感じたのは、河井の人柄があの家をつくっていたからかもしれない。
小説の本筋からはそれるが、創作とはいえ、河井の人柄や陶工としての姿勢に接して、ますます河井寛次郎が好きになった。 -
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単なる後継話のこじれが、大疑獄事件に発展した。その裏には江戸時代特有の政治的な背景もあるのだが、そこはそれ。楽しく最後まで読めた。
吉宗の御代。大阪奉行所の奉行は江戸からやってくるので、誰も名前を覚えていない。今は稲垣淡路守が奉行で11年目。その家臣の御家老源四郎が芝居茶屋に来ている。
木津屋は身代がついえる寸前なのだ。今は取り繕っているが、そろそろ限界だ。お瑠璃が臭いを嫌がるので煙草をやめていたが、昨夜吸ってしまった。兄が死んだ。急いで向かう。兄の葬儀を仕切ろうとしたが、大番頭に追い出される。
吉兵衛は塾生たちの面倒をみている。亡くなった兄の娘の伊波が訪ねてくる。伊波は大番頭が偽の遺言書を作ったという。養子に入るはずだった乙之助は女性がダメなタチで住太夫と懇意にしている。大番頭を追い出すことに成功した。
吉兵衛は辰巳屋の跡目相続をしたところ、想像以上に貸付が多く、手元にお金が残っていなかった。大和屋さんと町役人が連れ立ってやってくる。おん出ていった乙之助が訴状を出したらしい。すぐに申し渡しがあって、構いなし正当と認められた。しかし目安箱に再度投書されて大岡忠相が裁くことに。
伊波が亡くなった。吉兵衛は江戸送りになり、入牢させられる。 -
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ネタバレ読後ややしばらく、ほーっとなり、山下りんの生涯に思いを馳せた。この本は日本で初めてのイコン画家 山下りんの物語である。あまり知られていないかもしれないが、ハリストス正教会の聖堂にはイコン画と言われる、聖書の一場面や聖人などの肖像画が飾られており、それを描くのがイコン画家だ。
1857年幕末に生を受け、維新を経て、家禄の少ない士族として母と兄、祖父母とほそぼそと暮らしていた16歳のりん。当時は女は嫁ぐことと決まっていたが、幼いころから絵を描くことが好きだったりんはその道を行かず、画家として生きる道を選ぶ。
自分が「こう!」と思ったらまっすぐ突き進む。どんな軋轢も、困難も、貧困ももろともしない。「絵を描きたい」その純粋な思いが胸を打つ。
フィクションとはいえ、史実には忠実で、急流の様に流れていく明治、大正、昭和の時代を駆け抜けていく。「死なば死ね 生きなば生きよ」彼女の力強い言葉がほとばしる。
訴えてくるのは強く、激しく、痛々しいほどの絵画への情熱。
折々に登場するりんを取り巻く実在の人物たちが物語に息を吹き込み、渇望し、打ちのめされ、葛藤を繰り返すりんの姿が真に迫る。
圧巻は巻末に記載された参考文献の多さだ。史実にあらがうことなく、一人の人物を書ききるために、これほど大量の文献を読み解く必要がある、ということか。
しかし、これはあくまでもフィクション。歴史の登場人物はもはやすべては夢の中。
史実をしっかりと把握したうえで、その目で見てきたかのように想像を膨らませて、一人の一生を書く。作者の想像の世界のなかに入り込み、りんの人生を伴走したかのような気分になる。浅井まかてさんの力量に拍手を送りたい。 -
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尾張藩主徳川宗春をめぐる尾張藩名産まつたのお話。面白かった!!
小四郎は尾張藩藩士。江戸定府で元服間もない。経理に携わる軽輩である。父の旧友であるさんべえ、三谷官兵衛、長井藤兵衛、伊藤伝兵衛がやってくる。さんべえに連れ歩かれ、そして伝兵衛の刀が盗まれた。なぜかさんべえに連座させられている。減俸と逼塞を申しつけられる。そして小四郎は松茸同心を申しつけられる。
江戸から松茸2000本を頼まれるが、300しかできず、商人から買い取って江戸に詰め替えて送る。さらに2000本を言いつけられる。上役の矢橋が松茸をどうすればたくさん取れるのか考え続けて15年になるという。商人に頼んでいることを殿が知らないという。
3年経った。小四郎は邪険に扱われている。御松茸狩が行われ藩主が来る。その後小四郎は山を手入れしている。松茸は痩せた土地を好む。小四郎の持ち帰った枝は村の者たちが使っている。村の者は御山への立ち入りが禁じられているが、松茸同心の雇い者ということにしてみんなで手入れすることとなる。
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老いに対して如何に支え合うかという普遍的な課題、時代は変われども、江戸時代も現代と同じ悩みや葛藤を持ちながら、介護看護に取り組んでいたんだと教えてくれるストーリー。
仕事とは言え、他人の介護看護には親身になって尽くすのに、自分の母親には素直になれない主人公の葛藤、現代も変わらないのではないかと、共感してしまった。
武家時代の忠孝という規範の縛りがあるとは言え、親の介護看護に疲弊し、家族関係が崩壊しかける描写は、制度や仕組みが新しくなった今の時代の「老老介護」や「手厚くならない介護職」の問題に対して何も変わっていないのだな。
介抱人の仕事を通して、死に向かう時間に寄り添い、老いの豊かさに少しずつ気付きながら自身の悩みや葛藤に折り合いをつけていく主人公の心の成長に感銘した。
刺さった一文
•若い者にとっての死と、衰えによってこの世を去る死とは違うのだ。
•水も受けつけなくなった時に、もうお迎えは来てるんじゃないか。
•死ぬ時は皆、独りです。
たった独りでその恐ろしさに耐えるんです。
それだけはいかに孝行な子がいても、誰も代わってあげられない。
だからそばについて手を握り、言葉を交わします。
精一杯、笑って、大丈夫だよと声をかける。
内心では親を見送るのが怖い。この世からいなくなると思うと、介抱してる方も怖いんです。
いかほどの覚悟したって、たいていの人はそうです。
死にたくないし、死なせたくありません。 -
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まかてさんプレゼンツ、江戸の介護実態。派遣の介護人お咲が一生懸命に介護をしながら紡がれる人情噺。面白かった。
お咲は介抱屋として仕事をしている。40歳くらいの母を養っている。江戸では当主になる者が介護をする。孝を幕府が大事にしているせいだ。
料理屋の主人が3日間家を空けるのでと仕事を頼まれた。中風の後で半身不随だが、頭はしっかりしている模様。お咲は母の借金を背負っているので働かなくてはならない。母はお咲の嫁ぎ先からお金を無心して、お咲は離縁された。給料の前借りにも来る。
道楽婆さんの相手を頼まれる。釣りに連れて行かれて、お咲は酔ってしまった。10日間と言われているがほとほと疲れる。何をやっても楽しくないらしい。そこで菊を見かける。
お咲は別れた仙太郎と会っている。仙太郎には新しい奥さんとの間に3人の子がいる。お咲はお金を返す。
老婆をご隠居様と呼んだら、男なのにお嬢様と呼べとすごまれた。失禁癖がある。家族に呼ばれて耄碌しているかどうか確かめられる。
貸本屋が介護の心得を出版したいらしく、その指南を頼まれる。しかし題材が題材だけになかなか筆が乗らない。
大奥勤めをしていた松と梅の姉妹を世話しているが、妹の梅が松のしたいことを邪魔をしているように見える。家に帰ると、母の恋人がいた。挨拶されて、家を飛び出した。 -
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ネタバレとてもよかった。私の身体や心によい小説。
もういちどはじめから読みたいと思う小説はほぼないけど、これはもう一度読みたい。
輝ける仲間たち、前から好きだったが、ますます好きになれた。
鮮やかにつぶさに情景がうかぶ。
朝市で「いいね」と目を輝かせる人々と後に続く大蔵大臣。
ねえやの目を通して、その時代の新しい価値観が生まれる瞬間を味わえた。
「グロリアソサエテは三人だけじゃない。奥様、家族、そしてたくさんのひとの心が光を放っている。」と沖縄で思うねえやの佇まいもとても美しい。
10年も前になるが、壷屋で自分で探して買い求めた小皿たちがある。毎日使いながら日々の暮らしの中に用の美を感じられて豊かだな。今の時代まで残ってくれていてありがたい。
民藝には
その工芸品そのものの良さだけでなく、日常の丁寧な営みを尊ぶこころも含んでいるのだな。
だから、好きなのだな。私は。
小説を通じて、ずっと流れる風は、人に対してもモノに対しても生活そのもに対してもきちんと向き合って気配る清々しいもの。お金や欲や出自や何やらやたくさんのわずらわしさの間にも、こうあろうとする姿勢、それは美しいもの。そこに民藝はスポットライトをあてたのだな。
自分が何故民藝に惹かれるのか、前より少しわかった気がする。
また、読む。
ずっといきたいと思っている河井寛次郎記念館にも必ず行く。
P.s.
沖縄の気風のこと
征服された国の宿命
世界が隔てられないための同化、、、
美しいものが光れば光るほどそれを容赦なく奪い壊していたある時代の日本のことも重く感じた。 -
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歴史物が苦手なので時代小説もあまり得意ではなく、義母に勧められて一度借りるもあまりの分厚さに手が出ず…
リベンジともう一度手にしたら、あまりの面白さに驚く。
上方落語のような、調子のよさ。
読んでいるはずなのに、まるで落語を聴いているのかのように会話のやりとりが心地よい。
意味がわからない単語が次々でてくるけれど、平気の平左で読み飛ばせる。でもストーリーは追える。私でも読める!という喜び。
私が時代小説が苦手なのは、日本語なのに単語がわからないからなのかもなぁ。
子どもの頃、本を読むとわからない言葉ばかりで読むのをやめてしまった日々を思い出す。
この本は、先の展開が全く読めないし、全然期待通りに展開しない。全くいつになったらどらちゃんは大成するのかとヤキモキしっぱなし。
放蕩息子をハラハラしながら見守る母のような気持ちで読み進め、今か今かとハッピーエンドを期待したままあっという間に読み終えてしまった。
ハッピーエンドを期待させてなかなか成功しないっていうところが上手いなぁと思う。
道具商や富山の薬売りのマーケティング術を知って驚いたり、大潮平八郎の乱という歴史上の事件について知ることができたりと、知識欲も十分に満たしてくれた。
これ、Audibleで聴いても面白いだろうな。
ドラマにしてもよい!
朝井まかてさんはほんとにいい本を書くなぁ。 -
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『恋歌』は、幕末の歌人・樋口一葉…ではなく、樋口一葉の師として知られる中島歌子の半生を描いた、第150回直木賞受賞作品です。
特に印象に残ったのは、崇徳院の百人一首の歌です。
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
「今は離れ離れになっても、最後にはまた会えると信じている」という恋の決意を表した歌で、この物語全体を象徴しているように感じました。
物語は、歌子のおてんばな少女時代から始まり、恋をし、やがて水戸藩の天狗党の乱に巻き込まれます。投獄されるなど過酷な運命に翻弄されながらも、一人の人を信じて待ち続ける姿には心を打たれました。
また、二度と内乱が起こらないようにという願いが込められた和歌も印象深く、激動の時代を生きた人々の思いが伝わってきました。
私は時代小説が少し苦手なのですが、朝井まかてさんの作品はとても読みやすく、Audibleでも物語に自然と引き込まれました。直木賞受賞作らしい読み応えがありながら、最後まで飽きることなく楽しめた一冊です。
時代小説に苦手意識がある方にも、ぜひ読んでほしい作品だと思いました。
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牧野富太郎の波瀾万丈な人生を朝井まかてが軽妙な筆で書き上げた。小さな頃から植物が好きで、官に媚びずあくまでも在野の研究者としての人生を全うしたが、まあ人格破綻というか金銭感覚まるで無し。2人の奥さんが彼を支えてくれた。そう、この物語は牧野富太郎が主人公ではなく、最初の妻、猶と遊学中の東京で知り合い最後まで添い遂げたスエが主人公だと思う。富太郎の研究を経済的に支え、最後は破産手続きを完了した猶の健気さ。江戸っ子の粋を感じるスエの楽天的な性格。この二人に守られて富太郎の学問は成就した。学問以外は何も分からない、何もできない富太郎、最初の娘を亡くしたところでは思わず、何しとんねんと声に出してしまった。
富太郎が自由民権運動に関わっていた事や明治の最初から帝大の、いやこの国の官尊民卑を知る事が出来た。読みやすいが上品な文章は、さすが朝井まかて。