朝井まかてのレビュー一覧

  • 残り者

    匿名

    購入済み

    天璋院が江戸城大奥を去る日、その天璋院付きの呉服の間のりつがふと針の始末をしたかどうかが気になって部屋に戻ると、
    天璋院の猫サト姫を探しに御膳所のお蛸が姿を見せた。
    そのうち、御三の間のちかも加わりサト姫を探し出し、猫を入れる籠を探しに更に奥へ行くと、
    中臈のふきと、静寛院の宮付きの呉服の間のもみぢもまた居残っていた。

    五人は一晩を共に過ごし、こっそりと長く続いた江戸幕府の終焉を見届ける・・・。

    天璋院の夫だった徳川家定のかすていらづくりの逸話、
    天璋院と静寛院の宮づきの呉服の間の者同士の“お針”対決など、面白く読めました。

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    2025年06月17日
  • 銀の猫

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    介護(本作中では「介抱」)がテーマになる話を、現代を舞台にした小説で読んでいたら、実際に介護にかかわる日々を送っている読者にとっては、あまりにシビアで結構滅入ってしまったかもしれません。

    本作を読んでみて、決して滅入ることはありませんでした。これは江戸の町人の暮らしの中での話…と割り切りながらも、老いるということの意味は昔も今も変わらないのだと思いました。

    本作のよいところは、「こうあるべき」とか「こうあらねばならない」などと結論付けていないところなのかなと。むしろ本作そのものが、作中に登場する洒落の効いた『介抱指南』のようにも思えてきます。

    他人さまの介抱にかけてはプロフェッショナルの

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    2025年06月13日
  • すかたん

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    この著者の本は昨日読んだ『恋歌』が初めて。
    『すかたん』は江戸育ちの主人公が一人で大阪に暮らすことになり、江戸弁をからかわれて何度も寺子屋の雇われ師匠をクビになるところから始まる。
    大阪出身の著者だからか、大阪の子供が関東弁をばかにすることをよくご存じなんですね。それと、大阪弁は人によって全然違うということもきちんと使い分けてはるのが良い。(もちろん江戸時代の設定なので、今とは違う言葉遣いもあるけれど)
    私はこちらの話の方が、それぞれの登場人物がよく書き込まれていて魅力的で、ストーリーも経済的なネタがうまく入ってて面白かったです。

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    2025年05月31日
  • 類

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    森鴎外の息子、類の人生を辿った物語。何か劇的なことが起こるわけでもなく、ただただ類を中心とした森家の70年を辿っているのだが、全く退屈することなく、この長編を最後までじっくりと味わいながら読むことができた。

    大正モダン、鴎外の子煩悩ぶり、戦前の豪邸、芸術家が切磋琢磨するパリ、戦時中の庶民の暮らし、戦後のバラック、「もはや戦後ではない」と言われた昭和の暮らしぶりなどなどの描写が美しく、一つ一つの文から情景や当時の人々の雰囲気が伝わり、実に味わい深い。自分が生まれる前の日本の姿が目に浮かぶようで、このような時代を経て、今の日本があるのかとしみじみ思う。

    「本当の夢は、何も望まず、何も達しようと

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    2025年05月28日
  • 恋歌

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    普段あまり時代物を読まないタイプだが一気に読み進めてしまった。
    とにかく切なく、やり場のない思い。
    と同時に武士の生き様を見たという感動。
    どんな状況になろうが誇り高く生きている姿に心を打たれた。
    私もこんなふうに真っ直ぐ生きたい。
    歴史に名こそ残せなかったかもしれないが、その者たちの人生をかけた戦いにより今の私たちの暮らしがあると思う。今自分が立っている場所は昔誰かが流した血が染み込んだ大地、昔誰かが愛するものを信じ、歩き続けた道なのかもしれない、そう思うと今の、あまり不自由のない生活をできている事に感謝をしながら胸を張って歩きたい。

    また、貧しさは人の心を狭くする、という言葉に、税金や物

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    2025年05月16日
  • 実さえ花さえ

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    既に時代小説の大家の趣のまかてさんの処女作「花競べ 向嶋なずな屋繁盛記」の改題文庫版を拝読。とても処女作とは思えない円熟味のあるストーリと描写力で、江戸寛政の世にスムーズに誘ってくれる。登場人物の魅力も際立っており、この後の活躍が約束されたような傑作。

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    2025年05月07日
  • 草々不一

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    江戸時代の武士の8つの物語を綴った短編集。
    浪人となった男の仇討ち、商家に奉公していたものの兄の死により後継として呼び戻された下級武士、良家への婿入りと不思議な条件をつける嫁、将軍の料理番、大内内蔵助に拾われた犬から見た忠臣蔵、時に聞役という留守居役、女流剣士、字の読めぬ隠居の手習など多様でキャラ立った主人公を中心に繰り広げられる物語が秀逸。

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    2025年04月19日
  • ボタニカ

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    ようやく読み終わった。最後は駆け抜けるように、一気読み。
    牧野先生の生涯、植物一筋で心惹かれます。
    植物にも人にも分け隔てないところが、また魅力的です。

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    2025年03月23日
  • 眩(新潮文庫)

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    江戸町人物のアート小説という捉えで存分に楽しみました。特に「夜桜美人図」や「富士越龍図」の章では、まるでその制作の様子を見ていたかのような描写が素晴らしい。それら美術作品の画像を見ながら読むと、一層朝田さんの言葉による表現の巧みさが味わえました。さて、次は本作を原作として映像化した、宮﨑あおいさん主演のドラマで楽しむことにします。

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    2025年03月23日
  • 雲上雲下

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    素晴らしい作品。
    伝承文学を学んだひとにとっては、
    さらに面白みを感じるかもしれない。

    物語は偽か?
    いやちがう、と私は答えたい。

    では、物語ること、それはなにを意味するのか。

    そのこたえが、ここに在る。

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    2025年03月21日
  • 銀の猫

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    初めて時代小説を読みました。

    言葉の意味や、時代背景が理解できるか
    不安もありながら読み始めましたが
    いらぬ心配でした笑

    とても読みやすく、主人公のお咲や周囲の人の心情、江戸時代の介護の大変さが思い浮かびました。
    人情話は切ない… 泣けますね。

    また他の時代小説も読んでみたいなぁと思いました。
    おすすめがあったら教えてください(^^)

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    2025年03月19日
  • 恋歌

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    はじめて、朝井まかてさんの作品を読んだ。直木賞受賞作の帯に惹かれて購入。
    樋口一葉の師匠である、中島歌子の知られざる過去。
    江戸の商家の娘だった歌子は、初恋の相手に嫁ぐ。幕末に水戸藩士の妻となったが、水戸藩は質素倹約を体現する貧しい土地。尊王攘夷を唱えて過激な行動に出る藩士たちと、不安定な情勢。ついに藩内の内乱となり、歌子たちも捕えられ投獄される。その獄内の悲惨さや、次々斬首させていく命のあっけなさが、幕末という革命の時代の恐ろしさを表していて恐ろしい。後半は引き込まれて一気読みだった。

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    2025年03月17日
  • 落花狼藉

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    初めは日本橋にあった吉原が、新吉原として浅草に移転するまでの波瀾万丈な物語を、吉原一の大見世・西田屋の女将の花仍(かや)の視点から描く大作。
    元吉原が始まったのが江戸時代初期、新吉原への移転が明暦の大火(1657年)以降なので、大河ドラマ『べらぼう』の舞台は新吉原ということになる。
    花仍をはじめ、西田屋のトラ婆、清五郎、松葉屋の女将多可、三浦屋の女将久、若葉など、登場人物たちがなんとも魅力的で、そのどうにもならない運命に心が痛むが、惹かれてしまう。
    江戸の大火は延宝から慶応のおよそ200 年間の間に22回も起きており、江戸はそのたび焼き尽くされた。それが吉原の運命も左右していく。

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    2025年03月16日
  • 恋歌

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    幕末が好きな私。

    "尊王攘夷とはいったいなんだったのか?"

    この問いを、忘れてはいけないと感じた。

    内戦があってもなくても、

    ひとびとの生活は続いてゆく。

    そこに影を落としてはならないのだ。

    もっと世の中のことを知りたい。
    もっと日本を知りたい。
    もっと世界で起きていることを知りたい。

    これらの、いままでになかった、私の心の奥底から出てきた欲求は、私自身、そして私自身の【人生】を真剣に考えていきたいというおもいの表れであると考える。

    この作品で感じたことは、
    いまの世の中、いや世界に思いを馳せるきっかけとなるであろう。

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    2025年02月27日
  • 類

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    素晴らしかった。
    ほんとに素晴らしい本だった。
    心にくるものがすごく深く、また大きすぎて、
    【素晴らしい】という言葉しか思い浮かばない。

    あの描写がよかった、あそこの表現に感動した、
    などという、巧い文章にできない。
    そういうところは、言葉より音楽を愛していた、
    幼い頃の私が出てきてしまう。

    文章で表したいのに、言葉にすると、いま感じていることの、とても細かい部分を取りこぼしてしまいそうになってしまい、どうしたらいいのか、私は分からなくなる。

    そんなことを発しても、芸術をも愛していた森類氏は、わかってくれるだろうか?

    想像してみるのも、また面白く、きっといつか、再度読みたい、森家の人間

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    2025年02月27日
  • グッドバイ

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    朝井まかてさんの時代もの、400頁近くあるが、ほぼ一気読み。長崎に実在した油屋の豪商、大浦屋の女主人お希以(おけい、のちに慶と名乗る)の波瀾万丈の物語だったので、先へ先へと読まされた。

    いつもながら、登場人物たちの個性が際立つ描き方が素晴らしく、名前があればすぐに「ああ、あの」と浮かぶので、長編の中でも迷子にならない。歴史に名を残した人たちよりも、友助やおよし、弥右衛門などの使用人たち、茶葉に関わるおみつや茂作たち、茶葉の輸出のきっかけを作ってくれるテキストル、市井の人たちの方が魅力的に描かれている。
    それにしても、幕末にすごい商人がいたものだ。
    朝井まかてさんの『朝星夜星』の自由軒もちょこ

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    2025年02月19日
  • 白光

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    山下りんという聖像画師の一生を描き切った、読み応えのある本でした。
    りんが壁にぶつかりながらも、次第に画師として1本の道をしっかりと形作っていく様子に胸打たれました。
    人の人生を小説という形で味わえる、最高の作品だと思います。読めて良かったです。

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    2025年02月13日
  • 青姫

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    日本のもつ、神、武士、稲作を通して
    伝わってくるものが、あります。
    郷に集まる人達、姫につく人達の生きざまを
    みたような気がします。
    激しいシーンもありましたが、
    読み終えたあとは、四季折々の稲作の風景
    が、残ってます。

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    2025年01月22日
  • すかたん

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    岩村藩士の夫に先立たれ、江戸に帰る費用を稼ぐ為大坂の青物問屋河内屋の上女中として奉公に出ることになった知里。芸妓遊びに興じ、自由人の若旦那清太郎。二人が違法である野菜の立売を行う富吉と出会ったところから物語は進み出し、清太郎の野菜を売る商人としての真っ直ぐな気持ちを知り恋心が芽生える知里。
    二人の恋の行方、ひそかに野菜問屋仲間を牛耳ようと陰謀を企む伊丹屋をこらしめる勧善懲悪の物語、大坂言葉と商人の生活が詰まったら時代小説です。

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    2025年01月12日
  • 銀の猫

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    江戸時代、介抱人という職業自体はフィクションらしいが、親子の関係はこういう感じだろうなあと思う(現代も変わらない)。庄助とおきんさんの件は見に積まされるところがあって、また読みたくなりました。

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    2025年01月12日