朝井まかてのレビュー一覧
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朝井まかての本を初めて読んだ。心地よい。次はデビュー作から順に読んでみたいなと思った。
「季節の中で風がいちばんうまいのは、夏の初めだ。」という文章で物語は始まる。これは題名にあるちゃんちゃらが口癖のちゃらの言葉。浮浪児だった彼は庭師辰蔵に声かけられ、庭師としての修行、腕をあげていく。序章から第一章に入り心惹かれる施主の娘の言葉としても「風がいちばんおいしいのは夏なのよ。」があり、終章 ちゃらが亡き後、辰蔵の娘お百合が「季節の中で風がいちばんうまいのは、夏の初めだ。」と石積みの階段を駆け上がるという情景描写がある。
序章 緑摘み、第一章 千両の庭、第二章 南蛮好みの庭、第三章 古里の庭、第四 -
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北斎の娘・お栄。父同様に絵の道を進む、彼女の熱い生涯を描く。
第一章 悪玉踊り 第二章 カナアリア 第三章 揚羽
第四章 花魁と禿図 第五章 手踊図 第六章 柚子
第七章 鷽 第八章 冨嶽三十六景
第九章 夜桜美人図 第十章 三曲合奏図
第十一章 冨士越龍図 第十二章 吉原格子先之図
参考文献有り。葉室麟による解説と対しての謝辞。
絵を描くこと、色彩に魅せられ、絵師の道を歩む北斎の娘・お栄。
家族との確執、報われぬ恋、老いた父・北斎の世話等、
ままならぬ生活の中での、彼女の生き様を描いています。
それにしても北斎の存在の重さ。独り立ちした者にも、お栄にも、
北斎の側 -
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朝井まかてデビュー三作目。
江戸時代の大阪が舞台の、笑えて威勢のいい商家物です。描かれる業界は、植木屋から離れて、青物屋へ。
大坂城へ赴任した武士の夫と共に、知里は生まれ育った江戸から大坂へやってきました。
ところが、頼みの夫が急死。
食い詰めかけたが~ひょんなことから、青物問屋の老舗「河内屋」で働くことになります。
それも、お家さん(女主人)の志乃に仕える上女中として、びしびししごかれることに。
仕事を紹介してくれた若だんな・清太郎は、家にろくに寄り付きもしない道楽息子という噂。
しかし、野菜にかけては真剣で、農家にも熱心に顔を出している。
さまざまなトラブルに一緒になって奔走し、河内屋 -
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たまーに、上方落語の番組を観ます。流れるようなしゃべりと、様々な人を一瞬で演じ分ける演技は毎回すごいな、と思うのですが、その落語の演目にこの『すかたん』の冒頭を入れてもいいのではないかなあと、思ってしまいます。
夫に共に江戸から大阪に移り住んだ智里ですが、その夫が急死。智里は子どもたちに手習いを教えることで、糊口をしのいでいます。
しかし、大阪の子どもたちに言葉遣いをからかわれ職を失い、その上空き巣に入られ、家賃が払えないという状況に。そこに現われたのが青物問屋の若旦那である清太郎。ただ、この清太郎がなかなかのくせ者で。
智里と大阪人たちとの小気味の良いやり取りと語り口、江戸から来た智里の -
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江戸幕府の5代将軍であった徳川綱吉の物語である。
“最悪の将軍”という題名が酷く目立って、同時に強く好奇心を刺激されたので当初は然程気に掛からなかったが、表紙イラストに犬が描かれている。徳川綱吉と言えば、“犬公方”なる綽名を賜った人物で、平和になった時代に君臨して、「犬を大事にする」というような、何やら不思議な政策を採っていたというイメージが在るかもしれない。そしてそんなイメージがふわふわと漂う他方に、「どういう人物だったのか?」ということを正面から捉えて描き出そうとするような小説や映画やテレビドラマのようなモノが思い浮かぶのでもない。
そういう中、本作『最悪の将軍』は、徳川綱吉という人物が将 -
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明治天皇の崩御にともなって、明治神宮が出来る。
神聖な人口の森(杜)を作る為の、ストーリーが楽しめる。
日本という国が、江戸という共和国からから脱却して一つの国になった。
その初代元首の苦悩と人となりが軸となり、本書が進んでいくのが良く分かる。
自分自身、どんな元首になるべきなのかに一人で悩み、考え、口を出さず、態度と詞華でもって政治に接し、明るかった人となりが、日露戦争を境に寡黙になっていく。
自身のことを二の次にして、国務に精励する。
日本をひとつにし、世界と対等になる為に駆け抜けたのが明治時代。
伝統と風習を守りつつ、欧州の近代国家を目指すという、ジェットコースターな統治。
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