朝井まかてのレビュー一覧
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もしかしたら歴史小説を初めて読んだのは忠臣蔵だったかもしれない。
何作か読んだと思うけど、久しぶりのこの忠臣蔵はアンソロジーで、様々な視点で7人の歴史小説家が書いています。
葉室麟『鬼の影』
朝井まかて『妻の一分』
夢枕獏『首無し幽霊』
長浦京『冥土の契り』
梶よう子『雪の橋』
諸田玲子『与五郎の妻』
山本一刀『笹の雪』
どれも視点が新鮮で面白く読めました。
お気に入りは朝井まかてさんの『妻の一分』。
江戸っ子の語り口調が噺家さんみたいだなぁと楽しく読み進めると、この語り手の正体がわかった時に笑っちゃって!
それと神崎与五郎の元妻の話も、ドラマで見たような話だったけど、うるうるしちゃった。
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葛飾北斎の娘、葛飾應為ことお栄さんの話。
当時では女性絵師は珍しい。女性は家事というジェンダーロールが疑いなく信じられていた頃。
お栄は、描かずにいられない絵師の業が身体に備わっている。絵の才もある。父親の北斎と同じ。
しかし女性であるお栄の感覚は、母親や夫からは欠陥としか見做されない。
やりきれない夫婦生活が破綻したところから小説が始まる。
父であり師であり親方の北斎の工房で、お栄は絵筆を振るう。この辺りはワクワクするお仕事小説になる。
北斎を慕う渓斎英泉との交流も読みどころ。
渓斎英泉がとても良い。色っぽい男だなあと思った。
女性だから、元夫よりも、絵への情熱も才気もあるのに、独り立ちの仕事をさせてもらえない状況は、何とも息苦しい。
表紙絵もお栄さんの作品で、現代の目で見ても、上手いと思える。これを浮世絵の時代に描いたお栄さんは、北斎の娘というだけではない、絵の才と技術、探究心のあるすごい絵師。しかし、家事も苦手で子も産まない、当時の女性の常識としては欠陥だらけ。夫に勝る才能があることも、当時の感覚としては生意気で欠点扱いになる。
早く亡くなった姉の子を北斎一家で面倒を見るが、この甥がまあとんでもないクズ。後半はこの甥に北斎とお栄さんは苦しめられ続ける。
窮屈な価値観の中で、絵師としてしっかり自分を確立していこうとするお栄さんの人生。
とても読み応えのある小説だった。 -
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ネタバレ長崎の油商・大浦屋の女あるじのお希以(けい)は女だてらに海外との交易をしたいと願う女商人。
時代は浦賀に黒船がたどり着いた時期、彼女はこれを機会と思い、通詞(通訳)の品川という武士を通じて、テキストルという青年と交易をおこなうことになる。
油を売るはずの油商が油ではないものを売る、ということで周囲の反対や反発を受けながら、お希以は自分の求める自由交易へと突き進んでいく。
長崎女性三女傑(という方がいるのですね、知らなかった)の一人である大浦慶人生を描いた一代記です。
まず、思ったのがとんでもない女性があの幕末の混乱期にいたものだということでした。
そして、何よりも彼女の周囲にものすごい人がいすぎてΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)
それは一旦、置きまして、仕事に対して自分だったらどれぐらいの情熱を傾けることが出来るだろうかと読みながら思っていました。
おそらく、彼女は交易という仕事に誇りを持ち、自分の作りあげた茶葉を自信を持って海外へ売ったのだと思います。
それは誰にでもできることではなかったはず。
時代は尊王攘夷で混乱。海外との取引をしている店には天誅を下すというビラがまかれているような状態。そして、交易がうまくいっていることやお希以が女性であることから、同じ商人仲間からは誹謗中傷を受ける。
決して楽なことではなかったはず、でも、それを超えて自分の見た夢を現実にしていく彼女の姿はものすっごくかっこいい!
読みながら、なんでこんな凄い人を知らなかったんだろうと思うことしばしば。
そんなお希以は慶応になった時に名前を慶とあらためることに。
時代は西洋に追いつけ追い越せとなりますが、ここでお慶は大きな落とし穴に落ちることに……。
詐欺にあってしまうのですよ(;^_^A そして抱えた借金も莫大な金額になりますが、彼女は自ら荷車に茶箱を載せて、店に運び、女衆と一緒に暑い中で竈で茶を炒ると主人であればしないこともすることに。
そして、借財は全額返金! 強い女性ですね。
現在も日本の女性の地位は低いです。ですが、同じように女性の地位が低い時にこれだけのことをしてのけた人物がいると思うと読み終わった時に胸がすくような気持になりました。
勿論、彼女だったからできたのかもしれませんが、でも、どんな女性でも同じ可能性を秘めているのではないかと思うとなんだか口元がにやにやしてしまう私でした。
今年の文庫は朝井まかてさんに作品ばかりに嵌っているような、『落花狼藉』も素晴らしい作品でしたし、この『グットバイ』も心に残る素敵な作品でした。
次はどんな作品を読ませてくれるのかと思うととても楽しみです!
*長崎三女傑:シーボルトの娘・楠本イネ 女商人・大浦慶 ホテル業でロシア海軍兵に慕われた・道永栄
因みに私が知っていたのはおイネさんだけでした。今も道永栄さんのことはわかりません(;^_^A -
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大矢博子さんの解説を読んで、そうだったのか!とスッキリした。読み初め、やや物語に入り込めない感があったのだが、「おあい」を見ていた自分が、いつしか「おあい」として見るようになっていき、すっかり作品世界に没入していたからだ。大矢さんが書かれている「思えば、目が見えない ー 映像情報がないということは、テキストのみで構成される小説を読む行為と似ている、と言えるのではないか。さらに本書はおあいを語り手にしたことで、物語の中にも人の目鼻立ちや風景の直接の描写はまったく出てこない。しかし読者の目には、台所に立つおあいの姿がはっきり目に浮かぶ。桜鯛を捌く彼女の手が、彼女が出会った人々の様子が、それぞれの読者の心の中で再現される。」「もちろん、著者の筆力あってこそだが、これが物語の力だ。」という言葉に、非常に納得した。
とはいえ、解説は作品の読後に読んだのであって、このように整理された考えを頭で理解し読み進めていた訳では、もちろん全くない。
徐々に解き明かされ深まっていく親子の時間を共に生きることで、二人の生涯は幸せだったのだなぁと、静かに満たされて本を閉じることができた。世の中が落ち着き文化が成熟していく時代の、大阪の市井の人々の闊達な暮らしぶりがまた、気持ちを晴れやかにしてくれた。朝井まかてさんは、やっぱり面白い。 -
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ネタバレ戦国乱世が終わって、吉原が出来上がるまでの物語を一人の女将の目から描いた作品。
元々、新しいものが作り出されていく作品が大好きな私には最高に面白かったです。
葦しか生えず、水はけも悪い最悪の土地に売色の場所を作ろうという江戸幕府の思惑から始まった吉原の計画。
土地を埋め立て、ここで生きていくためのルールを定めて、ここへの力への入れ方は凄いなぁと思いながら読んでいました。
戦国の時代は終わって新しい時代を自分たちで作っていくのだという巨大なエネルギーと売られてきて色を売る女たちの哀しさ。その対比の見事なこと。
朝井さんの小説は本当に面白いです! -
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歴史の「その時」を描くとともに、しっかりしたお仕事小説でもあった。
多くの人に読んでほしい良作。
幕末、開城前夜の江戸城大奥。
大奥はハーレムではなく、女性が自らの才知と器量を発揮し、矜持を抱いて働く、数少ない場だった。
政治と戦争の影響によって、働く場が消失する。
その場に臨んだ5人の大奥女中が、去り難く、信じたくない思いで、職場であり家であった大奥に留まる。
彼女たちの思いに共感した。
いよいよ開城の日、占領する側の男たちの態度ときたら! 憤りを禁じ得なかった。
女性の働く場を土足で荒らした男たちに、言い得ぬ怒りを感じるのは、現代の諸々を想起させるからと思った。 -
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神田三河町の小児科医 天野三哲 娘 おゆん
お話しは ずっと長屋の人たちと薮医と言われててもツボはしっかり押さえてる
でも いい加減なお医者の話し
と思ったら
なんと 天野三哲は 御殿医の家系の息子だった!
なんて話しになる。
毎日 手伝っている娘のおゆんも 父親がどこで産まれて 親は誰か
なんて話しは聞いたことがなかった。
乳飲み兄弟で幼馴染の次郎助は 身近すぎて なかなか恋心は いだけない。
もと武士だった男前の佐吉には ぽおっとしてしまう。
佐吉の別れた奥さんが出てきたり 佐吉と勇太が長崎にいくことになったり
当初 予想してたのとは違う展開
ふらここ とはブランコのことらしい。
ブランコに揺れながら 自分の気持ちを整理する。
自分のダメな所とかを考えながら それでも前に進む
この話し 続編もあるのかな?
好きな話しです。
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最初のとっつきは 悪かったです。
寺子屋を首になった頃は やたら江戸うまれを押し通す やな女です。
青物屋の女子衆として 働き始めてから やっと心根がシャンとしたような。
食べることが好きなことが 人生をいい方に向かわせます。
美味しそうに食べる っていいことなんですね。
ご飯作った人も 食べるの見ているひとも気持ちがいい
この美味しいものいっぱい食べる ということが気持ちも素直にさせ いろんな人が目をかけてくれる。
難しく気難しい御寮さん
何故か 裏の畑の世話を知里に任せる。
ここでいろんな野菜を人に聞きながら育てる。
これが 心を耕したのかな?
たぶん 若くして死んだ亭主の方が 若旦那の清太郎より いいおとこだったんだろうなあ!
清太郎のいい所をわかりながら 主人夫婦の心も解きほぐしていく。
ハッピーエンドが大好きな私好みの ハッピーエンドに向かうお話しです。