朝井まかてのレビュー一覧
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ネタバレどら蔵
著者:朝井まかて
発行:2025年9月8日
講談社
初出:2023年3月~2025年2月新聞掲載(陸奥新報ほか)
朝井まかてによる時代小説の新刊本。地方紙9紙に順次連載した作品。大阪は船場・北久太郎町にある道具商「松仙堂」の長男・松井寅蔵が主人公。舞台は主に江戸、時代は幕末に近い天保年間(主に1830年代)。寅蔵は船場・高麗橋にある骨董商「龍仙堂」で丁稚として修業の身だが、すでに18歳になっている。松仙堂は龍仙堂の別家筋で、何代か前がのれん分けされて開業した店。血のつながりがない「別家筋」。
血のつながりがないので、何代を経ても家臣のごとき身分で、盆暮れには音物(いんもつ)を携え -
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2018年のニッポンのファンタジー『雲上雲下』を最後に、それ以降はずっと市井の人物を主人公にした歴史小説を書いてきた朝井さん。久しぶりのエンタメ系の長編時代小説です。
大坂の道具商の放蕩息子の寅蔵(どら蔵)は、ひょんなことで奉公先に大損害を与えてしまって勘当されます。江戸に流れ着いたどら蔵は、自慢の目利き力を生かして骨董屋として一旗上げようと目論むも、拾ってくれた親方やその仲間、どら蔵が預けられた師匠も一癖も二癖もある連中で・・・。
全6章。2章目当たりで「これは良い」と思ったのですが、その後はあまり盛り上がらず。次から次に登場するキャラクターの濃い登場人物たちを朝井さんが廻し損ねたのか、私が -
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葛飾北斎の娘、お栄(葛飾応為)が光を求めて生きていく物語。面白かった。
「たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」
オランダ商館の依頼で取り組んだ西洋画の出来に満足できていない弟子達に、親父どのがかけた言葉。一番印象に残っている。
もともと北斎についてそんなに知識があるわけではなく、「変わった人」というくらいのイメージしかなかったが、読み進めるうちに絵や仕事に対する凄まじい情熱を感じて熱くなった。
登場する絵 -
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江戸向嶋の苗物屋「なずな屋」をめぐる物語。
普段は時代小説をあまり読まないけれど、完全に掴まれた。新次、おりん、雀は勿論、その周りの登場人物が挙げたらきりがないほどみんな魅力的。
それぞれの章で起きる出来事とそこに流れる日常。桜の謎からの吉野でクライマックスかと思いきや、一気に思いも寄らない展開とその後の軽やかにすべてが回収される終章に痺れた。花火を取ってきてあげる場面が一気に蘇ってきた。
自然に流れていたそれぞれのお話が、すべて緻密に巡らされていたことに気づいたうえで、もう一度振り返りたい。
粋という言葉がぴったりの、じんわりと心に残るお話でした。 -
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朝井まかてさんのデビュー作
隅田川のほとり、向嶋で種苗屋「なずな屋」を営む
花師「新次」と妻「おりん」の商売繁盛記。
商売を営む傍らで、品評会、宴の庭造りなどの難題に取り組む新次とおりん。
2人の元に預けられている子供「しゅん吉」や
いつも温かい手を差し伸べてくれるご隠居の「六兵衛」、何かと人騒がせな夫婦「留吉とおそで」たちと力を合わせ、知恵を合わせ乗り気って行く。
横槍をいれてくる老舗「霧島屋」はかつて新次が修行をした店だが、こちらとのやり取りも清々しい。
江戸の職人物語なので商売への心意気や、人情味あるやり取りも気持ちが良い。
そして題名にもなっている「実さえ花さえ」とは
桓武天