あらすじ
出島に薬草園を造りたい。依頼を受けた長崎の植木商「京屋」の職人たちは、異国の雰囲気に怖じ気づき、十五歳の熊吉を行かせた。依頼主は阿蘭陀から来た医師しぼると先生。医術を日本に伝えるため自前で薬草を用意する先生に魅せられた熊吉は、失敗を繰り返しながらも園丁として成長していく。「草花を母国へ運びたい」先生の意志に熊吉は知恵をしぼるが、思わぬ事件に巻き込まれていく。
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Posted by ブクログ
初めての朝井まかてさんの作品でしたがハマりました。他も片っ端から読んでみたい。
お庭の風景が描写が心地よく、幸せな時間が共に過ごせたような気分です。この長崎弁もとても可愛くて、響とリズムが心地よかった。
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長崎におたくさという銘菓があります。昨年初めて知ったのですが、砂糖が掛かったパイのような食感で、花びらのような形状のとても美味しいお菓子で、以来何度か買い求めています。馴染みのない名前を軽く調べ、紫陽花のことらしいとまでは認識していたのですが、その由来にこんな物語があったとは。
シーボルトが密命を帯びていたのか、それとも純粋な学者であり医師であったのかは分かりませんが、少なくとも日本を愛したことと、日本に残した功績は揺るぎないものだと思います。
とても良い本でした。
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じっくりとシーボルトを読んだ訳じゃないけど、ここで知識入れてもいいかなと思うけど、一遍でも知るのもいいかと思う。あくまで熊吉の話だから。出島を舞台にする話も意外に読んでない、オランダ人が出て来るのでなく庭師を一心にやり遂げる熊吉が染みる。12冊ですね、やっぱり読み応えある
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人物や土地や花木、あらゆる描写が写実的で、自分も出島にいるかのごとき錯覚に陥ってしまうほど。その中で主人公と先生、奥方との絆が生き生きと描かれている。「恋歌」も見事だったが、こちらも最後に深い感銘を受け、余韻の残る秀作であった。
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面白くてどんどん読んだ。
史実があるから、ラストは、ちょっと寂しさや哀しさが残るけれど。しぼると先生は本当は何を考えていて、どんな事情があったのだろう。日本の四季や草木を愛したことは疑う気にはならない。
それぞれが幸せな日々を送っていることが描かれ、朝井さんらしいと思った。
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江戸時代後期の話。
ここで言う先生=シーボルトのこと。
出島にあるシーボルトの薬草園の世話に任命されて嫌々行く熊吉くん。
でもめちゃめちゃ体力も頭も使って庭番の仕事を頑張る
今まで全くと言っていいほど幸せではなかった熊吉くん
でもシーボルトのおうちに「やりがい」とか「幸せ」とか徐々につかむけど
まさかのシーボルト事件も絡んでくるからさぁ大変って話。
全体的に長崎の方言が多く出てくるけど苦にならず読める。
読んでかなりほっこりする本
だいぶ前に読んだのになぜかレビューを書くのを忘れてた。
Posted by ブクログ
人の書き方が好き。
人のずるいところや真摯なところが上手く調和され、読みやすく全体を描いている。
没頭=ついつい辞められなくてひとつの事に尽くしているうちに、気がつけばご飯も食べてなくて寝る時間も忘れていた、そしていつの間にか自分でも思いもよらない高いレベルに達していた、そんな経験がある人は、そのときの感覚を思い出すと思う。若さがなせる技。
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現存する熊吉と表示のある植物の標本は1827年にシーボルトが命じて作らせたらしい
牧野富太郎は1862年に生まれた
古くから日本にあった、本草学とは一線を画す植物学はシーボルトがもたらしたのだろうか
そして集めた植物の管理は熊吉の仕事だったのだろうか
作者の描く二人と彼らを取り巻く人々がいきいきと目の前で動いている
さまざまな想いを抱いて
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シーボルトの薬草園の園丁=お庭番となった熊吉を主人公とした、史実にフィクションを織り交ぜた時代小説。
熊吉の草木や彼の仕事に対する真摯な接し方に、心が和み「読んでいる身が浄化され」る。
シーボルトに敬愛の念を抱き、必死に彼のために熊吉は仕事をこなすが、台風により薬草園が甚大な被害を受ける。
熊吉が黙々と片付けをしていると、シーボルトが忌々しげに吐き出す。
「なにゆえ、やぱんの者は怒らぬのだ。怒りこそ闘いの力になるのであろうに、なにゆえ唯々諾々と受け入れる。・・・我々は常に自然を闘うことで知恵ば磨き、技を発達させてきた」と。
熊吉は目が歪み、天と地が揺れた様な気がした。
「先生にとって、自然は共に生きるものではなかったのだ」との腑に落ちぬ思いが次々と湧き上がって、熊吉は身を震わせた。
日本人と西洋人との自然に対する考え方の違いが浮かび上がる場面である。
歴史上有名なシーボルト事件で、熊吉も咎に問われ過酷な取り調べを受けるが、嘆願書によりようやく放免される。
『終章』で語られる、数年後の挿話が心地よい読後感をもたらす。
Posted by ブクログ
「らんまん」関連ということで。シーボルト先生のお庭番が主人公の物語。どちらかというと淡々と進んでいくんだけど、最後に大事件が・・・。あまり史実を知らなかったけど、真実はどうだったのかね。
ラストシーンで登場した「日本植物誌」が、翌朝の「らんまん」に登場してびっくりしたわ!オタクサの絵がきれいでした。
朝井まかてさんは初めて読んだけどなかなかいいね。他の作品も読んでみよう。
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長崎の出島でのシーボルト先生のお庭番熊吉の物語。熊吉の気持ちを所々切なく思った。
江戸時代の奉公の様子、当時の日本人とシーボルト先生の考えの違い等を知る事ができて、面白く読めた。
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シーボルトの薬草園の庭師として雇われた熊吉とシーボルトの心の交流を描く物語。向学心旺盛な熊吉の成長、シーボルトの妻、滝の生活があの事件に依って大きく変わってしまう。
シーボルト事件は歴史の勉強の時に出てきて知ってはいたが、この作品でシーボルトなる人物の一部を知ることが出来た。兎に角、面白い作品であった。この作者の作り出すフィクションの部分がさも事実であるが如く感じさせるのは作者の力量の表れだと思う。
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自然は制覇するものだと考えるシボルト先生と、自然は共に生きるものだと考えてきた熊吉。いや、熊吉はそんなこと当たり前過ぎて考えたこともなかっただろう。
周囲の人々が悲惨な事態となり、シボルト先生の配慮は充分だったのか正直疑問が残った。
アジサイに、そんなに種類が多くあったとは知りませんでした。一斉に咲いていたら、見ごたえあるだろうなぁ。
あれ?これって、自然を制覇しようとしてる?
Posted by ブクログ
2020/9/21
私もしぼると先生がいい人なのか悪い人なのか結論を付けられぬまま本を閉じた。
うーん…と思ってたけどでも、人ってそうやんな。
いいとこばかりの聖人もおらんし、極悪人にもたぶんいいとこはあるんやろう。
いい悪いの判定も人によって違うし。
先生は確かに妻子を愛してたし、草木も愛してた。
自然は制圧するもんやし、虫の声は雑音やから殺してしまえと思ってても。
思ったよりドライにいろんなものを諦めて捨てて行っても。
みんな連れて行けばいいと思ってたけど、そんな簡単にはいかないんだな。
友人付き合いしていた人や教え子のような人たちが死んだり失脚したりしてたのはどう思ってたのかな。
やぱんでは余裕綽々でも本国では生き残りに必死やったんかな。
ままならぬのだな。と思うと涙出そうになってきた。
熊吉も奥方も娘もなんだかんだで幸せでよかったよ。
おるそんは幸せに暮らしたかな。そうだといいな。
Posted by ブクログ
先生(=シーボルト)のお庭番になった
熊吉が主人公。
植物の描写がとても良かったです。
主人公が日本の植物を海外に送ろうと
試行錯誤する場面は学がなくても
やれる人は存在するなぁ…としみじみ
感心しました。私は怠け者なので…。
シーボルト自体はうっすらとしか記憶して
いなかったけれどなかなか色々な面を持つ
人物だったようで、日本史は非常に苦手な
勉強でしたが、シーボルトが来日していた
時代の歴史を振り返ることができて面白かったです。
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紫陽花が出てくるシーンが夢のような描写で素敵でした。普通では体験しない喜びと苦難の波乱の人生ですが、終盤になって穏やかな幸せを持てた主人公にほっとしました。
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前半は静けさがあり美しく、後半はハラハラし心痛み、読み応えがありました。本当は先生はどんな人だったんだろう…。
京屋で熊吉をさんざんいじめていた助太郎がその後どうなったのか知りたかったりもした。
Posted by ブクログ
「やぱんの職人は途方もなか腕と知恵をもっておる」
日本の職人魂を改めて見せつけられた物語。
長崎の出島で生まれ育ち、主であるしぼると(シーボルト)先生に慈しまれて仕えた「先生のお庭番」コマキ。薬草園を出島の屋敷に造り育てていく。
以前長崎を旅した時に出島も見たが、あまりの小ささに驚いたことを思い出した。
そのごく一部に、世界と繋がる薬草園があったとは。
シーボルトが愛したと言われる紫陽花は有名だけど、それは日本の職人の真摯な想いとたゆまぬ努力、そしてプライドが造り上げたものだった。
また長崎の出島を訪れたい。
Posted by ブクログ
切なくて、美しい話だった。
日本の良いところ、悪いところ、美しさがきれいに描かれていると思う。
嵐に対して怒りを抱かない日本は、今もそうなのかも。
怒りが全くないわけではないけれど、自然を受け入れ、共に生きること。日本人は昔から、そうしてきたんだなと思う。
Posted by ブクログ
一人の少年が、「先生のお庭番」としての
矜持をもち、仕事を通じて成長していく姿。
ひとつのことを極めようと
そして、敬愛する先生のために
よりよい仕事をしようとする姿にも
心撃たれるが
日本という国の、信頼と誇りをもった仕事が
遠い昔から驚きに値する品質で培われてきたことに
嬉しさと、背筋がのびる想いを抱いた。
先生と奥様の夫婦愛。
そこには、さまざまな事情もあったけれど
根底に流れる互いを想う気持ちにも
深く心撃たれた。
紫陽花の青色がいつまでもまぶたを閉じれば
広がるような、さわやかで美しい作品だった。
Posted by ブクログ
直木賞受賞の朝井まかてさんの小説で、朝井さんの祖母だったかが沖縄出身で、この本の舞台が長崎の出島でということで、沖縄出身長崎在住の身としてはぜひともよまなければと思い購入。
するするーっと楽しく読めました。自分に自信がなかった主人公が、シーボルト先生と奥方と使用人と過ごすうちに自分のしごとに誇りと自信を持っていく、ほのぼの話…かと思いきや、シーボルト事件を絡めながら後半は関係者の意識のズレなども描写して日本と欧米の感覚の違いなどもアクセントとして出てきました。
後ろの解説の言葉を借りれば「その特色を一言でいえば、前述のごとく"軽妙"。そこに、独自のツイスト、ひねりが加わって」というところ。
Posted by ブクログ
はじめて朝井まかてさんの小説を読みました。題名に惹かれて。 江戸時代後期 鎖国時代に唯一海外との貿易を行っていた長崎の港。 その出島で薬草園を造るお庭番熊吉の成長記とオランダから来たシーボルトさんの交流記。
前半は熊吉がしーボールの屋敷の薬草園作りとお庭番になるまでが描かれていて どんな薬草園になっていくのかたのみみでした。 後半 有名なシーボルト事件を絡めてあってシーボルトのやばん(=日本人)に対する本性がでてわかって偏見がみえて残念でした。
別の視点からの感想。
職人としていろんな植物をあつかって薬草園を作っていく熊吉の仕事ぶりの中に 日本の自然の良さまでも随所に表れ お庭番も素敵な仕事だなと思いました。 嵐(台風)が来た時 シーボルトと熊吉の自然に対する考えの違いがはっきりわかった所が印象的でした。
「 怒りこそが闘いの力になる。常に自然と闘うことで知恵ば磨き、技を発展させてきた。・・・・ いずれ人は遠からず自然を完全に支配下に置くだろう。」
嵐も、地鳴りもおきんようにできるとですか?
「いかにも・・」
「 自然さえ制覇すれば誰もが花の咲き乱れる楽園で安泰に暮らせる 」 大陸で領地争いをし続けてきた西洋民族は常に自然を搾取して生きてきた。 自然は共に生きるものでなかったということ。
シーボルトを通して 西洋欧州の自然に対する思想とか自然観と日本の自然に対する思想や自然観の違いが大きく違っていたこと。 やっぱり日本の自然はどこよりもすばらしいこと。 昔の日本人の中にも 自然との共生を感じていた人が居たということがわかって 熊吉を通して表現しているのがよかった。
今の日本は西洋かぶれしていて このシーボルトのように人の手で自然を制覇できるとかんちがいしてるものが大勢いる。 けどほんとはそうでないこと。
日本ってやっぱどこにもない自然をもっているのだから大切にしたいなと思いました。 結果的にはシーボルトの働きでに日本が開国したきっかけと ジャポニズムを広めたことには違いない。
この先生のお庭番 職人の仕事をみせてもらいました。そしてうまく時代劇小説で表現できていたなぁと思いました。
Posted by ブクログ
お庭番と聞くと、隠密とか忍びとか物騒なほうを
思い出すが、この本の舞台はあの時代に唯一開かれた出島の地でシーボルト先生が作りたかった薬草園。
まだまだ庭とも呼べぬほどの敷地に
主人公である駆け出しの庭職人の熊吉が
試行錯誤しながら薬草や草花のお世話をし
やがて壮大な薬草園を作り上げ、守り
そしてシーボルト先生の望みを叶えるべく
強くなるまでの話。
薬草や、草花がたくさん出てくるので
想像の中さえも色とりどりで楽しい。
ときには雨に濡れた土の匂いさえ感じるようだった。
シーボルト事件がある以上、結末は見えているのに
熊吉や、奥方と同じようにシーボルト先生を信じたくなるような物語だった。
Posted by ブクログ
シーボルトつながりの本は、これで何冊目だろうか?
この作家さんの描く世界は丹念に積み上げた史実を、、素敵な物語に仕上げています。
出島のシーボルトの植物園に出入りの植木屋から専属の職人をと依頼があった。
そこで決められたのが一番年下の熊吉。
先輩の職人たちは皆外国人のもとで働きたくはなかったのであった。
熊吉、実は蘭語を習いたいと心のうちで密かに野望を持っていたのだった。
熊吉はそのまじめな働きぶりと、工夫を重ねた植物園の造園方法で一目置かれる。
熊吉、バタビア人のオルソン、シーボルトの日本人妻お滝は仲良くなり共に食事もするように。
才能も機転も聞くシーボルトは、幕府の要人らの受けも良い。日本各地から教えを乞う人々が多数やってくる。
物語は熊吉の工夫で1000品種に及ぶ植物をシーボルトが変える船で送るところまでが描かれ、終章では、お滝との娘と再会するところで終わる。
他の作家により、この娘が苦労して女医になるまでのノンフィクションも存在。
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15歳の熊吉が雇われたのは
長崎、出島の蘭医師シーボルトの薬草園。
草木への深い愛
阿蘭陀に日本の草木を送りたいというシーボルトのために
工夫奮闘する熊吉
やがて起こる長崎事件・・・
日本ってやはり美しい国なのだなぁと。
そして、この時期に今でいうカタログ販売があったのに驚き!
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御庭番(時代劇に出て来る忍者じゃないよ)視点で描かれている。シーボルトの日本に居た頃を描いた伝記だった。殺伐とした時代劇に飽きた人には良いかも。あと割と大人向け伝記って実は種類が少ないのでコレは有りかなと。
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修行中の庭師・熊吉は、長崎の出島への奉公を命じられ、シーボルトの元で薬草園の園丁を勤めることになる。
初めての仕事にとまどう熊吉だったが、工夫を重ねて見事な薬草園を仕上げていく。
シーボルトや愛妾のお滝、黒人の使用人おるそんの信頼を得、熊吉は幸福な日々を送っていたが、シーボルトの帰国が決まってからその日常は少しずつ陰りを見せ始めた・・・。
シーボルトを題材にした小説は数多くありますが、このお話は15歳の園丁の視点から描かれています。
使用人の目から見るシーボルトと歴史的事件というものを生き生きと描いており、とても新鮮でした。
圧巻なのは、美しい自然の情景を写し取った芳醇な描写。
最初は共通点の無さそうなシーボルトと熊吉が、自然の美しさを通して気持ちを通じ合わせるのも素敵。
日本の植物の美しさを愛で、それを世界に伝えようとするシーボルトと、その思いに報いようと努力する熊吉には希望を感じさせてくれました。
同時に二人にはお互い理解のできない、越えられない壁があることもわかってくるのが切ないです。
日本人にとって自然は共生するものであるけども、欧米人のシーボルトにとっては自然はねじ伏せ、支配する対象であるという自然観の齟齬が悩ましい。
そこらへんの描写がとてもうまくて、印象的でした。
両者のズレとか溝が広がり、シーボルト事件につながっていくという流れがなめらかでした。
終盤の、シーボルトの娘の以祢と熊吉の邂逅は忘れがたいものがありました。
暖かい気持ちでページを閉じることができたのでほっとしました。
Posted by ブクログ
朝井まかてさんは、私には初めての作家さん。
「恋歌」が読みたいと思っていたが、まずこの本から手に入った。
作家が初めてまして状態である以前に、徳間文庫を買って読んだのも初めてかも。
印象に残ったのは二点。
草木の描写が美しかったこと。
特にアジサイは。
それから、「奥方」ことおたきさんが、蝶々夫人のように美化されていなかったこと。
むしろ熊吉よりも、シーボルトよりも、おたきさんの方が、現実にいそうな人としてイメージできる。
愚かさも、誇り高さも、一人の中に溶け込んだ存在として理解できた。
逆にいただけないのは、「先生」、シーボルトの長いセリフがやや不自然な感じだったこと。
「近代人」の言葉って、長崎弁や他の表現にもなじまないんだろうか。
Posted by ブクログ
長崎出島でシーボルトの薬草園の園丁として働く少年を主人公にした歴史小説。
最近、こういう植木職を主人公にした歴史・時代物を続けて読んだ気がすると思ったら、『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と『ちゃんちゃら』でいずれも朝井さんの作品でした。
時代小説と言えば、以前は侍、あるいは商人ものが中心だったような気がしますが、こうした職人物が増えてきて、例えば料理人関係もブームみたいに出てますし、それはそれでなかなか楽しいものです。
やや軽めな印象は受けますが、主人公の少年のひたむきさが心地良く。また、主人公を取り巻くシーボルトの妻のお滝、従僕のオルソンなどの人物像も良く出来てます。ただシーボルト本人はどことなくぼけてるように思いますが。
直木賞受賞作『恋歌』へのステップアップになった作品です。