朝井まかてのレビュー一覧
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舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。
作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこの振る舞いとなったのは、その人が今まで生きてきた過程の中で根底に残る事柄があるのではないか?これは現代の介護の世界でも見受けられる光景や理解をする際に必要な視点なのではないかと感じました。
よく参考書や教科書などでは、行動の背景に何があるのか知ることが、その人らしさを尊重しつつ適切な援助が行えるようになる…といった事 -
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朝井まかてさんの小説は、最初の1文を読み始めた(聴き始め)途端、登場人物たちや景色が色彩を持って立ち上がってくる。長い話だったが面白かった。
日本で最初に洋食屋「自由亭」を長崎で開業し、その後大阪でホテル業を始めた草野丈吉とその妻ゆきさんのお話。
まだ駆け出しの料理人であった丈吉が小さな食堂を始めたころから、近所の亀山社中の志士たちへ出前をしたり、五代友厚さんが食事に来たり、その時代の様子が生き生きと描かれていた。私も小説の中に入り込んで坂本龍馬を見かけた気がして、なんだかワクワクとした。
これは妻のゆきさんの物語で、ゆきさんの目線を通して丈吉の姿が描かれる。丈吉が亡くなった後、ゆきさんが亡く -
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ネタバレ星6つにしたいほどの面白さ。
自分の境遇と重なる部分もあり、言語化できずにいた気持ちをふわりと示してくれる巧みさにも唸る。
25歳の介護人お咲は所謂シゴデキで、雇用主にひっきりなしに頼りにされる。自宅に於いても休む暇はなく働き詰めだ。別れた亭主に借金を返さねばならず、気持ちも沈むし時に苛立つ。妙な達観を見せず、自分事はぐずぐずと同じところに留まっているが、人の事となると心の機微に聡く核心をつく。そこがリアルで魅力だ。
今だと35歳位の感覚だろうか。中堅どころ。
傍から見れば仕事をそつなくこなせる頼れる人材だが、本人は時に「私は玄人」と自分を鼓舞しながら必死に仕事に食らいつく。その内面がと -
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森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。
類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている空気に、この時代特有の豊かさを感じた。
誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
妻と子供 -
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森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。
甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。
「役に立つ立たないじゃないんですよ。