朝井まかてのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりの時代小説。久しぶりの朝井まかて。
「すかたん」をずいぶんまえに読んでとてもおもしろかったのでまちがいはないだろうと。
タイトルの雰囲気が似ていたし。
江戸徳川11代の時代の庭師の話。いいなあ。タイムスリップするならこれくらいの時代に行って、お百合のような町娘になってみたい。
登場人物がみんな生き生きしている。ちゃらはもちろんだけど、五郎太がかっこよすぎる。
お百合に惚れているのに、プロポーズまでしたのに、お百合のこころはちゃらに・・・すると、潔く身を引いて。
庭の描写や高野槙の仕立て方、石の組み方。ずいぶんと作者は勉強したことだろう、奥付の参考文献を見て納得。長兵衛が、「絵に描いたような」庭は落ち着かず、「いなかもの」と蔑んでいた、両親の素朴な雑木の庭で初めて「自分とつながっている」と感じ入るところは泣けた。
ラスト、そんな殺生な・・・となったところでどんでん返し。ホッとした。 -
Posted by ブクログ
恥ずかしながら、イコンというものの存在を初めて知りました。
わたしは絵は描けませんが、これまで漠然と「絵を描くということは芸術」なのだと思っていたので、主人公が思うように絵を描かせてもらえず苦しんでいる間、そのように仕向ける指導者の想いはまったく理解できませんでした。しかし主人公が突然「信仰」を理解するシーンは、それまでの価値観が剥ぎ取られるような、それでいてすべてが腑に落ち、憎しみが削げ落ちて愛の光に包まれるような、インパクトのあるものでした。
読後半年以上経ちましたが、あの表現し難い衝撃のようなものは胸に残っています。
中途半端でなく信仰に生きることを貫く人の、凄みのようなものを感じました。 -
Posted by ブクログ
介護(本作中では「介抱」)がテーマになる話を、現代を舞台にした小説で読んでいたら、実際に介護にかかわる日々を送っている読者にとっては、あまりにシビアで結構滅入ってしまったかもしれません。
本作を読んでみて、決して滅入ることはありませんでした。これは江戸の町人の暮らしの中での話…と割り切りながらも、老いるということの意味は昔も今も変わらないのだと思いました。
本作のよいところは、「こうあるべき」とか「こうあらねばならない」などと結論付けていないところなのかなと。むしろ本作そのものが、作中に登場する洒落の効いた『介抱指南』のようにも思えてきます。
他人さまの介抱にかけてはプロフェッショナルの域にある主人公の"お咲”が、こと自分の母親のこととなると冷静ではいられなくなる性分であるのも、とても親近感がもてます。
完璧な人なんていない。完璧でなくても、どうしようもない状況でも、少しでもお互いが楽になれるよう、みんなで助け合ってなんとかかんとかやっている。
実際の自分が経験している介護やこれから経験するであろう介護、あるいは自分が受けるであろう介護のことを、割と冷静に考えられる時間にもなりました。
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Posted by ブクログ
森鴎外の息子、類の人生を辿った物語。何か劇的なことが起こるわけでもなく、ただただ類を中心とした森家の70年を辿っているのだが、全く退屈することなく、この長編を最後までじっくりと味わいながら読むことができた。
大正モダン、鴎外の子煩悩ぶり、戦前の豪邸、芸術家が切磋琢磨するパリ、戦時中の庶民の暮らし、戦後のバラック、「もはや戦後ではない」と言われた昭和の暮らしぶりなどなどの描写が美しく、一つ一つの文から情景や当時の人々の雰囲気が伝わり、実に味わい深い。自分が生まれる前の日本の姿が目に浮かぶようで、このような時代を経て、今の日本があるのかとしみじみ思う。
「本当の夢は、何も望まず、何も達しようとせず、質素にひっそりと暮らすこと」
という40を過ぎた類の言葉には妙に納得した。生活に困窮しながらも結局最後までどうにかなって、確執のあった姉らともそれなりの交流を保ち続け、文章でも多少は評価され、このうえなく素晴らしい妻を亡くした後60過ぎて再婚した。「ホント、あなたはそういう感じで生きてきて、生きていったよね」と言いたくなる。同時にそんな類から「三つ子の魂百まで」の品位を感じずにはいられない。
類の人生が柱ではあるが、同時に大正から平成にかけてのそれぞれの場所の空気感や、そこに生きる人の雰囲気を、じっくりしみじみと味わった。久々の読み応えある一冊。 -
Posted by ブクログ
普段あまり時代物を読まないタイプだが一気に読み進めてしまった。
とにかく切なく、やり場のない思い。
と同時に武士の生き様を見たという感動。
どんな状況になろうが誇り高く生きている姿に心を打たれた。
私もこんなふうに真っ直ぐ生きたい。
歴史に名こそ残せなかったかもしれないが、その者たちの人生をかけた戦いにより今の私たちの暮らしがあると思う。今自分が立っている場所は昔誰かが流した血が染み込んだ大地、昔誰かが愛するものを信じ、歩き続けた道なのかもしれない、そう思うと今の、あまり不自由のない生活をできている事に感謝をしながら胸を張って歩きたい。
また、貧しさは人の心を狭くする、という言葉に、税金や物価上昇などのニュースが流れる日本で、それをどうしていけばいいかということも考えた。
そのひとつとして爺や澄世の母、周りの女中など登場人物はとても愛に溢れている。そう言った人に自分もなり、周りにも伝染させていけたらよいなと思う。
まずは隣の人に幸せを分け与える。それはゆくゆくは広がっていくと思う。
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Posted by ブクログ
初めは日本橋にあった吉原が、新吉原として浅草に移転するまでの波瀾万丈な物語を、吉原一の大見世・西田屋の女将の花仍(かや)の視点から描く大作。
元吉原が始まったのが江戸時代初期、新吉原への移転が明暦の大火(1657年)以降なので、大河ドラマ『べらぼう』の舞台は新吉原ということになる。
花仍をはじめ、西田屋のトラ婆、清五郎、松葉屋の女将多可、三浦屋の女将久、若葉など、登場人物たちがなんとも魅力的で、そのどうにもならない運命に心が痛むが、惹かれてしまう。
江戸の大火は延宝から慶応のおよそ200 年間の間に22回も起きており、江戸はそのたび焼き尽くされた。それが吉原の運命も左右していく。