朝井まかてのレビュー一覧

  • 銀の猫

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    ネタバレ

    お咲が何もかもできるヒロインでないところがいい。実の母との確執、それを乗り越えその先の介護まで覚悟を持つラストに読者の心もやっと緊張がほぐれる

    介護は今この令和の時代も大きな関心事。今現実的ではない人々も必ず向き合わねばならない問題。個人も国も試行錯誤している現状

    高齢者を“老害”の言葉だけで片付けようとする風潮は高齢者だけでなく若者たちにも明るい未来がない。誰もが向かう先に一人一人咲のように真摯に向き合う心を持たないといけないと痛感した

    肩肘張らずにそんなことを考えさせられる物語

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    2024年11月08日
  • 白光

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    幕末に生まれ、絵を描くことに大いなる情熱を燃やし、単身故郷を飛び出した山下りん。
    維新により回天成ったとは言え先例のない女性洋画家を目指し、あらゆる可能性に挑み険しい道を切り開いて行った先にあったのは、自らが求めた光溢れる西洋画とは似ても似つかない陰鬱な宗教画。

    後に日本正教会でただひたすらにイコン画を描き続けた彼女が果たして本当に望んでいたものが何だったのか、想像すると何だかとても切なくなった。

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    2024年11月06日
  • 銀の猫

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    舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。
    作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこの振る舞いとなったのは、その人が今まで生きてきた過程の中で根底に残る事柄があるのではないか?これは現代の介護の世界でも見受けられる光景や理解をする際に必要な視点なのではないかと感じました。

    よく参考書や教科書などでは、行動の背景に何があるのか知ることが、その人らしさを尊重しつつ適切な援助が行えるようになる…といった事

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    2024年11月06日
  • ボタニカ

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    牧野富太郎の学問、植物学に対する熱意は並々ならない。
    まだ教育体制が確立されず、学歴といってもピンとこない時代に、ただただ植物学を極めようとする。
    彼を支える女性たちも強くしなやかだ。
    先人たちは彼を導き、教授たちや同僚たちは彼を認めながらも戸惑いもある。
    一緒に植物採集しようと人々が集い、経済的に支援する人たちもいる。
    牧野富太郎と彼らによって、日本の植物学の礎が築かれていったんだろう。

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    2024年10月26日
  • 朝星夜星

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    朝井まかてさんの小説は、最初の1文を読み始めた(聴き始め)途端、登場人物たちや景色が色彩を持って立ち上がってくる。長い話だったが面白かった。
    日本で最初に洋食屋「自由亭」を長崎で開業し、その後大阪でホテル業を始めた草野丈吉とその妻ゆきさんのお話。
    まだ駆け出しの料理人であった丈吉が小さな食堂を始めたころから、近所の亀山社中の志士たちへ出前をしたり、五代友厚さんが食事に来たり、その時代の様子が生き生きと描かれていた。私も小説の中に入り込んで坂本龍馬を見かけた気がして、なんだかワクワクとした。
    これは妻のゆきさんの物語で、ゆきさんの目線を通して丈吉の姿が描かれる。丈吉が亡くなった後、ゆきさんが亡く

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    2024年10月19日
  • 落陽(祥伝社文庫)

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    大正時代の日本人の心情を明治神宮建立プロジェクトを通して描いた作品。国として自立し始めるための国際化の風潮と、幕府の支配から解放された喜びより戸惑いと、古来から受け継がれてきた日本人としての価値観が入り乱れた混乱がとても上手く表現されています。
    加えて明治天皇の新たな天皇像を作り上げる途轍もない努力と、その天皇を本能的に敬う日本人の心も素晴らしく、日本人としての原点に触れた気がします。
    改めて明治神宮を訪れてみようと思いました。

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    2024年09月12日
  • 秘密の花園

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    ネタバレ

    私の中の滝沢馬琴のイメージは小学生の頃読んだ山田風太郎の『八犬傳』に出てくる馬琴で固定されているため、他の作家が描く馬琴は「ふーん、こういう馬琴像もあるのか」という感想になることが多いのだが、今回のまかてさんの馬琴は山田風太郎の馬琴を更に豊かにした感じで、違和感がない。作中で馬琴と北斎のやりとりするシーンは「『八犬傳』には出てこなかったけどきっとこんな感じだったのだろうなぁ」と地続きで想像させるものがあり、なんだかとても嬉しかった。悪妻とされるお百さんの描かれ方も本作では救いがあっていいエンディングだったと思う。

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    2024年09月08日
  • 秘密の花園

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    朝井まかて氏の作品は何冊も読んでいるしファンの一人でもある。今回も素晴らしい作品だった!南総里見八犬伝の著者の曲亭馬琴の半生を描いた作品だった。馬琴の半生は実に苦難の道だ江戸時代の本の出版は想像を絶するものがある。長年かかって人生の終末まで両眼の視力を失いながらも完結したなんてビックリだ!一つ一つの言葉の意味を理解出来ない部分もあったが楽しく読み終えた。

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    2024年09月07日
  • 銀の猫

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    江戸時代も介護問題ってあったんだなぁ。
    江戸時代は今よりもっと親の介護は子供が何をおいてもしなければならないという世間体に縛られていて大変だったんだなぁ。
    介護問題って、先には死しかなく暗く辛くなりがちだし、この物語の主人公は母親が毒親という悲惨な状況なのに、読み進めていくうちに、人は誰しもゆっくり老い弱っていくのは当たり前で、それとどう向き合っていくかという、ヒント、光を見せてくれてよかった。

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    2024年08月26日
  • グッドバイ

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    序盤は少し読みにくさを感じたものの、100ページ目をこえたあたりからは圧巻。
    人の想い、信念、つながりが伝わる良本。
    出会えて良かった1冊。

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    2024年08月22日
  • 先生のお庭番

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    初めての朝井まかてさんの作品でしたがハマりました。他も片っ端から読んでみたい。

    お庭の風景が描写が心地よく、幸せな時間が共に過ごせたような気分です。この長崎弁もとても可愛くて、響とリズムが心地よかった。

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    2024年08月19日
  • 銀の猫

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    ネタバレ

    星6つにしたいほどの面白さ。

    自分の境遇と重なる部分もあり、言語化できずにいた気持ちをふわりと示してくれる巧みさにも唸る。

    25歳の介護人お咲は所謂シゴデキで、雇用主にひっきりなしに頼りにされる。自宅に於いても休む暇はなく働き詰めだ。別れた亭主に借金を返さねばならず、気持ちも沈むし時に苛立つ。妙な達観を見せず、自分事はぐずぐずと同じところに留まっているが、人の事となると心の機微に聡く核心をつく。そこがリアルで魅力だ。 
    今だと35歳位の感覚だろうか。中堅どころ。
    傍から見れば仕事をそつなくこなせる頼れる人材だが、本人は時に「私は玄人」と自分を鼓舞しながら必死に仕事に食らいつく。その内面がと

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    2024年07月09日
  • 白光

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    序章 紅茶と酒とタマ―トゥ/開化いたしたく候/
    工部美術学校/絵筆を持つ尼僧たち/分かれ道/
    名も無き者は/ニコライ堂の鐘の音/終章 復活祭

    絵師になりたい りんの眼鏡に適う師匠はなかなかいない
    西洋画を極めようとするも 留学先ではイコンしか学べない
    彼女のじりじりと焦りに似た気持ちが伝わってくる。
    絵を学ぶための手段に見えた信仰が少しずつ心になっていくようにも見える。
    そんな事をしてもいいの?と思う時もあったけれど、絵画への望みを見つめ続ける彼女がまぶしい

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    2024年06月25日
  • 銀の猫

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    よかった。ほんとによかった。
    お咲も佐和も庄助もおぶんも、みんなほんとによかった。
    登場人物が全員魅力的。

    江戸東京博物に行きたくなったので、調べてみたら2025年まで(予定)長期休館中でした…

    好きな人が老いて弱っていくのは悲しい。
    そんなとき私は笑って介抱できるだろうか。優しい声を掛けられるだろうか。
    そのときになってみないとわからないけれど、もし思い詰めたときは『銀の猫』を再読したいと思います。

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    2024年06月22日
  • 銀の猫

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    介護をテーマとした時代小説。
    違和感なく、すっと入ってくるのは、老いや家族といったテーマは時代を越えるのだと納得できるうえ、
    それでも江戸時代の雰囲気がきちんと描かれているから。
    憎たらしい母と、どう決着するのか興味津々で読み進めた。いい感じに終わって満足。、

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    2024年05月27日
  • 先生のお庭番

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    長崎におたくさという銘菓があります。昨年初めて知ったのですが、砂糖が掛かったパイのような食感で、花びらのような形状のとても美味しいお菓子で、以来何度か買い求めています。馴染みのない名前を軽く調べ、紫陽花のことらしいとまでは認識していたのですが、その由来にこんな物語があったとは。
    シーボルトが密命を帯びていたのか、それとも純粋な学者であり医師であったのかは分かりませんが、少なくとも日本を愛したことと、日本に残した功績は揺るぎないものだと思います。
    とても良い本でした。

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    2024年05月16日
  • 類

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    森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
    偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。

    類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
    それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
    大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
    現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている空気に、この時代特有の豊かさを感じた。

    誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
    妻と子供

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    2024年04月10日
  • 草々不一

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    朝井まかてさんの短編集、
    決して楽しい話ばかりではないのに、心が休まる。
    表題の「草々不一」、隠居してから妻が遺した書を読むために子供に交じって文字を習う姿、我が身に置き換えてみる。

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    2024年04月09日
  • 銀の猫

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    今で言うところの介護ヘルパーを通して江戸時代の介護の様子を描いた物語。
    当時は後継ぎである男性が両親を介護することが当然だとか、今と変わらない年齢まで生きている人がいたとか、意外な情報はあったけれど、今も昔も介護を取り巻く苦労は同じですね。介護を美化することなく、苦労ばかり語るでもなく、あるがままを受け入れて最期を見送ろうというメッセージが心に沁みました。

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    2024年03月20日
  • 類

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    森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
    550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。

    甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
    森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。

    「役に立つ立たないじゃないんですよ。

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    2024年03月15日